秋葉原総合警備
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都外のアニメフェス
「アニメフェスティバルねぇ…。」
事務所には、今回開催されるイベントの実行委員長が来客していた。依頼を出してくれるのは有り難いが、問題は別にあった。
「うちには2人しかいないんだよ。2人ともここを離れて、警備なんて出来ねぇよ。秋葉原滅んじまうよ。」
会場は都外だった。最近の治安の悪さは異常であり、あまり遠出は出来ない。それにイベントであれば、数を揃えれば警備は整う。出番は無いように思えた。
「他を当たってくれ。悪いな。」
「そうですか…。失礼しました。」
不安そうに、事務所を後にしていった。やはり受けておくべきだったかなと頭を掻く。迷う暇もなく、電話が鳴る。グッズ店で暴力事件があったようだ。
フィギュア、ポスター、CD、DVDが詰まったある男の暗い一室。パソコンの画面は不気味な会話を映し出していた。
『アニフェスあの子来んの?テンション上がる!!』
『アキバじゃないんでしょ?みんなで組めばイケる?』
『拉致?誘拐?w』
『やりたい放題できるなアキバ外なら』
『あの警備員鬼畜ww』
『あいつ来ないはず。あいつフェス来たら、秋葉が荒れ果てる。』
情報収集のつもりか、真剣に更新される会話を眺めていた。閃いたか、高速で長文を入力し、投稿する。
「ちっ、遅かったか。美咲は裏を探せ!」
「りょーかい!」
店の商品をかっさらった犯人は姿を消していた。警察も使って隅々まで探す。素早く辺りを見回すと、一瞬だけ不審な姿で走り去っていくのが映った。人を強引に掻き分け、急いで追う。メガネを掛け、膨らんだリュックを背負った男など見る暇もない。
(…あいつが、噂の警備員か。)
歯牙にもかけずに犯人を追って、スピードを落とさずに右折した。すると犯人は姿を現す。美咲に先回りされ、腰を抜かして後ろに下がっていた。一発喰らったか、かなり怯えている。動物のように、首根をつかんで立ち上がらせ確保した。
「離せっ!…フェスに行きたいんだよ…!」
「犯罪になんなけりゃ、オタクでも中毒でも何でもいいんだよ!…それより、フェスってのはそんなにデカいのか。」
「そりゃ…ライブもあるし、販売も、グッズのバザーだって!」
そういえば、断るばかりでフェスの規模を聞いてなかった。警察が駆けつけるが、今回は盗まれたグッズを渡さなかった。
「ちょっと、こいつ借りていいか?」
事務所まで連れて行き、取り調べのついでに、フェスの詳細を聞くことに。
「グッズのバザーってのも珍しいな。」
「うん…。買いすぎてかぶった物とか、普通に出品目的だとか。その中に探していた物があったりね。」
日本のアニメ文化も地球に気を遣う時代かと、少し関心持ちながら続きを聞く。
「今年はプライベートで、人気アイドルとかが来る噂とか、限定のグッズとかいろいろあって。」
「もしかしたら、荒れるってことだな。」
強盗青年を置いておき、先程追い返した実行委員長に電話をかけた。名刺もしっかりと保管している。すると青年は情報料の代わりに釈放しろと訴えてきたので、ボロボロの美咲の椅子と化した。
「あ~、もしもし。秋葉原総合警備です。先程のご依頼ですが…。」
申し訳なく、実行委員長を戻って来させ、再び話を始めた。今日もなかなかの報酬で、美咲に美味いものを食べさせることに。
「陽一。何であのおじさん、戻って来たの?」
「アニメフェスティバルとやら、行くことになった。警察は頼りねぇが、なんとかしてくれる。」
遠慮なく、追加を注文する美咲。健康な人はよく食う。ろくな警備ではないので、荒れるようでなければ、自分達もフェスを楽しめるだろうか。よく目にする青い服の警備員もいるだろう。
「ところで、場所どこ?」
「千葉だな。」
有名な遊園地のイメージしかない。ついでに行きたいという要望は、陽一には届かなかった。明後日には出発する。
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