エターナルトラベラー
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第十二話 【H×H編】
前書き
この作品は広く、浅く、次の世界にクロスします。
今回はH×H編です。
マルクスを倒し、逃げようとした矢先に俺とソラは行き成り現れた歪な空間に吸い込まれてしまった。
何とか風を球形にまとわりつかせることには成功したが、その障壁もどんどんそがれていっている。
なぜなら、空間内部では力と力がせめぎ遭ったかのように荒れ狂い、その影響で俺の障壁を侵食する。
恐らく障壁を纏っていなければ既に命は無いような状況だ。
混乱する頭で状況を確認すると、俺達はどうやら何処かへと流されていっているようだ。
この空間で停滞しているよりはましだが、どこに流されていっているのか皆目検討が着かない。
奈落の底ということもありえる。
だがしかし、この状況を自力で脱出できる力が無い今はどこかに出口であればと、幾らも無い可能性にすがらなければならない状況だ。
「くっ、ソル!」
『ロードカートリッジ』
ガシュ
最後の一発。これで耐え切れなければ終わりだ。
「ルナ」
『プットアウト』
ルナの首もとで折れ曲がり、リボルバーに入っていた使用した残りの4発が排出される。
「アオ、これ!」
そう言って手渡されるカートリッジ。
この空間内に空気が有るかわからない。
故に、今操っている分の風以外に新しく魔法が使えるわからない状況ではベストな判断だ。
「わかった!ソル!」
ソルのリボルバーを開け、俺は急ぎ4発のカートリッジを装填する。
更にルナを待機状態に戻したソラは俺のソルを握り締める。
これもソルやルナだから出来る事。
ソル達は他人の精神力で魔法を行使している。
故に2人から同時に精神力を供給され、1つの魔法を使うなんて裏技も可能だ。
まあ、普段は余りにも必要ない機能なのだが。
「私達、どうなるのかな」
俺の顔を見つめるソラ。
「解らない。もしかしてこのまま出口なんて無いのかも知れない」
「そっか…」
しかし神は俺達を見放してはいなかったらしい。
流される先の方に俺達が吸い込まれたのと同じような亀裂を発見する。
「ソラ!あれ」
「うん!」
俺達は最後の気力を振り絞って障壁を操り、微妙にそれて行く軌道を障壁に使っている風を噴射代わりにして強引に変更する。
ドンドン狭まっていく障壁と近づいてくる裂け目。
チャンスは一度。
緊張と恐怖が支配する。
そんな時ソラが俺の手を握り締めて。
「大丈夫」
たったそれだけの言葉だったか、その言葉で凄く落ち着いた。
「今!」
俺はソラを抱きしめ、纏っていた風で最後の噴射を行い、ギリギリその体を裂け目の中へと飛び込ませた。
その裂け目を通り抜ける時俺は体をきしませるような衝撃を受けた。
体の中のなにかが強引に開かれていくような感覚だ。
「ぐぅ」
「くっ」
ソラも同じ苦痛を味わったのか小さく呻く。
視界が砂嵐から一気に蒼空へと変わる。
空中に放り出されたようだ。
引力に引かれて落っこちていく俺達。
「うわああああ」
「きゃああああ」
『フライ』
パニックになっている俺達を助けてくれたのは俺が握り締めているソル。
冷静にフライの呪文を使い、俺達を無事に地面へと降ろしてくれた。
「助かった…のか?」
「よかった」
無事に生きて大地を踏めた事に俺達は安堵する。
しかし、安堵したのもつかの間、俺達の体を異常が襲う。
「ぐぅ」
「熱い」
体から湯気のような物が噴出しているのが見える。
「な…これは…」
俺は自身に起きた変化に驚きつつソラの方を見る。
「精神力が勢い良く抜けていく」
ソラの方も同じ症状が襲っているようだ。
「うっ…」
その湯気は一向にやむ事は無く、徐々に俺は全身に途轍もない疲労感が襲う。
「くっ」
ソラはその場にへたり込んでしまった。
そんな時背後から声が掛けられた。
「何だ?お前らは」
振り返ると無精ひげを生やした年若の男。
「あっ…」
しかし、俺もソラもその声に答えることは出来ない。
「精孔が開きっぱなしじゃないか。お前ら念使いじゃ無いのか?」
「ネン?」
俺はそう言うのがやっとだ。
「なんだ?知らないのか」
少し考えるそぶりをした後、男は俺達にアドバイスをしてくれた。
「その湯気…オーラをそのまま出し続けると最悪死ぬぞ。死にたくなかったら自然体に構えて目を閉じろ。その体から出ている物を留めるようイメージしろ」
俺とソラは突然現れた男に警戒しつつもその助言に従う。
「血液が全身をめぐるようなイメージで頭のてっぺんから右肩、手、足を通って左側へ循環させる」
言われたとおりにイメージする。
「最後は体の周りで揺らいでるイメージだ」
するとその湯気は俺の体に纏わりつき全身から抜け出ていた感覚は無くなる。
「上手いじゃないか」
男はそう褒めてくれたが、俺達は今自分の身になにが起こっているのかも解っては居ない。
ドサッ
その音で振り向くとソラが地面に倒れ伏していた。
俺は助け起こそうとしたが、戦闘から訳の分からない裂け目に飲み込まれ、魔法を使い続けた後にこの全身疲労だ。
俺もソラを助け起こす事も出来ず、気絶してしまった。
◇
「なんだ?死んじまったか?」
行き成り空が割れたかと思ったら何かが落下してくるのを見つけ、俺は駆けつけた。
そこで見つけたのは何も無い平原の真ん中でマントを羽織った奇妙な男女の2人組。
と言うかこの島は俺が買い取った無人島だから人が居るわけ無いのだが。
しかも全身からオーラをほとばしらせている。
念使いかとも思ったがその後の態度でどうやら念は知らないようだ。
だとしたら自力で精孔を開いたってことになる。
とりあえず俺は纏の仕方を教えてやり、それ以上のオーラの消費を抑えてやろうとした。
纏は無事に出来るようになったようだが女の方が意識を失ったようだ。
続いて男の方も。
「生きてはいるな。しゃーない。家まで運ぶか」
よいしょっという掛け声と共に担ぎ俺はその場を後にした。
◇
「ここは?」
覚醒した俺は辺りの状況を確認するように見渡す。
ログハウス風の部屋の中にベッドが二つ、それぞれのベッドの上に俺とソラが寝かされたいたようだ。
「ソル!」
『ここに居ます』
俺のベッドの枕元に置かれているソル。
俺はソルを手に取ると隣のベッドで眠るソラにディテクトマジックをかける。
「異常なし」
その場でソラの容態を確認すると、どうやら気を失っているだけのようだ。
俺は起き上がるとソラのベッドに駆け寄り揺すり起こす。
「ソラ。ソラ」
「う…うん。アオ」
どうやら覚醒したようだ。
「ここは?」
「解らないけれど、どうやら俺達は生きているようだ」
「本当」
そう言って互いの生存を確かめるようにソラは俺に抱きついた。
そんな時。
ガチャ
「おっと、これはまずい時に来てしまったかな」
扉を開け、半歩部屋の中に入ってきているもじゃもじゃ髪の不潔そうな男。
「おら、邪魔だ、さっさと入れ」
そう言って男を蹴飛ばして中に入ってくるのは気絶する前に見た男だろう。
そんなコメディーをしている一瞬で俺はソラから身を引いた。
「なんだ、起きているじゃないか」
そういってこちらへと歩いてくる男。
「俺はジン、ハンターだ。それでお前達は?」
そんな問い掛けよりも俺は驚いた事がある。
気絶する前はその身に起こった事態で気に回らなかったが、今この男日本語を喋っているのである。
「日本語?」
「ああん?」
「あ、いや。俺はアイオリア、それでこっちが」
「ソラフィア」
と、俺達は自己紹介をする。
「アイオリアとソラフィアな。それで行き成りだがなんでお前達はあんな草原の真ん中で倒れてたんだ?
と言うかまずこの島は俺が買い取った無人島で、しかも海流なんかの都合で波任せでは絶対にこの島には着けない。
しかも俺は空が割れて、そこからお前たちが落ちてくるのを見ていたんだが。一体どういうことだ?」
問い詰めてくるジンさん。
まあ、仕方ないかな?
冷静に見れば俺達は行き成り空から降ってきたような物だ。
どうしよう。
総て話すべきだろうか?
日本語が通じていると言う事は此処は日本なのだろうか?
しかし今の俺達に必要なのは情報だ。
俺が語る言葉の中で、知っている地名が有ればそこに反応してくれるだろう。
だから俺は総てを話すことにした。
魔法使いである事だけは、今はふせておく事にするが。
俺達はトリステイン王国の貴族であること。
トリステインでトラブルがあった時に、偶然起こった空間の亀裂に吸い込まれ、何とか脱出しようと試みて、気が付いたらあの草原に放り出されていたこと。
放り出された直後に全身から靄が立ち込めて、立っていられなくなった事。
「なるほどな、世界は広いな」
その後ジンからもたらされた答えでここはどうやら別世界だと言う事がわかった。
この世界は世界地図がしっかりとあり、その中にトリステイン、ガリア、アルビオン、ゲルマニア、ロマリアなどと言う国は無いそうだ。
さらに聞いた話だとこの世界の文化レベルは俺達が居た日本と同等くらいの科学水準らしい。
「それからお前たちが体から噴出させていた靄みたいな物。俺達はオーラと呼んでいるが、それは念を使う為の生命エネルギーだ」
「ネン?」
「そ、ネン」
何だろう?どこかで聞いた事があるゆうな…
「ネン、年、然、燃?……念!?」
「おお!?どうした?」
念だと!?
久しぶりに厨二病な頭がフル回転。
記憶の奥底に眠っていた知識をピンポイントで引っ張り出す。
「ジンさんって先ほどハンターって言ってました?」
「ああ」
ハンター!?
念、ハンター。
この二つから導き出されるのは…
ハンター×ハンターの世界ですね。
やばい!死亡フラグが乱立しそうな世界じゃないか!?
「アオ?」
ソラが心配そうに俺を見る。
「だ…大丈夫」
大丈夫じゃないよ!?
ゼロ魔からハンター×ハンターなんて二次創作でも聞いた事無いよ!?
どうする?
トリステインには到底帰れまい。
どうすればいい?
いやまて、俺の記憶が確かなら、この世界にはジャポンと言う日本っぽい国があったはず。
そこなら生前と変わらないような環境で生活できるかもしれない。
しかし問題は戸籍か。
この世界に戸籍と言う物が有るのかはわからないが、俺達に自分たちの身分を証明するものが何も無いのも事実。
まて、何かあるはずだ。
偽造とか?
金とコネが居るから無理か。
まてまて、ここが本当にハンター×ハンターの世界ならハンターライセンスを取れれば最低限の身分証明書代わりにならないか?
成るかも知れない。
思い出せ、俺!
くっ!ゼロ魔への転生にあたり、ゼロ魔のストーリーについては反復して思い出していたが、それ以外なんて殆ど忘れてしまっている!
ハンター×ハンターも主人公がハンター試験の後に念というでたらめな力を手に入れるといったことくらいしか覚えてないぞ!
後、仮想現実っぽいゲーム。
あれは話が良く出来てたから未だ微かに覚えている。
念もハンターなら皆使えてたような気がする。
念と魔法。
どちらが強力かは解らないが、使えるに越した事はない。
どうやら初歩の纏?だかはできたっぽいから念を使うことは出来るのだろう。
「…ぉぃ…おぃ、聞いてるのか」
「あ、ああ」
「そうか。それでお前らこれからどうするんだ?この島は私有地だし今はある物を作っている最中だ、とりあえず近くの町…といっても海の向こうだが…に連れて行くが」
「あの、その、出来ればしばらくここにおいて欲しいんですが」
「あん?何でだ?」
「その、念?ってやつを教えて欲しいのですが」
ハンター試験?に合格するために。
何よりこの世界で生きる基盤を手に入れるためにライセンスが必要なのですよ!
「別に構わないが」
「おいおい、いいのかよジンよぉ」
今まで黙ってジンの脇に居た不衛生な男がジンに確認する。
「良いじゃないか。丁度今造っているこのゲームのテストプレイヤーが欲しかったところだ。念初心者ならば適役だろう?」
「そりゃそうだけどよ」
「という訳で、こいつらの世話と念の修行はドゥーンに任せる」
「はあ!?こいつらを連れてきたのはお前だろう!?」
「お前が適役だ。任せたぞ」
「お、おい!」
そう言い残して部屋から出て行くジン。
「ちっ、あいつ人の言う事を全く聞きゃしねえ。おいお前ら」
「は、はい」
俺は恐縮して返事をする。
「ジンがああいった以上、お前らの面倒は俺の担当って訳だ…念についても教えてやるが、まあ今日はゆっくり休め」
そう言ってドゥーンも部屋から出て行った。
去り際にめんどくせえと聞こえて気がするが、とりあえずしばらく俺達はここで厄介になれるみたいだ。
「アオ」
「あ、ああ」
「さっきの念?についてだけど」
と、ソラ。
「その前に1つ重要な事がわかった」
「なに?」
「ここは前の世界とは違う漫画の世界らしい」
「…本当?」
流石にソラもこれには驚いたようだ。
「本当…」
俺達は幾つかの確認の後その日はゆっくりと静養に当てた。
それから数日、俺達はまず気持ちの整理に当てていた。
現状の確認。世界の受け入れ。トリステインには戻れないだろうetc
二度目と言う事もあり、一週間ほどで何とか気持ちを切り替えることに成功した俺達は、自然見溢れる林の中でドゥーンさんから念の基礎を教えてもらっている。
念は覚えれるなら覚えていた方がいい。
この世界はゼロ魔よりも死亡フラグら乱立しそうな世界だ。
念使いとの戦闘なんて出来れば遠慮したいところだが、人生何が起こるかわからない。
実際にゼロ魔からまさか世界を渡る日が来るなんて思っても見なかったしね。
「先ずは纏からだ。纏はできるな?垂れ流しのオーラを体に纏わせる技術だ」
「えっと?」
「ジンから倒れる前には纏が出来ていたと聞いているんだが、纏ってのは一度出来れば忘れない物だ、出来るはずだぜ?」
ああ、あれか。
記憶の奥底には微かにあるな。
纏 絶 練 発 だったかな?
この辺りは微かに覚えてる。
俺は倒れた時の事を思い出し、精神を集中し、体内の精孔を開ける。
この精孔から溢れ出てくるオーラと言うものを逃がさないように体に留める。
何だろう?
このオーラと言うものは俺達が今まで使ってきた精神力と似ているような気がする。
それに気が付くと、少しぎこちなくはあるが割と簡単に纏は会得できた。
ソラの方も問題ないようだ。
「なんだ、出来るじゃねえか」
ドゥーンさんは頭をかきながらつまらなそうに言った。
「じゃ、次だ。今開いている精孔を閉じて体から洩らさないようにする。これを絶と言う。ほれ、やってみな」
なんて、多少投げやりな感は有るが、ドゥーンさんは次のステップを教えてくれた。
今開いている精孔を閉じる。
む?
何だろう?
なんか精孔を閉じたら今まで俺達魔法使いが使って居た精神力といった物が満たされるような感覚。
「アオ、これって」
ソラも気づいたようだ。
「ああ」
俺はそれに頷いた。
「あ?なんだ?ちゃんと絶は出来てるみたいだが、なんか有ったのか?」
「あ、いえ。何も」
ドゥーンさんの問いかけに曖昧に返す俺。
魔法のことは未だ言ってない以上今は黙っておくべきだ。
「ま、いいや。纏と絶は出来たんだ。しばらくはそれの反復練習だな、ってわけで後はお前らだけでちゃんとやっとけよ。俺も忙しいんだからな」
そう言ってドゥーンさんは踵を返して去っていった。
ドゥーンさんがこの場を去るのを確認してソラが俺に話しかける。
「アオ。この絶でオーラを閉じるとなんか精神力が満たされたような気がするんだけど」
「ああ。俺もだ。もしかしたらオーラと精神力は同じ物なのかも知れない。外側に放出するか内側に溜め込むかの差があるが」
後で時間をかけて解明した事だが、魔法使いが使う精神力とオーラは似た性質のもとの言っていい。
今まで垂れ流していた精神力の幾らかを自分の体内に留めておける体質が魔法使いには先天的に有った様だ。
とは言っても垂れ流し状態のオーラを少しずつ溜め込む訳だから最初一日に最大値の二割ほどしか回復しなかったのも頷ける。
それを今、垂れ流しのオーラを絶つ事で一気にその精神力のプールに流れ込んできたというわけだ。
それから数日、俺達は纏と絶の修行を繰り返した。
精神力の扱いは慣れているので同じものかもしれないと考えれば、それを操る技術には多少のアドバンテージがある。
一週間もすれば、絶はまだぎこちないところがあるが、纏については俺もソラも難なく出来るようになった。
「じゃあ、今日はこれから練の修行だ。ほれ、纏をしてみな」
言われて俺達は纏をする。
「大分ましになって来たな」
そういうとドゥーンさんも纏をして集中し始める。
「まず体内にエネルギーを溜めるイメージ。細胞の一つ一つからパワーを集め、それを一気に外へ」
ドゥーンさんの体から放たれた通常より遥かに多いオーラ。
その量に俺はわずかに気おされる。
凄い…
「こんな感じだ。練が出来れば基礎は後一つで終了だ、がんばれよ」
そんな言葉を言い残し、いつのものようにドゥーンさんは去っていった。
俺達は今見せられた事を思い出しながら練の習得に励む。
細胞からパワーを集め、一気に外に。
「練!」
俺の体を通常より遥かに多いオーラがその身を包む。
「アオ、凄い。私も負けない」
ソラも目を瞑り集中。
「練!」
激しいオーラがソラの体を包む。
ちょ!
俺よりも大きくない!?
ソラに負けるのはちょっと俺のプライド的にくる物があるよ!?
「出来た!」
嬉しそうにはしゃぐソラ。
「あ、ああ」
くそう。
絶対追い越してみせる!
俺は練の習得に励むのだった。
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