ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through to take her back in Alfheim
Chapter-14 障壁を乗り越えて
Story14-4 互いの気持ち
第3者side
キリトが広大なテラスに着いて数分。
空を眺めていると、遠くから飛んでくる人影が見えた。
「来た…………か」
遠くから飛んでくる人影は大きく一回深呼吸すると、意を決したようにキリトの前へと舞い降りた。
「……やあ」
キリトは、リーファを見る。
少し強張っているものの、いつもの微笑を交えながら短く彼女に言った。
「お待たせ」
リーファも笑みとともに言葉を返した。
しばしの沈黙。
「スグ……」
やがてキリトが口を開き、瞳が真剣な輝きを帯びる。
だが、リーファは軽く手を上げてその言葉を遮った。
翅を一度羽ばたかせ、すとんと一歩後ろに下がる。
「お兄ちゃん、試合、しよ。あの日の続き」
そう言いながらリーファが腰の長刀に手をかけると、キリトは軽く目を瞠った。
キリトの唇が動き、何かを言いかけるが、すぐに引き結ばれた。
彼はしばらくリーファを見つめていたが、数秒後にはこくんと頷き、翅を動かして距離を取る。
「いいよ。今度はハンデ無しだな」
微笑を消さぬまま言い、背中の剣に手を添えた。
涼やかな金属音が響く。
リーファが愛刀を中断にぴたりと構え、まっすぐにキリトを見つめていた。
キリトは腰を落とし、威圧を醸すかの如く構えている。
キリトは全力でリーファと戦うつもりだ。
いっさいの手加減を抜いて、持てる全ての力をつかい、彼女と戦おうとしているのが見てとることがてきる。
「寸止めじゃなくていいからね。
行くよ!!」
そう言うと同時に、リーファは地を蹴った。
距離を詰め、高く振りかぶった剣を、リーファは一直線に斬り下ろした。
スイルベーンでは不可避と言われたリーファの斬撃。
だが、キリトは空気が動くように僅かに体をずらすだけでそれをかわし、その直後、唸りと共に右手を跳ね上げる。
リーファが引き戻した長刀でそれを受けるが、ずしんと思い衝撃に両腕が痺れたのだろう、一瞬顔を顰めた。
そして武器が弾かれる勢いを利用して、2人は同時に地を蹴り、背中の翅を震わせる。
二重螺旋状の軌跡を描きながら急上昇し、交錯点で剣を打ち合う。
爆発にも似た光と音のエフェクトが宙に轟き、世界を震わせる。
リーファも勿論、剣士として、また剣道選手としてとても強いのだが、剣を交えるキリトの動きは、無駄が一切無い。
舞踏のように美しい動作で攻防一体の技を次々に繰り出している。
やがて、何度目かの激しい撃剣によってリーファの体が弾かれた時、彼女はそのまま宙を後ろに跳ね飛んで大きく距離を取った。
翅を広げてぴたりと静止し、高く、高く、大上段に剣を構えている。
これがリーファの最後の一撃だ。
それをキリトも感じたのか、彼も体を捻り、後方に大きく剣を振りかぶる。
一瞬、凪いだ水面のような静謐が訪れた。
そして、同時に2人は動いた。
空を焼き焦がす勢いで、リーファが宙を駆け、長刀がまばゆい光の弧を描く。
キリトも同じようにダッシュし、後方に腕を振りかぶり、剣を輝かせながら空を裂いて飛んだ。
リーファの愛刀が頭上を僅かに越えたところで、リーファは長刀を手放した。
主を失った剣は、光の矢となって空高く飛んでいく。
しかし、彼女はそれに目を向けることなく、両腕を大きく広げ、キリトの剣を迎えようとした。
恐らく彼女は、自分がキリトを傷付けようとしたことに対し、謝罪の意を込めて彼の剣の下に、自分の分身であるその身を差し出したのだろう。
リーファは両手を広げ、眼を半ば閉じてその瞬間を待っているようだった。
しかし、飛翔しているキリトの手にも、剣はなかったのだ。
「「……!?」」
キリトもリーファと同じタイミングで両手の剣を手放していたのだ。
2人はそのまま宙で交錯し、同じように両腕を広げたキリトとリーファの体が正面から衝突する。
2人はエネルギーを殺し切れず、お互い重なって、そのまま回転しながら吹き飛ばされていった。
「どうして……」
「何で……」
そう同時に言う2人が沈黙し、視線を交差させたまま、しばらく慣性に乗って空を流れ続けていたが、やがてキリトが翅を広げ、姿勢を制御して回転を止めながら口を開くのが微かに見えた。
「俺、スグに謝ろうと思って…………
でも……言葉が出なくて……せめて剣を受けようって……」
キリトがリーファの背に回した両腕にぎゅっと力を入れる。
「ごめんな、スグ。
せっかく帰ってきたのに……俺、お前をちゃんと見てなかった。
自分のことばかり必死になって……お前の言葉を聞こうとしなかった。
ごめんな……」
その言葉を聞いたリーファの両眼からは迸るような涙が溢れていた。
「あたしのほうこそ……」
それ以上は言葉にならなかったようで、リーファの泣き声だけが響いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数分後、まだリーファは泣き止んでいないようで、キリトはそっと頭を撫で続けている。
キリトが話し始めた。
「俺……本当の意味では、まだあの世界から帰ってきてないんだ。
終わってないんだよ、まだ。
アスナが目を醒まさないと、俺の現実は始まらないんだ。
だから、もう少しだけ待っていてくれないかな……?」
キリトの言葉に、リーファは小さく頷き、呟くように言った。
「あたし、お兄ちゃんを待ってるよ。
ちゃんとあたしたちの家に帰ってくる、その時を。
……だから、あたし手伝う。
説明して、アスナさんのことを……なんで、この世界に来たのかを……」
その言葉に、キリトは頷いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
キリトとリーファが連れ立って、ゲート守護像前の広場に着陸すると、見知った人影がこちらに駆け寄ってくるのが見える。
リーファの隣に立つキリトを見て表情を目まぐるしく変えた彼は最終的に首を傾げた。
「えーと……ど、どうなってるの?」
レコンの問いに、リーファはにっこりと笑いかけながら答える。
「世界樹を攻略するのよ。
キリト君と、あんたと、あたしの3人で」
「そ、そう……って……ええ!?」
リーファは、そう言いながら眼前の巨大な石扉を見上げた。
すると、キリトが何かを思いついたように、顔を見合わせる。
「ユイ、いるか?」
その言葉が終わらないうちに、中空に光の粒が凝集し、ユイが姿を現した。
ユイは両手をがっしと腰に当て、憤慨したように唇を尖らしている。
「もー、遅いです!」
「悪い……ちょっと立てこんでて。
で、何か分かったか?」
「はい。あのガーディアンはステータス的には問題ないのですが、湧出パターンが異常です。
ゲートへの距離に比例して湧出量が増え、最接近時には秒間12体にも達していました」
「個々は大丈夫だが、総量ではフロアボスと何ら変わりはないってことか。
そうなると厄介だな」
「でも、パパのスキルでなら瞬間的突破なら行けるかもしれません。
あれ、パパ、剣はどうしたんですか?」
「あ…………」
「しまった…………」
キリトとリーファは青ざめる。
そんなとき、声が響いた。
「ったく、剣を放り投げんなっての。
あぶねーだろ」
「まぁ、あのシチュエーションだから勘弁してあげたら?」
「それもそうだな」
インプの少年と、スプリガンの少女。
間違いなく、シャオンとマリンだ。
「お前、まさか…………シャオンか!?」
「その通り。俺はシャオンだ」
「私はマリン。よろしくね」
「とりあえず、剣、返しとく」
シャオンが剣を持ち主に返す。
「ところでキリト、お前インストールしたアレ、見た?」
「アレ?」
「メニュー開いてアイテム見てみ」
キリトがアイテム欄を開くと、そこに驚きの文字が。
「エリュシデータとダークリパルサー…………!?」
「とりあえず、それだけデータを抜き出しておいた。
使えるだろ」
「ああ、ありがとう。シャオン」
「じゃあ、行こうぜ。
お姫様を取り戻しに……あの世界に終止符を打つために!!」
Story14-4 END
後書き
さぁ、ALO編も終盤に突入。長らく出てこなかったシャオン登場←
シャオン「ようやくここまで来たんだ…………!」
キリト「取り戻しに行こう。俺たちの未来を」
シャオン「あの世界に終止符を!」
終盤に差し掛かった蒼閃。Don't miss it!!
じゃあ……
キリト「次回も、俺たちの冒険に!」
シャオン「ひとっ走り……付き合えよな♪」
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