美しき異形達
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第四十四話 薊達の決意その十二
「ここは」
「まさに世界中から来られてますね」
今度は桜が薊に応えた。
「この大学、そして学園に」
「高等部も世界中から人が来てるしな」
「留学生も先生も」
「日本人の方が多いけれど」
日本の大学だからこのことは当然と言えば当然ではある。
「けれどな」
「それでもですね」
「何割かは留学生の人だからな」
その生徒はだ。
「相当な数だな」
「他の学園とはそこも違いますね」
「それこそ北朝鮮位か」
「はい、この学園に来ておられないお国の方は」
「あそこはな」
仕方ないといった顔でだ、薊は言った。
「鎖国してるからな、本当に」
「北朝鮮はね、こことは全然違う意味で特別よ」
こう言ったのは向日葵であった。
「何かもう無茶苦茶な国家だから」
「漫画みたいな国だよな」
「うん、何もかもがね」
「東映の特撮ものに出そうな、な」
薊は北朝鮮のことをこう評価した。
「そうした国だからな」
「だからね」
それで、とだ。向日葵はさらに言った。
「鎖国もしてるし」
「この学園に来てないこともか」
「仕方ないわよ」
「そうだよな、あそこだけは」
「あそこ以外の国の人は来てるけれどね」
「一杯な」
「それこそね」
「そしてそれだけに」
菫も言って来た。
「色々なことを知る機会も多いわよ」
「世界中のな」
「有り難いことにね」
「だよな、そのこともな」
非常に、と言う薊だった。
「いいよ」
「薊ちゃんもこの学園に入って」
「色々勉強させてもらってるよ」
そうだというのだ。
「本当にさ」
「それは何よりね」
「本当にな」
薊は微笑んで言った。
「そのことも」
「私なんかね」
ここで裕香が言うことはというと。
「それこそ。奈良の山奥だったから」
「他の国の人と出会ったりとかなかったのね」
「全然だったわ」
そうだったとだ、裕香は鈴蘭に答えた。
「本当にね」
「奈良は海外からの観光客の人も多いけれど」
「奈良市はね」
主張な場所は、というのだ。
「多いけれど」
「山奥になると」
「もう外国からの人どころか」
まさにそれどころか、というのだ。
「誰も来ないの」
「正真正銘の隠れ里なの」
「それこそ追っ手も来ない位のね」
「だから誰も来なかったの」
「昔は山窩の人にも間違えられたし」
「山窩ね」
黒蘭が山窩と聞いて言ったことはというと。
「あの人達はまだいるらしいけれど」
「あっ、そうなの」
「そうみたいよ」
「もういなくなったっても聞いたけれど」
裕香は黒蘭の言葉に意外といった顔で驚きを見せて言った。
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