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極短編集

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短編4「八月の少年」

 八月の間だけ、アイツは来ていた。私たちは、仲良しになった。でも、夏の終わりに……

 彼は、外国へ行ってしまった。

◇◇◇

「見送りに行く!」

 と、言ったけど……飛行機が飛んで行ってしまう当日、私は2階の自分の部屋で、うずくまって泣いていたのだった。

「時間よ、止まれっ!!」

 と、枕に顔をうずめて叫んだが……時間は、止まってはくれなかった。どんどん進んで行く時計の針。とうとう、針は間に合わない時を差した。
 だから私は、部屋を出て居間に行こうと思ってドアを開けた。すると……
 
 お父さんが立っていた。

「あうっ!」

 と、私の体から声が出た。お父さんが私を担ぎあげたからだ。そして、お父さんは私を車に放りこむと……

「さよならだけは、ちゃんと言っておけ!」

 と、お父さんは言って、車を飛ばして空港に向った。街並みが飛ぶように動いた。
 空港に着いた。案の定、飛行機は飛び立つ所だった。私はもう、どうでも良かった。これで良かった!と思った。これで……

 でも、お父さんは……

「間にあったら、絶対に手を振れよ!」

 と、お父さんは言って、アクセルを踏みこんだ。お父さんは、車をいきなり回転させた。クラクショョンや、警備員に怒鳴られる中、車を飛ばし空港の端に向った。

キキキキーーーーー!!!

 急ブレーキ!!車が映画のように、横滑りした……(汗)

「ぎゃ!」

「早く降りろ!!」

 頭ぶつけた~!!と、言う間も無く私は、お父さんに車から追い出された。

「低いな……!仕方ねえ」

 お父さんはいきなり、車のボンネットに飛びのった。

「早くお前も乗れ!」

 私は、お父さんに手を引かれた。

「お前はこっちだ!」

「えっマジ!?」

 私はさらに、車の屋根に登らされた。

ベコッ!

 屋根のへこむ音。お父さんのへこむ顔。そして私は、車の屋根って軟らかい!と、思っっていた。

「来るぞ!精一杯手を振れ!!」
 
 私は、そう言われて夢中で飛行機に、手を振った。窓にアイツが……

 見えた気がした。

 家に帰った後……お父さんは、お母さんに、どえらく怒られていた。私は、お父さんをかばう訳でもなく、お父さんに……

「見えたかなあ~」

 と、言ったら……

「わからん!!」

 と、即答されてしまった。でも……

「やるだけはやった、大丈夫!」

 と、お父さんは言った。
 後日、彼から手紙が来た。エアメールだった。

『ビックリした!君が手を振ってたのが見えたよ!!』

 と、書いてあった。

◇◇◇

 私が、八月に出合った少年は今、海の向こうにいる。私は、冬休みに会いに行こうと思っている。私は現在……



 『12月の少女』を目指してバイト中だ。

おしまい
 
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