美しき異形達
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第四十二話 近付く真実その十一
「そして逃げてばかりだった」
「けれど、だよな」
「劉邦は最後には勝ったよ」
「それで天下を取ったんだな」
「そう、だからね」
「逃げることも大事か」
「そうした状況ならね」
こう少女達に話すのだった。
「そして君達だけじゃないから」
「先輩もいるしか」
「そう、他にも誰かいるかも知れないから」
「まずは身体の検査を受けてその博士と会って」
「君達自身のことを知ろう」
「それと怪人のこともか」
「彼等のこともね。もうすぐ怪人の灰の検証が全て終わるから」
それが、というのだ。
「それの結果もね」
「聞けばいいんだよな」
「うん、そちらはもう少しだから」
「ずっと気になってたことがか」
「わかるよ」
ここで遂にというのだ。
「だから待っていてね」
「わかったよ、じゃあ今日はな」
「うん、これでね」
こう話してだ、そしてだった。
少女達は智和の家を後にした、そのうえで今はそれぞれの家に帰るのだった。薊と裕香は学園の寮である。
その帰宅中にだ、裕香は薊に言った。
「夏休みの寮って静かね」
「人が凄く減ってな」
「うん、皆里帰りするから」
「無茶苦茶静かだよな」
「私今お部屋に一人よ」
「あたしもだよ」
それで二人共それぞれの部屋で比較的のびのびとしているのだ、だがそうした気楽な一人暮らしと共になのだ。
「寂しいな」
「かなりね」
「それがな」
「どうもね」
「何かあれだよ」
また言う薊だった。
「いつも賑やかなのがいいんだよ」
「寮はね」
「あたしずっと孤児院にいて寮だろ」
その中で生きてきたからというのだ。
「だから余計にさ」
「寂しく感じるのね」
「そうなんだよ、寮に帰っても時間があるし」
部活の時間も終わっている、それでなのだ。
「ちょっとバイクで走るか」
「あっ、薊ちゃんも」
「裕香ちゃんも一緒にどうだい?」
「乗せてくれるの?」
「ああ、後ろにな」
バイクのそこにというのだ。
「ヘルメット貸すからさ」
「いいの?」
「いいよ、どうせ暇だしさ」
薊は笑って裕香に答えた。
「だからな」
「二人でなのね」
「ツーリングしようぜ」
「夏のツーリングね」
「軽くな、旅行は終わったけれどさ」
それでもというのだ。
「一緒にどうだい?」
「それじゃあね」
「ああ、サイドカーじゃないけれどさ」
このことは違っていた、薊はサイドカーには乗らないしそもそも持ってもいない、それは菖蒲が好きなものだ。
「一緒にな」
「それじゃあね」
こう二人で話してだ、薊と裕香は寮に帰ると二人でバイクに乗り街まで出ることにした、そうして走っているとその横にだ。
一台のワルキューレが来た、薊はバイクに乗るピンクの高級そうな服を着てヘルメットから長い髪を出している少女に問うた。
「桜ちゃんか」
「はい」
返事は即座に来た。
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