極短編集
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短編39「その時が来たら 」
夕ご飯を食べている時の事だ。箸でブロッコリーを取ろうとしたら、6歳の息子も箸を伸ばしたので……
「おっと!」
と、僕は箸を引っ込めた。そして息子に……
「先に誰かが箸を出していたら、箸を出したダメだよ」
と、話した。
「えっ、なんで?」
「それはね。死んだ人の骨をツボに入れる時に、二人組で、お互いの箸を使って骨を運んでいれるからなんだよ。それを経験するとね。箸と箸で挟む事で、胸が苦しくなるんだ」
と、祖父の骨を親父と二人で箸でつかみ、骨壺に入れた時の事を思い出しながら伝えた。
「ボクもする事あるかな?」
と、息子は言った。大正9年生まれの僕の婆ちゃんはまだ生きている。でも、いずれ近いうちに……そして親父も。
親父は今、末期の肝硬変だ。なので今年の10月11月と病院に一緒に付き添い、残りの時間について聞いて来た所だった。葬儀についても、もう親父と話し合った。
「ああ、そうだね。きっと近いうちにあるよ。その時が来たら、パパと一緒にやろうね」
と、僕は息子に言ったのだった。
おしまい(H2013)
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