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戦国異伝

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第二百五話 支城攻略その二

「わしはもう書かぬ」
「そして、ですな」
「そのうえで」
「返事を待つ、城の中には猫の子一匹入れぬ」 
 そこまで徹底して囲むというのだ。
「そうなればな」
「はい、兵糧も入りませぬし」
「次第に追い詰められていきますな」
「そして我等はな」
 対する彼等はというと。
「飯をふんだんに食うのじゃ」
「それを敵にあえてですな」
「見せつけますな」
「そうじゃ」
 まさにその通りだというのだ。
「そうするぞ、そのこともよいな」
「ですな、そうすれば」
「あの城の者達も」
「降りたくなる」
 丹羽は実際に今囲んでる城を見て言った。
「だからそうするのじゃ」
「城を攻めるのではなく」
「人を攻める」
「まさに殿の戦の仕方ですな」
「それをしますか」
「そうじゃ、確かにこれならこちらの兵は死なず」
 そのうえでだった。
「敵の兵もそのまま手に入れられてな」
「悪いことはありませぬな」
「それも全く」
「殿はあれで欲が深い方じゃ」
 丹羽は笑ってこうも言った。
「関東を手に入れられることもな」
「ただ手に入れられるのではなく」
「関東をそのまま傷付けずにですな」
「手に入れたい」
「そう仰っていますな」
 管野と堀尾も言う。
「確かに欲が強いですな」
「武田、上杉にしてもそうでしたし」
 そして甲信、北陸もだ。彼等が領地にしていた。
「そうしたことを考えれば」
「確かに殿は欲が強い方です」
「それもかなり」
「うむ、しかしな」
 それでもと言う丹羽だった。
「それで正しいのじゃ」
「ですな、民も迷惑を被りませんし」
「土地も傷つきませぬ」
「町もそのまま手に入り」
「得られるものばかりです」
「だから殿は正しい」
 例えだ、欲が強いにしてもだ。それはいい欲だというのだ。
 こう話してだ、そのうえでだった。
 丹羽は城を観る、そして二人に言った。
「では待つか」
「ですな、降る時を」
「城の者達が」
 管野と堀尾も丹羽の言葉に頷き囲んでいる城を見ていた。そしてそれが数日経ってからだった。城の方から使者が来てだった。
 本陣にいる丹羽達にだ、こう問うたのだった。
「文のことですが」
「それのことでありますな」
「はい、あのことはまことでしょうか」
「如何にも」 
 穏やかな言葉でだ、丹羽は使者に答えた。
「左様でござる」
「では降れば」
「誰のお命もいりませぬ」
「織田家に入りですか」
「織田家の家臣となります」
「何と、そこまでとは」
 文に書かれている通りだったのでだ、使者も驚くのだった。
「信じられませぬ」
「しかしそれがです」
「織田家のお考えですか」
「左様です」
 こう使者に言うのだった。 
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