本日のお題
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
4/20 無敵な気分
前書き
討ち入りでの戦闘終盤の沖土。
今日の敵は数が多くて目に映る敵を次々と斬っていたら、いつの間にかアジトを一周して土方さんと合流してしまった。
「お前、持ち場はどうした」
「全部斬ったんでついでに目に映るゴミ片っ端から斬ってたら一周してやした」
「は」
背後で土方さんが笑った気配がする。その姿は返り血で真っ赤に染まっているんだろう。見なくたって分かる。
一方、俺は返り血も浴びず自分の血も一滴も流しちゃいない。俺はそんなにマゾじゃない。
そんな会話をしている間にも次々と涌いて出てくる敵を容赦なく斬り捨てる。
二人だと随分と早かった。このアジトにいる敵の大半は俺達が斬ったと思う。何人かとっ捕まえて他の隊士に引き渡し、土方さんが残党がいないか確認するよう各自に無線で指示を出す。
「土方、沖田、死ねェエエエ!!」
叫び声と共に斬りかかってきた残党に焦る事もなく一太刀を浴びせる。
自分でも驚くほどに無感情だった。いや、寧ろ高揚感すら覚えた。
土方さんが背中を預けてくれているというだけで、俺はいつだって無敵になれるのだ。それが酷く楽しい。最初から無敵だけど。
俺は狂っている。人を殺しておいて高揚して、この場を楽しんでいる。近藤さんや土方さんのために他人の命を奪う事に躊躇いはなく、喜びすら覚える。
真選組にいる近藤さん以外の誰もがきっと、何かしら歪んでいてどこか狂っている。特に俺達二人の歪みは酷かった。でもそれで良い。
「俺とアンタがいれば真選組は無敵ですぜィ」
「……何を今更」
「でもアンタがいなくなったら俺は無敵じゃなくなるんです」
「……ッ!!」
土方さんが息を詰まらせる。
「だからいつでも無敵でいさせて下せぇよ」
俺は天才だけど完璧じゃないから。
「近藤さんの背中はアンタが、アンタの背中は、俺が護る」
「……馬鹿が」
こんな血生臭い場所で返り血を浴びた格好で、まんざらでもなさそうな顔した土方さんが愛おしい。
今なら魔王でもドラゴンでも何でも倒せそうな気がする。
――嗚呼、狂っている。
ページ上へ戻る