科学と魔術の輪廻転生
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魔術について学ぼう! 前編
三歳。
俺はいつも通り剣術の稽古に励んでいる。
流石に二〜三歳の幼児に筋トレは酷なので、簡単な型の練習をしている。
やっぱり全体的な筋力不足感が否めない。
成長してくれば話は変わってくると思うが。
父さんから言わせれば三歳でこの筋力なら将来が楽しみだと言われたけどね。
ちなみに、この世界では刀ではなく剣が主流だ。
だが、父さんは有名な刀使い。
なので俺は木刀で練習をしている。
それと、遂に家庭教師とやらが今日来るらしい。
楽しみだなー。
どんな人が来るんだろうか。
如何にも家庭教師っぽい人か?
いやそれってどんな人だよ。
白髪の混ざったおじさん、的な?
そんなことを考えながら待っていると、突然、
ピンポーン。
とベルの音が鳴り響く。
このピンポンがどういう原理なのかは家庭教師さんに習おう。
空気を振動させて音を出してることは分かるが。
ガチャリと鍵を父さんが開け、その後直ぐに勢いよくドアを押し開けた。
すると。
「あたっ!」
ゴツン、という鈍い音とともに、可愛らしいソプラノ声が聴こえてきた。
『えっ?』
まさかそんな鈍い音とともに人の声が聴こえるとは思ってなかった俺達は、思わず声を漏らしてしまった。
恐る恐る家族全員でドアの奥を見てみると。
こちら側に脚を向けて仰向けにぶっ倒れている少女が居た。
服はなんか、短めのローブと言えば良いのだろうか。
いかにも異世界、という服装だった。
彼女の綺麗な茶髪は、日光を反射してキラキラと輝いていた。
十代前半くらいの少女だろうか。
顔にも少女らしいあどけなさがある。
だがそんな彼女はその茶色い瞳をクルクルと回している。
可愛い顔が台無しだ。
多分脳震盪でも起こしたんだろうな。
というか、あれ?
家庭教師って、この人なのか?
随分若く見えるが……見た目と年齢が全然違うのだろうか。
だが、俺は反射的に見てしまった。
見てはいけないものを。
この歳にはまだ早いものを。
白。
ただそれだけしか俺の口からは言えない。
────
「初めましてー。私は家庭教師として来たアイリです。よろしくお願いします」
そう言うと彼女は座りながらも頭をペコリと下げた。
可愛い。
あれからどうなったかと言うと、玄関で話すのも難なので、取り敢えずリビングにて話を進めることになった。
近くで見ると、アイリさんは美少女だ。
ドジっ子っていうレッテルが貼られてるけどね。
ちなみに、彼女はぶっ倒れたことを覚えてないらしい。
気絶してたしね。
とことんドジだ。
「初めまして、僕はアルフレートです。此方こそよろしくお願いします」
そう言って俺も頭を下げた。
「コレは楽しみ……」
彼女は聞こえないように呟いたつもりらしいが思いっきり丸聞こえだ。
父さんと母さんは全て分かっているような顔をしてうんうんと首を縦に動かしてる。
おい。
俺だけなんで仲間はずれなの?
何が楽しみなの?
教えてくれよ。
「この子に魔術について教えて頂けませんか?」
そう言ったのは母さんだ。すると彼女は、
「分かりました。じゃあアルフレート君、一緒に座学しますか」
「はい」
俺は首肯した。
あれ、なんだろう。
なんか、嫌な予感がする。
────
今の状況を簡潔に説明しよう。
茶髪の美少女に抱き着かれてる。
アイリさんである。
「カッワイーー!!!」
「あ、あのー」
「きゃー!」
聞く耳を持たないとはこのことを言うんだろうな。
嫌な予感が当たるとは思わなかった。
ま、普通の男性的に言えばではご褒美なのかもしれないが。
まだ性欲も何も無い俺にされたってね。
性欲は無くても恥じらいはあるのだ。
俺はアイリさんをなんとか宥めた。
これで合計三十分も無駄にしてしまった。
────
「ではまず、魔力について教えるとしますか」
書斎にて伸びをしながら彼女は言う。
さっきまでの姿が嘘の様に真面目な顔だ。
俺は、書斎にある適当な椅子に座っている。
彼女は話し始めた。
魔力。
それは魔術を使う時に使用するものだ。
生き物が必ず持っているものだが、無生物は魔力を持てない。
しかし例外は二つあって『魔石』という物には魔力を溜められるらしい。
二つ目はこの世界の大気だ。
大気にも魔力があるが、それについてはよく分かってないという。
魔石については後述する。
そして一人一人魔力の色や質は違っていて、同じ魔力を持つ者は殆ど居ないらしい。
後、その魔力の色によって使える魔術の属性が変わる。
ちなみに、産まれて数ヶ月の頃に触れたあの水晶は、魔力量を測るための物だったらしい。
俺の魔力はあの水晶を木っ端微塵にする程だから、最低でも平均的な魔術師の三倍はあるとのこと。
……おい。
「取り敢えず魔力についてはこんな物で良いですか?」
俺は動揺を隠しながら言った。
「もっと大きい魔力を測れる機械は無いんですか?」
「ありませんね」
言い切られた。
どうやら人族や獣族の魔力はそう多くないため、大きな魔力を測る必要がないらしい。
「もしかしたら、魔大陸にはあるかもしれませんね」
うーん、いつか魔大陸にも行ってみたいな。
旅行とかで。
そう考えながらまたもや俺は手を挙げた。
「魔石ってどんなのですか?」
「魔石は、色のついた透明な石のことです。
その魔力の属性によって色が変わります。
色とともに、魔石そのものによって使える魔術が決まっているのです。
色が濃ければ濃いほど内包する魔力が多いですね」
成る程。
魔石の魔術というのは、種類だけでなく発動する魔石からの距離も決まっているらしい。
なので、本来の用途で戦闘には殆ど使えはしないらしい。
本来の用途、ならば。
実は、魔石に同じ属性の魔術を通すこともでき、通すと、魔術の威力が倍増するという。
杖につけて使うのが、主流らしい。
ちなみにその魔石を使った道具を、魔道具という。
魔道具は普通、魔石そのものに魔力を持ったものによる物理的干渉があった時、発動するらしい。
そして大気の魔力では発動しないらしい。
だから、この世界の文明は発達してるのか。
俺は納得した。
魔石そのものは、そこら辺のお店にでも粗悪品なら売ってる。
でも正直魔道具を買った方が早い。
そして品質も良い。
俺はまた質問をする。
「魔力が被る事ってあるんですか?」
「えっと、昔初代エリシア国王と被った人がいたらしいけど……詳しいことは分かりません」
ふーん。
「ありがとうございました。次は何ですか?」
「次は、魔術についてですね」
彼女はあっけらかんと言った。
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