剣を手に
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3部分:第三章
第三章
その巨人がだ。ベイオウルフを見て言うのだった。
「御前は誰だ」
「ベイオウルフという」
彼は巨大な剣を両手に持って構えながら名乗った。
「知らないな」
「人の名なぞ知らん」
こう返してだ。巨人は今度は腕を口の中に入れた。
そして骨ごと喰らいながらだ。彼にこう告げたのだった。
「餌の名なぞな」
「餌か」
「人は俺の餌だ」
そうだとだ。ぬらぬらと光る長い舌で言うのだった。
「所詮はな」
「ではその餌にだ」
「どうだというのだ?」
「貴様は倒されるのだ」
そうなるとだ。巨人に対して返す。
「今からな」
「俺が人間に倒されるか」
「何かおかしいか?」
「ははは、笑わせてくれる」
巨人は喰らっている骸を一旦置いてだ。
そのうえでだ。立ち上がった。するとその大きさは。
天井に着かんばかりだった。大柄なベイオウルフのさらに倍はある。その巨体を誇示しながらだ。彼に対してまた言ってきたのだった。
「人が俺を倒すか」
「では死ぬのだな」
「面白い。それではな」
「貴様を喰らってやろう」
こう言ってだ。巨人はベイオウルフに襲い掛かった。こうしてだ。
彼等は激しい闘いをはじめた。巨人は彼に相応しい巨大な槍を出してきた。
その槍でべウォウルフを上から刺し殺そうとする。ところが。
ベイオウルフはまずだ。その槍をだ。
巨大な剣で左から右に一閃してだ。真っ二つにしたのだった
それを見てだ。巨人は目を見開いて言った。
「何っ、槍を!?」
「これで終わりではないぞ!」
ベイオウルフは叫んだ。そのうえでだ。
剣を再び動かした。今度は右から左にだ。
横薙ぎにした。そうしてだった。
巨人の左腕を断ち切った。それで言うのだった。
「これでどうだ」
「ぐっ、俺の・・・・・・」
「まだ闘うのか?」
腕が床に落ち鈍い音を立てる。その音を聞きながら問うのだった。
「それならやるが」
「おのれ、人間が」
「見たところ傷は深い」
斬られたのは腕だけではなかった。そこから腹にまで至り斬られていた。腕の切り口からだけでなく腹の傷口からも鮮血を出しだ。
どう見てもこれ以上は闘えない。若しそれをすれば倒れるのは巨人の方だ。それは誰が見ても明らかなことであった。それでだ。
巨人はだ。忌々しげに言うのであった。
「覚えておれ」
「傷を癒してから来るか」
「その時を待っていろ」
「傷が癒えればな」
ここでこう言う彼だった。
「そうしろ」
「この恨み忘れん」
また言う巨人だった。
「貴様は必ず喰らう」
「できればな」
こう言ってだ。巨人の逃げるままに任せた。巨人はその時腕を置いていってしまった。その斬られた腕をだ。
それを見てだ。ベイオウルフは言った。
「あいつは死ぬ」
「死にますか」
「そうだというのですか」
「あの傷は助かるものではない」
だからだというのだ。
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