弓兵さんの狩人生活
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6日目
最近、この日記を書いていて思うのだが、この“日記”は“日記”として成立しているのであろうか?甚だ疑問に思う。
さて、本日でこちらに来て6日目となる。
本日決まったことは、私自身のこの村での処遇といったところだろう。
朝。
私は宿泊施設で起床した。
久々にちゃんとした寝床で寝たこともあり、普段よりもぐっすりと寝ていたようだ。
部屋に備え付けてあるカーテンを開け、ついでに窓を開ける。
外を見ると、数人の人影が見えた。
まだ、日も昇って数刻しかたっていないだろうがその人影達は忙しなく動いていた。
きっと、露店を開く準備をしているのであろう。
昨日までであれば、見知らぬ世界に来てしまったということでいろいろ不都合があったが、今日は違う。
久々にゆっくりとできる時間があるのだ。
このまま部屋でのんびりと過ごし、カオリが来るまで時間を潰すのもありだろう。
もしくは、鍛錬をするのもいいかもしれない。
これから時間をどのように使うか考えていたが、結局。
「まあ、とりあえず温泉にでも入りにいくか」
ということで、温泉に行くことにした。
この村――ユクモ村には様々な効能を持つ温泉がある。
皮膚病に効くとされるナトリウム炭酸水素塩泉。
冷え症に効くとされる食塩泉。
筋肉痛や神経痛に効くとされる含アルミニウム泉など様々だ。
本日はその中の一つ、傷の回復を早める硫酸塩泉に入った。
硫酸塩泉とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の硫酸イオンを主成分としている温泉で薬効効果が高いとされている。
効能として、浸かればやけどや切り傷の回復を早めたり、筋肉痛や神経症に効くとされている。
また、飲めば肥満症や糖尿病にきくとされている。
しかし、急性疾患や結核、悪性腫瘍や腎不全を患っている場合や下痢の場合は湯に浸かったり飲んだりすることはやめておいた方がよい。
薬と同じで、用法・要領を守って正しく入浴してくださいということだな。
充分に温泉を堪能した後は、自分の部屋に戻った。
自分の部屋に着くと、カオリが部屋の前で待っていた。
「あ!!やっと来ましたねお兄さん!!」
こちらに気づいたようだ。
「もう、一体どこに行ってたんですか?」
「どこって……浴場だが?」
「それならそうと言ってくださいよ、お兄さん!!呼びに来たらいないからびっくりしたじゃないですか!!」
どうやら心配をかけたらしい。
こんなことなら、書置きの一つでもおいて置けばよかったのかもしれない。
それにしても……
「意外だな……」
「何がですか?」
「いや……昨日の感じから君はてっきり朝が弱いかと思っていてね。この時間に呼びににくるとは思っていなかったのだよ」
彼女にたいする認識を変えなければいけないな、と思った。
「もう、失礼ですね!私は別に朝に弱いわけではありません!!」
カオリに連れられ村を歩く。
村長はもうギルドにて待っているらしい。
ギルドまでの道のりは、私が泊まった宿泊施設から一本道なのでそうそう迷うことはない。
カオリがいる理由は念には念をということらしい。
昼。
昼、といっても正確な時間はわからなかったがとりあえず、昼としておこう。
さて、昼になったということで、約束通り、村長との話し合いが始まった。
「さて、エミヤ殿。わざわざ来てもらってすまんのう。お主も疲れておるじゃろうに」
「いや、私のほうこそ、こんな怪しいものに対し。わざわざ時間を省いてもらい感謝している」
「では早速本題に入っていこうかの」
そうして話し合いは始まった。
昨日村長に要求したものは三つ。
一つ、報酬がでるまでの数日間とは言わず、しばらくの間この村での滞在を許可してほしい。
二つ、私の身分の証明できるものを作ってほしい。
三つ、私になんでもいいので職を紹介してほしい。
「一つ目に関しては昨日も言ったとおり村のものに危害を与えなければよいぞ。二つ目に関してはギルドに登録すれば解決するじゃろうて」
そういいながら一枚の用紙を差し出してきた。
「これは?」
「これはギルドに登録するための用紙じゃよ。この紙に、自分の名、性別、年齢を記入し血判をしておいてくれればよい、後のことは職業欄はあとで付け足すことが可能じゃから未記入のままでよいぞ」
「で、三つ目に関しては……まあ、お主の武器適性を見てから応相談ということでどうじゃろうか?」
「武器適性とは?」
「武器適性とは人が生まれ持った能力のようなもんでの。適性がある武器を使用すればその武器のもつ潜在的な力を使用できるとされており、逆に適性のない武器を使用すればその武器の能力自体が著しく低下するとされておる」
なるほど、話を聞く限り武器適性とはクラス適性みたいなものと理解すればいいのであろうか。
「なるほど。しかし、なぜ武器適性を調べてから仕事を紹介という流れなのかね?聞いた限りでは武器適性はいわば戦闘系の職に就いたものが必要となってくるもので、非戦闘系の職に就くものにとっては関係ないであろう?」
「そうでもないんじゃ。武器適性と職業は密接に関わっておるんじゃよ」
そして、村長が武器適性と職業との密接な関係について教えてくれた。
まず、武器適性は大きくわけて四つにわけることができるらしい。
剣や刀、双剣など刃物類を扱うことに適性があるもの。
ハンマーや笛などの鈍器類を扱うことに適性のあるもの。
弓などの遠距離武器に適性のあるもの。
そして、ランス系統に適性のあるものなどがいる。
また、自分にあった適性の武器を使用するとその武器がもつ潜在的な能力や自身の身体能力が上昇するらしい。しかし、自分の適性ではない武器を使用した場合、武器そのものがもつ能力を上手く引き出すことができない場合もあったり、自身の身体能力を上昇させるどころか低下させる危険性もあるらしい。
その能力上昇による恩徳をうけやすいものの一つが職業とのことである。
例えば、料理人という職に就くとしよう。料理をする際にもっぱら使用されるものといえば包丁である。この包丁、広義的に考えると刃物の一種である。
なので、料理人は刃物適性がもつものがなることがおおいらしい。
なぜならば、刃物適性のもつものが包丁を使い料理をすれば料理が美味しく作ることができるだけでなく、素材そのものがもつ効力を上手く引き出すことが可能らしい。逆に刃物適性ではないものが料理をすると、料理自体の味が落ちたり、効力が上手く引き出せなかったりするという。
なお、武器適性についは、武器適性がなくとも武器の熟練度を鍛えさえすれば新たに武器適性に目覚めるという。
ただし、本来は持っていないはずの適性を無理やり作っているので生まれ持っている本来の武器適性よりかはやはり質が落ちるらしく、そのため潜在能力を引き出せるとしても"本職"とよばれる人たちより若干であるが劣るらしいがそれは微々たるものであるという。
つまり、努力はいずれ報われるということである。
「さて、武器適性と職業の関係について説明したところで早速、主の武器適性を見てみようかの。デイジー!!あれを持って来てくれんかのー」
「はーい」
そういい受付嬢が奥から持ってきたものは剣や弓、槍やハンマーなどの数種類の武器であった。
試しにひっそりと解析をかけてみるも、なにも変哲のないただの武器である。
「では、この武器の一つずつ順に触れて行ってみてくれんか?このようにの」
そういって村長は剣に触れる。
「そしてこのように、触れてみて光った武器がお主の適正にあった武器じゃ」
そういって、手元に持つ剣を見せてくる。
確かに光っている。村長の頭が光っているのではないかと思い、村長のほうを見るが光っていない。
あくまでも、武器が光っているのである。
「逆に持っても、光らない武器は今の自分に適性のない武器、さらにもつこともできず、弾かれる武器は適性がないどころか。武器そのものに嫌われておるということらしいぞい」
確かに、村長は槍を持っているが光っていない。次に村長は槍を置きハンマーに手を伸ばしたが、なぜか弾かれていた。
「こんな感じかのう。さて、早速やってもらおうと思うんじゃが、なにか質問はあるかの?」
「なぜ、武器が光る?その武器はなんの変哲も能力もないぶきであろう?」
「ほう、そんなことが主にはわかるのか。確かにこの武器には何の能力も付加されておらぬし、その気になれば街でも売っているような武器じゃ。では、なぜ光るのか?そんなものワシは知らん。というよりも原理がわかっていなくての。わしらはそれらの武器に精霊がやどったと考えておる」
「精霊?」
「そう精霊じゃよ。まあ、精霊といっても本当にいるかどうかわからんからの便宜上、精霊のせいにしとけば何かと都合がいいからのう、精霊が宿ったということにしておるんじゃて」
なるほど、つまり、原理がわからない未知の力ではあるが便利ではあるため使い続けているわけか。
「では、早速始めていこうかの。まずは剣から順に触って行ってくれんか?」
剣―――つまり、刃物類から適性を見ていったが………
「光らんのう」
そう、刃物類、鈍器類、ランス系統の武器を持ってみたが全く光らなかったのである。
たしかに、私には才能がない。
だが才能がない割に努力はしてきたつもりで、自身が投影できる武器は一通り使う自信がある。
しかし、この結果はなんであろうか………正直、涙がでたことは秘密だ。
駄菓子菓子―――じゃなかった、だがしかし、私にはまだ大本命の弓が残っている。
生前もそして死後も、さらに聖杯戦争でもお世話になった弓が残っているのだ。
そう、既存の宝具を魔改造してオリジナルの宝具を作っちゃうぐらいには愛用していた弓が残っているのである!!
さらに、五次では弓兵として召喚されているのである!!!!
つまり、私には弓に適性があるようなものであろう。いや、絶対あるのである!!!!!!
だが、現実は甘くなかった………
「では、最後に弓を持ってみとくれ」
言われたとおりに弓を持とうとする。
しかし、いざ持とうとすると、
「っつ!!」
「まさか、弾かれるとはのう………」
そう、弾かれたのである。しかもそのはじかれ方が尋常ではなかった。
先ほども村長がハンマーに弾かれていたが今回のはじかれ方はその比ではない。
村長に対してのハンマーが『ちょっと、気安く触らないでくれる?』というまだ優しい嫌われ方だとすると、今の私に対しての弓は『は?こっち見んな。てか、私の視界に入らないでくれる?気持ち悪いからさ』という風に完全に嫌われている。
なぜ、なぜなのだ!!生前も死後も聖杯戦争でも〝弓子ちゃん〝と名をつけて愛でていたのに、どうして答えてくれんのだ!!
「お兄さん、元気出してくださいよ。考え方を変えればお兄さんには選択しがたくさんあるということじゃないですか」
カオリが慰めてくれている。
「ま、まさか全ての武器に適性が見られないとはの………どうしようかの。なにぶん、初めてのことじゃし」
「とりあえず、身分証明となるギルドカードの発行をしときますね」
「それがいいかもしれん」
若干、憐みの視線があるのはなぜなのだ。
しかも、聞いた限りでは適性が見られなかったのは、私が初めてというではないか………。
「うーむ、本来であれば、カードを発行している間に職の選択をさせるんじゃが………とりあえず、明日、次は明朝に来てくれんか?こちらでよさそうな職を何個か探しておくで」
「あ、ああ。よろしく頼む」
そうして、ギルドカードを受け取った私は、宿泊施設に帰宅した。
カオリも着いてくるといったが丁重に断っておいた―――私だって一人で泣きたい時がある。
そして夜。
この日記を書いて一日を振り返っているのである。
では、恒例の私に一言
と、言いたいところだが今日はもういいだろう。私の硝子の心は粉々なのだから………
~???~
「………はふ~」
まさか、人間の姿で温泉に入るのがここまできもちいいとは。
とうとう明日、彼に会える。
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