ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through to take her back in Alfheim
Chapter-14 障壁を乗り越えて
Story14-2 無謀な戦闘
第3者side
キリトは上空を飛びながら、ユイに聞いていた。
「ユイ、ドームの位置、わかるか?」
「はい、前方の階段を上がればすぐです。
でも、いいんですか? 今までの情報から類推すると……」
「それでも、やらなくちゃいけないんだ。命までとられる訳じゃないし」
「それはそうですけど…………」
「それに、もうあと1秒でもぐずぐずしてたら発狂しちましそうだ。ユイだって早くママに会いたいだろ」
ユイは小さく頷き、その頬をキリトは軽くつつくと、目の前の階段を一気に登り始めた。
軽く減速させて足をつき、しばらく歩くとプレイヤーの10倍はあろうかという大きさの妖精型の石の彫像が2つ、目に入る。その間には華麗な装飾を施した石造りの扉が聳え立っている。
「……待ってろよアスナ………………」
キリトは自身に言い聞かせるかのように呟いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さらに歩くこと数十メートル、扉の前に立つと不意に石像が動いて扉の前で持っている剣を交差させる。そして右の石像から声が聞こえてくる。
『いまだ天の高みを知らぬものよ、王の城へ至らんと欲するか』
その声と同時にキリトの前に最終クエストの挑戦意志を質問する選択肢が現れる。迷うこと無くYesを示すボタンに触れる。
『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』
声が聞こえると同時に左右の剣が離れていき扉の姿をはっきりと認識させる。
そしてその大扉は中央からぴしりと割れ、轟音とともにゆっくりと左右に開いていく。
ここでは死なない、という考えを言い聞かせたあと、頬を叩いて振り払う。
「行くぞ…………ユイ、しっかり頭引っ込めてろよ」
「パパ……頑張って」
扉が開ききると同時に中へと入る。内部は完全な暗闇だった。
暗視の魔法を使おうとしたキリトだが、次の瞬間まばゆい光が頭上から降り注ぐ。
そこは大きなドーム上になっており、天蓋部分には円形の扉が確認できた。
「行けっ!!!」
己を叱咤するように声を出して地を蹴る。
飛んですぐにドーム内に何十枚もある窓が白く光る泡のような者へと変わり何かを生み出そうとする。そしてそれはすぐに人間の形を取っていくつか放出される。
それは銀色の鎧をまとった巨躯の騎士だった。顔は鏡のようなマスクに覆われていて見えず、右手にはあの野太刀くらいはあったんじゃないかというほどの長剣を携えている。
あれがここを守る守護者……リーファの言っていた最後の関門だろう。
「そこをどけぇぇぇぇッ!!!」
キリトの絶叫とともに騎士との距離がゼロになってゆく。そして剣がぶつかりあい、弾いた瞬間キリトは騎士の首根っこを掴み密着してそのまま剣を撃ち込む。
騎士は獣のような絶叫を上げ、硬直した後すぐにエンドフレイムに包まれ四散する。最後の壁としては弱すぎないかと疑問を抱かせるほどだった。
だが、突破できない理由はゲートを見上げた瞬間に見つかった。
いつの間にか天を覆いつくすほどの騎士が出現しており、天蓋はもう騎士と騎士の間に出来た隙間からしか見ることが出来ない。ざっと見ただけでも三桁は軽く飛んでいるだろう。
「っ……うおおおお!!!」
キリトは叫びながら、こちらに向かってきた敵を斬り裂いて、再度飛ぶ。
一匹目の剣を体を捻って回避すると大剣を一直線に斬り下ろして断ち切る。
さらにその奥から来た二匹目の剣を左手の甲で受け流し、体勢を崩した相手に右手の剣を斬り下ろす。
キリトのスピードが減殺されていたのでHPを削りきれなかったが、後ろから来る三匹目に向き直るときに二匹目に蹴りを叩き込んで削りきる。
すでに振り下ろされていた剣を危ういところで弾くと
「せああああっ!!」
気合いと共に左拳をおもいっきり突き入れる。
「うおおおああぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びと共にキリトは敵の軍勢の中に飛び込む。
守護騎士たちは加速するその剣でその姿を散らしていく。
キリトがそこで顔を上げると、意外なほど近くに石のゲートが見えた。
そこに向かって上昇するときに、何かがキリトの右足を貫いた。
冷たく輝く光の矢だった。その光は雨のように降り注ぎ、その少しが腕や足に突き刺さる。
その矢の第二波が来るのは構わないと言わんばかりのスピードで、キリトは突進する。
光の矢はすべて叩き落とす。
しかし……残り数cmというところで衝撃が襲った。
十数匹の守護騎士の長剣に貫かれ、キリトはあっけなく姿を散らした。
――惨めだな……でも、また俺はここに戻ってくる
その時だった。
誰かが開いたままの入り口からドーム内に侵入し、キリトの方に向かってくる。
来るなと言おうとしても、言えない。
その侵入者は俊敏な機動で迫る守護騎士たちの剣を避けるとなんとかキリトの横までたどり着いた。
「キリト君!」
侵入者はリーファだった。
リーファはキリトのリメインライトを抱えると、出口へとその翅を向けた。
途中いくつかの光の矢が命中するも、そんなのお構い無しにスピードを上げていく。
やがて、出口にたどり着き……キリトの視界を明るい日差しが包んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リーファは蘇生魔法を覚えていなかったので、世界樹の雫というアイテムをキリトのリメインライトに注ぎかけた。
たちまちその場に立体魔方陣が展開され、キリトの姿が実体化した。
「キリト君…………」
悔しがっていると突然リーファの叫び声とともに隣で地面を踏む小さな音が聞こえてきた。
「…ありがとうリーファ……でも、もうあんな無茶はしないでくれ…………俺は大丈夫だから……これ以上迷惑はかけたくないんだ」
「迷惑なんて……あたし……」
リーファが言葉を紡ぐ間にキリトはくるりと向きを変えていた。
「待って! 一人じゃ無理だよ!」
「それでも、俺は行かなきゃいけないんだよ……」
「もう……もうやめて……いつものキリト君に戻ってよ……あたし……あたし……」
キリトの否定しようとした声にリーファの声が重なる。
「リーファ……ごめん、あそこに行かないと何も終わらないし始まりもしないんだ…………そして会わなきゃ、いけないんだ……もう一度」
だがそれにかぶせるようにキリトは優しくリーファに呟く。そして、最後に付け加えるように、大事な部分を呟く。
「もう一度……アスナに」
Story14-2 END
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