秋葉原総合警備
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警察も頼りの警備員
思い切りのけぞり、死んだように寝ているときに、しつこく電話が鳴る。
「うっせぇ…。はぁい、こちら秋総。」
『3番地フィギュア街で、集団によるフィギュア強盗が発生。直ちに急行せよ。』
返事も無しに電話を切る。ゆったりと椅子から立ち、準備を軽く済ますと、横長ソファで熟睡しているもう一人を叩き起こす。
「警察だぁ!止まれ!」
交番警察と犯人の逃走劇が繰り広げられていた。街を歩く一般市民も跳ね飛ばされる。サンタのように、盗んだフィギュアを音を立てながら運ぶ。警官は中年、犯人は体つきが良いためか、徐々に差が開いていく。交差点で
逃走する犯人を迎える車が待っていた。
「…へへっ!大量ゲットだ……?!!」
激しい音と共に、車に一人の男が着地。車は上からへこみ、窓が弾ける。
動きやすい春秋用のワイシャツに漆黒のスラックス。黒く立った短髪、シンプルながらも輝くピアス、鋭い目つき。
「も、もう…来たのかよ。」
「俺が怖ぇなら、強盗すんなよ。」
着地の衝撃で仲間のドライバーは気絶。追い詰めた犯人も足を震わす。しかし、その足に鞭を打ち、素早く駆け出す。男も、それは想定内。
「面倒くせぇ!!」
気絶したドライバーを引きずり出し、犯人目掛け投げ飛ばす。一般人にも危険な飛び道具は犯人に直撃。軽く土煙たてながら身柄を確保した。犯人は集団。まだ終わってはいない。耳に手を当て、無線らしき通信を飛ばす。
「美咲、そっちは!」
『1人は潰した!今、駅近くでもう1人追ってる!』
面倒な仕事に苛立ちながらも、通信を切り、犯人の袋を奪い返す。未開封のパッケージが数個。心臓が限界に近い中年警官も追いついた。
「はぁ、はぁ…秋総か、助かったよ。」
「現役にバリバリに代わってもらえよ。ほら、まず2人とこれ。」
後は任せたと、目を回した強盗犯と盗まれた品を警官に渡す。
その美咲とやらは、犯人を行き止まりに追い込む。盗んだ品の中から、武器になりそうな物を慌てて探す。
「こんな時のために……うぐっ!!」
袋を漁る間に、眼鏡越しに顔面に蹴りが入る。段々と薄れゆく意識のなか、美咲の蹴り足を伝って何かが見える。
「……く、く…ろ……えぶっ!!」
風前の灯火も消え、かかと落としで地面にめり込む。
「2人確保っと。」
友達と軽く遊ぶようなパーカーとスカートのコーデのいかにも女子姿。こちらも無線で連絡を取る。
「2人潰した。あとは逃げられたね。」
『こっちは3人だな。適当に警察に任せとけ。』
「は~い。」
しばらくして、被害に遭った店長が事務所へ来た。いかにも強盗されそうな気弱な人だ。
「本当にありがとうごさいました…。8割ぐらいは戻ってきました。」
「あんた前もだろ?結構、店大きいんだからさ、防犯しっかりしろっての。」
騒動もなかったかのような、緩い雰囲気の事務所。あまり整頓とは言えない空間であった。店長はお礼を差し出し、最後までぺこぺこと頭を下げ、帰っていった。
「陽一、いくら入ってんの?」
「6万。ちょうど被害額ぐらいだな。」
ハピコを吸いながら、事務所のテレビで堂々とゲームをする美咲。生意気なと、また苛立ちながらも、美咲の目の前のテーブルに小遣いを置く。
ゲーム、漫画、グッズ、フィギュアの店がビル単位で立ち並ぶなか、紛れてビルの最上階の広い一室を陣取る事務所。
『秋葉原総合警備』
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