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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第三幕その三

「どうしてもです」
「叱れないですか」
「叱ろうとはするんです」
 その猫が悪さをする度にです。
「けれど私が目の前に来ても」
「そうしてもですね」
「はい、全く動じていなくて気持ちよさそうに寝ていたり平気な顔をしていたり足で耳を掻いたり。あと顔を洗っていたり」
 全部猫の仕草です、けれどその仕草がだというのです。
「そんな動作を見ていると。実は犬に対してもですが」
「叱れないですか」
「どうしても」
「では叱るのは」
「犬も猫も妻と娘です」
 家族のうちのこの二人がしているというのです。
「そちらの担当は」
「では貴方は」
「甘やかすだけですね、それで私が叱られます」
 猫や犬ではなく、です。
「ちゃんと叱る時は叱らないと駄目だと」
「そうですか」
「そういえば先生はいつも多くの動物達と一緒ですね」
「はい」
 ジップやチーチー達とです、大学でも一緒です。
「そうです」
「彼等が悪戯をした時に叱ることは」
「ないですね」
「ないですか」
「そうなんです、僕が叱らなくても」
 そうしてもというのです。
「お互いに注意し合うので」
「それで先生は」
「元々怒ったり叱ったりしないんです」
 穏やかに忠告はしてもです、これは先生の性格故です。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、どうして」
「そうなのですね」
「僕は叱らないです」 
 先生の周りにいる動物達の誰もです。
「馬に乗る時も鞭を使いません」
「ただ乗られて」
「はい、行く先を言うだけです」
 たったそれだけだというのです。
「それだけです」
「それで充分なのですね」
「後は彼が進んでくれます」
 馬の方で、というのです。
「そうしてくれますので」
「鞭を使う必要はですね」
「痛いじゃないですか」
 鞭を使えばというのです。
「馬が」
「だから使われないのですね」
「そうです」
「そうですか」
「鞭で叩かれると物凄く痛いですよね」
「昔は子供に躾でも使っていましたね」
 愛の鞭という言葉がある程です。
「そうした言葉ある位に」
「はい、ですが叩かれてもです」
「子供には何にもならないですか」
「確かに悪いことをすれば注意しなければならないでしょう」
 けれどそれでもというのが先生のお考えなのです。
「ですが鞭を持って生徒を怯えさせてそして叩いて無理に何かをさせたり叱ったりということは」
「先生は違うというお考えですね」
「そんなことをしても何もなりません」
「そうですね、確かに」
「日本では今も生徒を竹刀で叩く先生がいますね」
「います」
 鞭ではないにしてもです。 
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