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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第三幕その五

「その子をそうしたのですから」
「ううむ、何処までも恐ろしいですね」
「そうしたことが出来る人が学校の先生です」
「それはすぐに何とかしないと」
「生徒が大変ですね」
「いや、日本は素晴らしい国ですが」
 それでもと言う先生でした、すっかり蒼白になったお顔で。
「そうしたとんでもない状況に光が当てられないこともですね」
「あります」
「そうなのですね」
「はい、先生は間違ってもそうした方ではないので」
「だからですか」
「素晴らしいと思います」
「自分がそうされたらと思いますと」
 こうも考えるのが先生なのです。
「とても」
「自分がやられて嫌なことはですね」
「他の皆にすることも」
 動物達も含めて、というのです。
「したら駄目です」
「そうしたお考えだから」
「僕は鞭を使いません」
 決して、というのです。
「彼、老馬にもそう言って約束しています」
「そうなのですね」
「はい、そうしています」
「そうですか、そうしたことが出来ることが凄いです」
「そうなりますか」
「それに先生は動物の言葉もわかりますよね」
「いつも会話しています」
 これこそ先生がみんなと心を通わせられる理由の一つです、そして心も通わせられているのです。
「どの子とも」
「そのことも大きいですね」
「言葉のこともですね」
「はい、非常に」
「先生は医学だけで他の分野も学者であられて」
 そして、と言う教授さんでした。
「しかもかなり独特の」
「学者としてはですか」
「面白いと思います」
 いい意味でそうだというのです。
 そしてです、教授さんは先生にこうも言うのでした。
「しかも権力とかお金とかには」
「興味がないです」
「そうですね、無欲な方ですね」
「特にお金の方は」
 どちらにも興味がないですがとりわけこちらになのです。
「ないです」
「イギリスでもですよね」
「そうなんです、むしろ今はかなり」
「お金がおありですか」
「いや、イギリスにいた時は患者さんが来なくて」
 動物が一杯なので患者さんが中々寄り付かなくなったのです。
「それで困っていました」
「ですが今はですね」
「はい、この大学の教授のお仕事がありますから」
 それで、なのです。
「決まった収入があるので」
「お金には困っていないのですね」
「しかも立派なお家もあります」
 あの広い日本風のお家です。
「満足しています」
「今の状況で」
「はい、そうなっています」
 そうだというのです。
「もう何もいりません」
「ううん、よく私達の世界では」
 教授さんはここでこんなことをです、先生にお話しました。
「大名行列の様にです」
「偉い人がですね」
「病院の中を歩いてそして診察したりしますが」
「僕はああしたことは」
「そちらもですね」
「興味がありません」
 本当に心からの言葉でした。 
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