人間不信の憑依転生
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第1話 転生
私は飛び降り、その生を終えた。
しかし、感覚がある。
指も動かそうと思えば動くし、呼吸も出来る。
私はまだ生きているのだろうか?不思議に思い、今まで閉じていた瞼を開ける。
そこは、何もかもが白かった。白い壁に、白い床。机も椅子も棚も扉も、全てが真っ白だった。
「…何?ここ」
疑問を声に出してみても、その答えを返してくれる者などいなかった。
私がまだ五つの頃、両親の目を盗んでアニメと言うものを見た事がある。確か内容は、中学生くらいの女の子が妖精の世界を助ける為に変身して悪者を倒すー…的なアニメだった気がする。それを見たとき、ピンク色の髪をした主人公が牢屋に入れられていた。そして、主人公は先程の私のような台詞を言ったとき、ちゃんと悪役の人がここは何処なのか丁寧に説明してくれたのだ。
上のような展開を期待して、勇気を出して声を発したのだが……。
私の場合、悪役もいないらしい。悪役にすら嫌われる私はどうしたらいいのだろう。
ガチャ
「!?」
何もすることが無かったので、棚などを物色していると、白い扉がやけに大きい音を立て開いた。
「…おや、気がついたみたいだね」
扉の奥から現れたのは、肩くらいの金髪に青目で丁度二十歳くらいのお兄さんだった。部屋と同じく、この人の服装も真っ白だ。ついでに微笑んだ時に見えた歯も白かった。
「遅くなってしまってすまない。待ちくたびれただろう?」
「えっ…い、いや…」
「まぁ立ち話も何だし、どうぞ椅子に座ってくれ。飲み物を用意するよ。紅茶でいいかい?」
「ちょ……あ、はい」
突然現れた白い人に戸惑いながらも、言われた通りに椅子に座る。暫くすると、これまた白いティーカップに淹れられた紅茶が出される。人に何かを出されると言うことは初めてで、なんか嬉しい。
白い人も向かいの椅子に座り、一口紅茶を飲む。
「…さて、まずは自己紹介からしないとね。僕の名前は『グレイス』。神をやっている」
「神、様…?」
「あぁ。僕の仕事は、世界に絶望し死んでいった者達を案内することなんだ」
「案内…?」
世界に絶望した者…。つまり、私の事か。
でも案内とはいったいなんの事だろうか?天国か地獄のどちらかに連れていくとかそういうのなのか?
「絶望した者、と言っても、色んなタイプの人がいてね。君みたいに自分から死んだ者もたくさんいたし、他の人間から殺されてここに来た者もたくさんいた。ここは、そんな人間達が来る場所さ」
「・・・」
「そして、ここに来た人間達に、希望を持たせるのが僕の仕事。案内と言うのは”転生“さ。また新しい生を受け、そこで幸せに生涯を終えてもらうのさ」
そこまで聴かされ、私は頭の整理がつかなくなった。
取り敢えずあれだ、こいつ私を転生とかしてもう一度あの地獄へ放り込む気だ。
そんなのごめんだね。
「一応言っておくけど、拒否権と言うのは無いからね。僕が上司に怒られてしまうからさ」
そう言ってまた紅茶を飲むグレイスさん。
何だかどんどん話が膨大になっている気がする。
「どこの世界に行く、どんな容姿になるかは全てランダムだ。でも、きっと何処かに君を信じてくれる人がいる筈さ。人間は一人では生きていけない。漢字でもそうさ。人と人が支えあって『人』になるんだからね」
喋るだけ喋って、私に有無も言わさない勢いでグライスさんはこう言った。
「それじゃあ、転生をするよ。君の次の人生に幸あらんことを」
じゃあね、と、そうグライスさんは言った気がした。
徐々に遠退いていく私の意識。だんだんと薄くなっていく私の身体。
三秒経過したところで、私の記憶は途切れた。
・・・
ズキリ、私の意識は痛みと共に覚醒した。
目を開けると、私はグレイスさんと同じ金髪青目の女性に抱き抱えられていた。
「『デイダラ』…それがあなたの名前」
「あう…あー?」
喋ろうと努力してみるが、どうにもならない。と言うか今の私はどんな体になっているんだ?腕も小さいし首もあまり動かせない。これが赤子の体なのか。
「ほう…意外と元気な子じゃぜ」
「土影様!」
ふわふわと”浮いて“きたお爺ちゃんは土影様と呼ばれているらしい。様、がついている辺り、偉い人なのだろう。でも、どうせこの人達もあの両親みたいに途中からイライラしたりしたら殴ってきたりするんだろう。私はそういう人しか知らないからな。
「ワシはオオノキじゃぜ。よろしくな、デイダラ」
「私はデイダラのお母さんで、ユリっていうのよ。それでね、あなたのお父さんはイワキって人でね?デイダラが産まれる前に天国へ行っちゃったの」
少し悲しそうな顔をするユリという女性。
そうか、私の父にあたる人はもう亡くなってしまったのか。でも知らない人だしな。わからん。
「これからよろしくね、デイダラ」
今度は満面の笑みで私に言うユリさん。
うん、そうだな。考えといてやるよ。あんたらが前の両親みたいに裏切らなかったらな。
やけにあっさりと、そして疑い深く私の新しい人生は始まったのであった。
後書き
何だか頭がむしゃくしゃしたまま書いたので文がぐちゃぐちゃです。
わー大変だー(棒)
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