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詩集「棘」

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肌寒い春の夜風



フッと散歩へ出た真夜中二時過ぎ
何となく足を向けた橋の上 見えたのは
高速道路 どこかへ向かう車の光

線のぼやけた山陰 赤い月
揺らぐ河面に その残光を流す

肌寒い春の夜風に流されながら
一人静かに逝くのもどうだ?
遠くへ見えるオレンジの外灯(ヒカリ)
何も知らなければ傷つくこともない…


見上げた星空は何だか霞んでる
雪解け水に増す河は唸りを上げて
この想いさえ呑み込んで何処かへと流れる

はっきりとしない月の輪郭は
どこか暮れゆく太陽を思い出す

肌寒い春の夜風に吹かれながら
一人旅へと出るのもどうだ?
山影を裂いて忍び寄る夜明け
何も知らなければ 想い煩うこともない…

あてなどないこの道の上
温もりを求めることさえ…

肌寒い春の夜風を感じながら
一人闇へと消えるのもどうだ?
傍らにいない君(ヒト)を想い続ける
何も知らなければ…
愛することもなかったのに…




 
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