Fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて)
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第2話 槍の騎士(ランサー)
前書き
引越し投稿中です。
互いの状況を話し合った後――――
いつまでもこんな場所に居るのもなんだという事で、
シリウスとキャスターの二人は、鬱蒼とした森を抜けるべく小川に沿って歩を進めていた。
(シリウスサイド)
「――――――それで、これからどうなさいますか?」
「・・・先ずは何処か街に出て、拠点を確保し「ギュウ~~ゴゴゴゴゴ~~!!」
・・・・・・の前に腹拵えが必要だな//////」
・・・我が腹ながら、なんてタイミングで鳴るんだ・・・
「・・・もしかして、今の音は?」
「みなまで言うな//////」
流石に今のは恥ずかしかったぞ//////
「・・・(ジュルリ)」
「・・・・・・何故そこで舌なめずりをする?」
今、別の意味で物凄い身の危険を感じたんだが・・・?
「っ!?・・・それよりも、どうやって食料を確保なさるのですか?」
あ・・今、あからさまに話を逸らしたな。
「・・・・・。」
「分かった分かった、見てなかった事にするからそんなに睨むな!」
物凄く怖いぞ!
「・・・え~、どうやって食料を確保するかだったな?」
何とか話を逸らした後、俺は体内に所持している異空間から、特殊な魔法処理を施してある釣り針を取り出す。
「それは・・?」
「釣り針だ。今からこれを使って魚釣って食べるんだよ。」
取り出した釣り針を自分の髪の毛を数本抜いて編んだ釣り糸に括り付ける。
後は竿の代わりになる物を――――ああ、あれが調度良いな。
俺は道端に自生していた細い樹(吸収した知識では竹と言うらしい)を切り、竿の代わりにする。
「じゃあ始めるか。」
俺は手近な小川に釣り糸を垂らした。
「・・・餌を付けないのですか?
それに、あまり時間が掛かり過ぎると敵に捕捉される可能性が・・・」
「ああ、敵の事なら心配いらん。今の所半径2キロメートル内に魔力反応はない。
それに周囲に魔力阻害の魔法を掛けているから、遠距離から居場所を察知される事もない。
後、この釣り針には【入れ食い】の魔法を・・ああ、こっちでは魔術だったな。・・を施しあるからな、
直ぐに釣れる。っと、早速来たな!」
早速掛かった川魚を吊り上げ、小川の脇に置く。
そして再び小川に釣り糸を垂らす度に釣れ続ける。
「・・・・・・入れ食いの魔術・・・ですか?」
キャスターが盛大に脱力感襲われているな。
ま、ぶっちゃけ俺も母親からこの魔法を教わった時は、今のキャスターと似た様な反応をしたもんだが。
「本当は情緒もヘッタクレも無いしんで、あんまりこれは使いたく無かったんだが、今は非常時って事でな。
食料確保が最優先だ。セイッ!」
次々と釣り上げて、程なく俺の隣にこんもりと川魚の山が出来上がっていた。
「・・・シリウス様、その位にしておいた方がよろしいのでは?」
「いや、もう少し要る。・・・調度お客さんも来た事だしな。」
「えっ!?」
俺が視線を向けた先には、深紅の槍を持ち鋭い殺気をこちらに向ける蒼い獣が立っていた。
(ランサーサイド)
「出て来いよ、そこに居るのは分かっているんだ。」
「・・・チッ!」
桁違いの魔力を感じたってんで偵察に来て見りゃ、着いて早々に見つかっちまうなんてな・・・
これじゃマスターに何言われるか分かんねぇぜ。
俺は陰から様子を伺うのを諦め、樹の陰から月明かりが当たる場所へと移動する。
マスターに知らせなきゃなんねぇんだが・・・魔力阻害でも掛かってやがんのか、上手く念話が繋がらねぇ。
あの、いかにも魔術師風な女がやってやがるのか・・?
「テメェ・・・何のサーヴァントだ・・・剣士か?弓兵か?」
「・・・さて、どうかな?剣士か弓兵か・・・或いは魔術師かもしれんぞ?」
チッ・・・ま、流石にまともに応える訳は無えわな。
だが、ある程度は予測は可能だ。
こんなに存在感のある奴が暗殺者とは思えねえし、理性のある事から狂戦士の線も無い。
「そう言うお前は槍兵か・・・分かりやすいな?」
「フン・・・ぬかせ!この愛槍を見れば一目瞭然だからな、その程度じゃ驚きゃしないぜ?」
俺は愛槍ゲイボルグを構え、臨戦態勢を取る。
「クク・・・」
ッ!?
「テメェ・・・何でコッチを向きやがらねぇ!?俺を馬鹿にしてやがるのか!?」
「別にそんなつもりは無かったんだがな・・・ヨッと!」
「って言うか、いい加減釣りを止めやがれ!どう見ても釣り過ぎだろ、そりゃ!?」
「俺にとってはこれ位が適量なんだが。」
・・・・・・・・・・・・な、何だと!?
奴は俺を横目(無視した訳では無いみたいだが)にしながら、釣りを続けている。
「何でサーヴァントのテメェが飯食いやがんだよ・・・・・あ~、クソ!何か気が削がれちまったぜ。」
真面目にやってんのが馬鹿らしくなってきやがった。
「そんな事よりお前も一緒に飯喰わないか?・・・少し聞きたい事もあるしな。」
・・・・・・っ!?何だと!?
ウッ・・クソ・・・駄目だ、殺意が勝手に霧散しちまう・・・・何でこんな時に“誓約”が発動しちまうんだよ!?
発動条件は満たしてねえ筈だぞ!?
原因はどうあれ、発動してしまった以上誓約に逆らう事が出来る筈もなく、俺は大人しく槍を納める事になっちまった。
・・・まぁ、元から逆らえる様な生易しいモンじゃねぇんだがな。
「・・・・。」
―――数分後、俺は敵である筈の連中と焚火を囲む羽目になっていた。
ジュ~・・・ジュ~・・・
・・・クソ、良い匂いがしやがる!
・・・・・・そういえば、英霊になってこの方、まともな飯を食った覚えがねぇな・・・
バゼットは料理なんて出来ねえし・・・ま、生前もまともな食い物を食ってた訳じゃねぇがな。
「・・・後は此処に天日塩を振り掛ければ出来上がりだ。ホイッ!」
「おっと!」
受け取った川魚は、ジュ~ジュ~と美味そうな音を立て、香ばしい香りを立ち昇らせている。
「・・・ま、折角だから熱い内に戴―――――」
ゾクリ!
っ!?・・・な、何だ今の悪寒は!?
背後から、かつて感じた事の無い程の濃密な殺気が・・・
「ランサー・・・こんな所で何をやっているのですか・・・ア・ナ・タ・は!?」
「ゲェ!?バゼット!?」
振り返れば、地獄の底から響いてくる様なハスキーボイス――――怒れる大魔神、我がマスター、バゼット・フラガ・マクレミッツが
草むらからゆっくりとお出ましになった。
ヤベェ・・・すっかり忘れちまってたぜ・・・
(バゼットサイド)
「急に念話の連絡が取れなくなったと思ったら、敵の施しを受けていたとは・・・・・呆れて物も言えませんね。
・・・さて、覚悟は出来ていますか、ランサー?」
パキ・・パキキ・・・
指の関節を鳴らしながら、私はランサーに斬り抉る戦神の剣(フラガラック)を見舞うべくゆっくりと近付いて行く。
「ま、待てバゼット!?話を聞いてくれ!」
「弁明は仕置きが終わった後にゆっくりと伺いましょう・・・では覚悟は出来ましたか?
小便は済ませましたか、ランサー?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震える準備はOK?」
「眼光が尋常じゃねえ!?」
此処から先は言葉は不要・・・
「斬り抉る戦―――「ちょっと待て。」なっ!?」
振り上げた筈の私の右腕は、いつの間にか隣に近付いていた紅い男に掴まれて止められていた。
「クッ!?」
私はとっさに腕を払おうと振り上げようとするが―――――
ダメだ・・・動かない!?
魔術で強化した私の膂力でもびくともしないとは・・・
「お前達に話があるんだ、ランサーをボコるのはその後にしてくれ。」
「って、オイッ!?助けてくれんじゃないのかよ!?」
「マスターとサーヴァントの親睦を深める機会を奪う権利は、俺には無いからな。」
「フフ・・そうですね、コミュニケーションは大事ですよランサー・・・連携を取る為にもね。」
「・・・だ、駄目だ、目が笑ってねぇ!?
・・・って、やっぱり俺がボコられるのは決定事項なのかよ・・・」
「クックク、随分とマスターの尻に敷かれてるな、ランサー?」
「ほっとけ!」
「情けないですよ、ランサー。貴方も英霊の端くれならば、いまわの際位潔くしなさい。」
ただでさえ今の私はこの右手の鉄拳を振り下ろしたくて、うずうずいているのですから。
「そんな理不尽な理由でボコられてたまるかよ!?
冗談は色気の無えパンツだけにしとけ―――――って、あ・・・」
「「・・・・・・は?」」
一瞬ランサーが口にした言葉の意味が分からなかった・・・が、その意味を理解した瞬間―――
ブチブチブチィィ!
「・・・フ・・・フフ・・自分のサーヴァントが覗き魔だったとは・・・・ついぞ知りませんでしたよ?」
私の中で、紐状の何かがブチ切れる音がした気がした。
「・・・意味は良く分からんが、お前が地雷を踏んだのは良く分かった。
ランサー、短い付き合いだったが・・・骨は拾ってやるから安らかに眠れよ?(合掌)」
「って、手を合わせてんじゃねえ!?「ガシィ!」ぬお!?」
「おお、アイアンクロー!
じゃあな、ランサー。サラバだ。」
「ちょ!?ま――「メキメキメキ!」グオオオォォオオォォ――――!?」
「フン!」
ゴキリ!
ドサッ
「滅殺完了・・・」
乙女の着替えを覗いた罰です、永久に懺悔しなさい。
「だ・・・誰が乙女・・・だ・・?」
む・・・まだ息がありましたか。
「雉も鳴かねば撃たれまいに、愚かなりランサー。ナムナム(再び合掌)・・・・」
同感ですね。
私は倒れ伏すランサーの腹部にトドメの連撃を打ち込みながら、シリウスの言葉に相槌を打った。
「―――漫才はこれくらいにして、そろそろ本題に入ってもいいかしら?」
「「あ・・・」」
私達は、ランサーの対面に座っていたの女魔術師から降り注ぐ、極寒の視線で我に還ったのだった。
(キャスターサイド)
大幅に逸れていた話を漸く元に戻した私達は、互いに名乗り合った後、バゼットと名乗った女も焚火の前に座した。
「・・・それで、話というのは何ですか?」
シリウス様と漫才を演じていたとは言え、警戒の構えは解いていない・・・か。
・・・まぁ、今更体裁ぶってもといった感はあるけれど。
私はシリウス様に目配せをして、説明してもらえる様に促した。
実際、さっきの敵との対話する事など、私も聞いていなかったのだから。
「じゃあ、俺から説明しようか。
・・・先ずはバゼットと言ったか?お前はキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグって名前に聞き覚えがあるか?」
その名前には聞き覚えがある・・・というよりも世界から与えられた情報の中にその人物についての内容が存在していた。
「ッ!?・・・かの宝石翁の事を、私達魔術師の間で知らぬ者は居ませんよ。」
一瞬驚きの表情を見せた後、直ぐに冷静さを取り戻したバゼットが語る。
曰く、次元を旅する第二魔法の使い手・・・魔術を行使する人間全てが追い求めてやまない極致に到達した偉大なる魔術師。
そして赤い月を殲滅した強力な人間・・・
「しかし、かの宝石翁がどうしたというのですか?」
「・・・その爺さんが俺をこの世界に喚んだんだよ。・・・この聖杯戦争を潰す為にな。」
ッ!?
「なっ!?宝石翁が貴方を召喚したと!?それも、聖杯戦争を潰す為にですか!?」
シリウス様は詰め寄るバゼットをあしらいながら、それを肯定する。
「ああ、本人が言うには聖杯戦争が本来の目的からあまりにもかけ離れてしまったので、
システム構築に関わった人間としては我慢がならんらしい。」
「・・・宝石翁が聖杯戦争のシステム構築に携わった事は聞いていましたが・・・まさか本人がシステムの破棄を望んでいたとは・・・
協会がこの話を聞いたら卒倒する事でしょうね。」
動揺を隠す様にバゼットは懐から煙草を取り出し、火を着け様とするが―――――
「・・・しっかり動揺しとるな。」
ライターを持つ手が定まらず、一向に火が着かない。
「まあいい・・で、だ――――お前達も別に聖杯自体を望んでる訳じゃなさそうだし、俺達と同盟を組まないか?」
そんな彼女に精神の立て直しを許さず、シリウス様は追撃を敢行する。
「「「・・・・・・・・・・・・は?」」」
「「「っ!?――――何|(ですって)(だと)!?」」」
ランサー組の2人は勿論、そんな事は全く予想していなかった私も、その発言に暫く思考が停止せざるを負えなくなっていた。
TO BE CONECTED
後書き
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