インフィニット・ストラトス 乱れ撃つ者
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福音
前書き
『福音』とのみ、表記させていただきます
「ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ、イスラエル共同開発の第三世代型IS、『福音』が暴走したそうだ」
旅館の一室に集められた俺達専用機持ちは、事の詳細を織斑先生から聞いていた。
なんでも、学園上層部の命令により、ここに来ている俺達が対処に当たるらしい。
「対象はいまから約五十分後、ここから二キロ先の海上を通過することが分かった。 教員は学園のISを使って空上、並びに海上の封鎖を行う。 よって、今回の作戦の要は専用機持ちに託す」
「は、はい!?」
告げられたのは俺達学生がこれの対処に当たること。
そりゃ驚くわな。
逆に驚いていないラウラ達がちょっとおかしいんじゃないかな?
いちいち驚きすぎよ、と凰が一夏に言うのを俺は横目で見ながらそんなことを考える。
だが、仮にこれが原作通りに進んでしまうなら、一夏が怪我をする。
……出来れば、なんとかして防ぎたいな
「作戦会議を始めるに当たって、何か質問はあるか?」
「はい。 目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
手を挙げたのはオルコット。
織斑先生は、口外すれば査問委員会からの裁判と、最低二年の監視がつくと釘を指し、俺達に『福音』のデータを見せた
「……俺とオルコットと同じ、オールレンジ攻撃が出来るようだな…」
「そのようですわね」
「この特殊武装が厄介になりそうだね」
「……これでは近接性能が未知数……偵察は行えないのですか?」
上から俺、オルコット、シャルロット、ラウラである。
確かに出されたデータは『福音』が特殊武装を持つ射撃型のISということしか分かっていない。
「先程もいったが、対象は今も超音速飛行を続けている。 故にアプローチは一度だけだと考えた方がいいだろう」
「一度きりのチャンス、ということは、一撃必殺の攻撃でなければなりませんね…」
与えられたチャンスは一回のみ。
山田先生の言葉で、一夏に視線が集まった。
「うんうん…………え、俺か!?」
「「「「「当たり前でしょ(だろ)」」」」」
「……ま、そうなるよな」
「ま、マジで言ってるのか!?」
「あんたの零落白夜しかないでしょうが」
一夏の叫びに凰が答える。
白式の零落白夜なら、落とせる。 そういった判断なのだろう。
まぁ、間違ってはいないがな
「となると問題は……」
「どうやって一夏を運ぶか、だよね。 エネルギーは温存させておいた方がいいだろうし……」
「……なら、それは俺が……」
「ハイハイハイハイハ~イッ!!」
俺が行こうと答えようとしたまさにその時、やたらとテンションの高い声がその言葉を遮った。
篠ノ之束、天井裏からの登場である。
……いや、どっからきてんの!?
「チイちゃんチイちゃん! 私の頭の中にも~っといい作戦があるんだよぉ!」
「お前は何を……」
「ここはだ~んぜん、赤椿の出番なんだよぉ~」
何でも赤椿は、一夏の持つ雪片が進化した姿らしく、全身を展開アーマーにしているそうだ。
……え、なにそれこわい
というのは俺の心の言葉である。
オルコットが自分が行くというのだが、オルコットに届いた高機動パッケージがまだ粒子化されたいないという理由で却下。赤椿の調整が終わる方が断然早い。
だが、これであいつら二人で行かせるわけにはいかないのだ。
可能性の問題で、俺がいることで結果が違うこともある。
なんたって今この世界は現実なのだから。
しかし、虫の知らせというやつか、妙に胸騒ぎがするのだ。
「……織斑先生」
「どうした、御堂」
「俺もバックアップとして参加してもよろしいでしょうか」
「お前がか? 何故だ」
「いえ、ただ、胸騒ぎがするといいますか……あの二人だけだとどうも。 俺のサバーニャなら赤椿のスピードにもついていくことは可能です」
俺の言葉に唸る織斑先生。
正直、断られるかもしれないと覚悟したが、やがてなにかを決めた織斑先生はこちらを見た。
「頼んでもいいか?」
「はい。 頼まれました」
それでは、と俺は織斑先生の所を離れる。
通常のスピードだと引き離されるかもしれないが、トランザムなら追い越すことだって可能なはず。
加賀さんにはあまり使用はしないようにと言われてはいるが……今度、謝ろうと思っている。
やはり、友人には怪我をしてほしくないのだ。
浜辺に集まった俺達三人は早速ISを展開する。
赤と白、そして緑の機体がその場に姿を表した
『御堂、聞こえるか?』
「これは……プライベートチャネルですか…」
『ああ。 悪いが、二人の援護を頼む。篠ノ之もは何処か浮かれているようにも見える。 織斑も織斑で詰めが甘い部分もあるからな』
「いえ。 頼んだのは俺の方なんで」
『……よろしく頼む』
そこでプライベートチャネルが切れ、オープンチャネルへと変わる。
さぁ、作戦開始だ。
「くっそ、思ってた以上に速ぇなあいつ……!」
前方には一夏の白式を連れて空を飛ぶ箒さんの赤椿。
やはりというか、サバーニャの基本の機動力では徐々に離されているのだ。
「しゃあない……! トランザム!!」
目の前の画面に現れる『TRANS-AM』の表記。
赤い光を身に纏ったサバーニャは本来のスペックの三倍以上を引き出すのだ。
まさに赤い彗星である。
「! 見えた!」
俺が箒さんたちに近づくと同時に、箒さんの声が前方から聞こえた。
どうやら、『福音』を見つけたようだ。
「一夏、いくぞ!」
「ああ!」
赤椿の背にのった白式が抜刀。 雪片弍型の刃が展開され、エネルギー状の刃が飛び出した。
零落白夜だ
「ビット展開!」
俺もホルスターからライフルモードのビットにグリップとセンサーをつけ、残りを回りに展開する。
いつでも動けるよう、ホルスタービットも展開する。
「……怪我はしないでおくれよ……」
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