美しき異形達
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第四十五話 博士その十一
「若しやと思うが」
「そういえば院長さんはな」
薊は博士の話をここまで聞いて院長のことについて思い出した。
「あたしの育ての親だし」
「嬢ちゃんのことをじゃな」
「一番知ってるよな」
「それならばじゃ」
「あたしのことを一番知っていてもか」
「不思議ではないな」
「だよな、じゃあ」
そこまで聞いて言うのだった、薊も。
「まだ夏休みもあるし」
「行くの?横須賀に」
裕香が薊に対して問うた。
「まさかと思うけれど」
「いや、そのまさかだよ」
実際にとだ、薊は裕香に答えた。
「あたしにしてもな」
「横須賀まで行って」
「話を聞こうかってな」
「思ってるのね」
「ああ、夏休みだしお盆でな」
丁渡いい時期が近付いていた、夏休みの中でも。
「部活も休みだし」
「それで、なのね」
「横須賀まで行ってな」
あえてそうして、というのだ。
「それでだよ」
「院長さんにお話を聞くのね」
「そう考えたんだけれどな」
「また急ね」
「思い立ったら、だからな」
この辺りは薊らしかった、思いついたらすぐに動く、その即断即決が薊の特徴の一つである。それでというのだ。
「行こうと思うんだけれど」
「遠いわよ」
裕香は薊に顔を曇らせてこう答えた。
「横須賀までは」
「ああ、けれどな」
「それでもなの」
「高速でバイク飛ばしたらすぐだよ」
横須賀まで、というのだ。
「もうそれこそな」
「一日で行くつもり?」
「駄目かい?」
「無茶じゃないの?」
神戸から横須賀でバイクで一日で行くことは、とだ。裕香は顔を曇らせたまま薊に対してこう返したのだった。
「幾ら何でも」
「無茶か」
「うん、横須賀まで行くにしても」
「編入する時に来た時もそうしたけれどな」
「バイクで来たのね」
「そうしたけれどな」
「やっぱり無茶よ」
それは、とだ。また言う裕香だった。
「それはね」
「じゃあ行くことはか」
「うん、横須賀までは」
「無茶か」
「せめて電車で行く?」
これが裕香の提案だった。
「八条鉄道で」
「ああ、あれでか」
「八条鉄道なら神戸から横須賀まで。乗り換えしないといけないけれど」
だがそれでもというのだ。
「お金は安く済むしね」
「バイクよりもか」
「早く行けるわよ」
「そうか」
「そう、だからね」
横須賀に行くにはというのだ。
「電車が一番いいわよ」
「そうなるか」
「やっぱり電車よ」
裕香はいささか強く薊に主張した。
「移動はね」
「?裕香ちゃん電車好きか?」
「それなりにね」
実際にそうだとだ、裕香は薊に答えた。
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