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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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英雄の帰還

数日後………

「データリロード、約五十%リカバリー完了……っと」
タァン!と小気味良い音を立てたエンターキーを押し続け、俺は目の前のパソコンを見て溜め息を付きそうになる。
俺、天城来人が現実に復帰してからの、最初の仕事は、“電子の隠者”と呼ばれる俺と言えど、楽な仕事では無かった。
その仕事とは、アンダーワールドコンバートを行ったプレイヤー達のアカウントリカバリーに付いてだった。
とは言え、今や衛星回線が使えない今、ストレアのハッキング能力と、俺のハッキング能力を駆使し、通常回線でのリカバリーをしているのだから、途方も無い。
『ま、マスタァ……私、疲れたァ……』
画面の中で、ストレアがうめく。
それもそうだろう。ここ暫く、リアルの体で此方に出てきてないのだから。
「済まん、ストレア……」
俺はストレアに言うと、首を振る。
『マスターが謝る事じゃ在りませんよ……ただ……』
「ただ?」
『……遊びに行きたいです』
ストレアの意外な要求に、俺は目を見開き、そして笑う。
『あ、マスター笑わないで下さいよ!!』
「ごめんごめん。ストレアが言うのが珍しいからさ、つい」
『ついじゃ在りませんよ!』
頬を膨らませてそっぽ向いてしまった。
「分かった分かった。これが終わったら要求呑んでやるよ」
すると、ストレアが目を輝かせる。
『本当ですか!なら、頑張りますよ!!』
途端、リカバリー%が一気に上がっていく。
『うりゃあああああああっ!!』
「……俺の出番ねぇ~」
俺がそう言うと、新羅が現れた。
「お疲れ様、来人君」
「おう……。っても、ストレアが後半ほぼやり終えそうな感じするけどな」
受け取ったコーヒーを飲むと、俺は欠伸してベッドに転がる。
「済まん、徹夜続きだから寝るわ……。くれぐれも侵入すんなよ……」
「ギクッ」
「おい、今ギクッって言ったか!?」
「冗談よ、冗談」
「……寝るわ」
俺はそう言って、睡眠に入った。














†††













翌朝、俺は一本の電話で叩き起こされた。
それは、ラース六本木分室から、アリスが失踪したと言う知らせだった。

「失踪?情報的にか?」
回線の向こうの神代さんは、あくまで冷静に言う。
「いえ……物理身体ごと、なの。社屋内の監視カメラの映像では、昨夜二十一時ごろ、自分でセキュリティロックを解除して、警備員の目を盗んで外に出たみたい』
「……自分で、か?」
俺は呆れて言う。
「アリスを少し働かせ過ぎだ。親視点から言わせれば、過剰労働だぞ」
『それは私達も危惧してはいたのよ。でも、何度疲れてない、休みたくない?って訊いても、笑顔で首を振るばかりで……』
「当たり前だろ馬鹿。彼奴は誇り高き騎士だ。弱音は他人に吐くわけねぇ」
『桐ヶ谷君を除いては、ね。……天城君、間違い無くアリスは桐ヶ谷君に連絡すると思うの。仕事の合間に申し訳ないのだけど……』
「了解、キリトの方に後で行きます。ーーーでもよ、神代さん。今のアリス、そこまで長距離動けるとは到底思えんぞ?うちのストレアの永久機関を搭載しない……いや、してない奴だろ?」
『私達も、それを心配しているの。内臓バッテリーだけでは、フル充電からでも、歩行なら三十分、走ったりすれば十分も持たないわ。もし、六本木近辺の何処かで動けなくなって……そこを、非友好的な人間に見付かったりしたら……』
「あの外見だからな。おもちゃにされるだろ」
さらっとえげつない事を言う俺。だが、仮にも彼奴は騎士。しかも、アレでもロボットだ。剣を持たずとも、俺が教えた天城流体術で……あ、どっちにしろ捕まるか。
『君ねぇ……。取り合えず、今、手の空いてるスタッフ全員で、この界隈を探し回ってるわ。ネットの書き込みも監視してるし、公共監視カメラ網にも潜り込んで録画チェックもしてる』
「おい、神代さん。知ってる?それ犯罪」
『知ってるわよ、許可得てるから。取り合えず、お願いね!』
神代さんが念押しして切ると、俺は溜め息を付く。
「……ストレア、聞こえてたか」
「うん」
久しぶりのリアルボディのストレアが、外に出る支度をする。
「遊びに行く約束だが……」
と、言い掛けた時、スマホが鳴る。
「……もしもし、天城」
『天城さん!?アリスが……!アリスが段ボールに……!』
「……ストレア、行き先はキリトの家に決定だ」
「……了解」
ストレアは頷くと、俺も支度を始めた。

約三分後。
俺とストレアはキリトの自宅にお邪魔し、そして、キリトと同時に両手で頭を抱えてうずくまった。
“宅配便で送られてきた美少女ロボット”が何故か実現すると言う現実に、どうにか認識をアジャストさせようと苦闘してみたーーーものの。
「「「……出来るか!!」」」
叫び、努力を放棄してがばっと立ち上がる。
振り向いた先では、見慣れた制服に身を包んだ美少女ロボットが、物珍しそうに廊下の柱を指でなぞっている。
整合騎士第三位、アリス・シンセシス・サーティは俺達を見ると、言う。
「この小屋は、木材で建てられているのですね。まるで、ルーリッドの森で暮らした家の様。あの小屋よりも、ずっと立派ですけど」
「あー……うん……多分、建ってから七、八十年は経つと思うよ……」
キリトが力無く答えると、アリスは驚く。
「良くもそれほどに天命が持つものですね!きっと、立派な樹を使ったのですね……」
「そうだね……て言うか……て言うか!」
キリトがどすどすと廊下を歩き、がしっとアリスの肩を掴む。おい、アスナに見られたら怒られるぞ。
すると、アリスは笑顔で言う。
「まずは、この鋼素製の体の天命を回復させて貰えないかしら?ええと……此方の言葉では、“充電”と言ったと思いますが」
訂正せねばなるまい。
“宅配便で送られてきた美少女ロボットが家庭用コンセントで充電する”現実だ。
俺達がアンダーワールドにダイブしている間に、現実世界はかくも未来へ遷移してしまったのだ。
「ああ……充電ね……どうぞ、好きなだけ……」
最早諦めムードのキリトが、リビングに案内する。俺達も当然付いていく。
マシンボディの充電用プラクは、左脚のふくらはぎと言うやや意外な場所に内臓されていた。おい、科学顧問、煩悩が溢れ出てるぞ。うちの娘に何してるんだ。殺すか?
アリスは引き出したケーブルを壁のコンセントに繋ぐと、ぴんと背筋を伸ばした姿勢でソファーに腰掛け、尚もくるくると周囲を眺め回している。
俺はストレアから渡されたエネルギーパック(どうやら、雷神皇の早期覚醒をしたため、まだ完全に電撃を操れず、普通の食事もままならないため。ただ、飲み物は例外)を飲み、キリトに促す。
「えーと……まず、どうやって自分を宅配便に仕立てるなんて離れ技を実現したのか、そこから教えてもらおうかな……」
すると、アリスは、くだらないことを聞くと言わんばかりに肩を竦め、答えた。
「簡単な事です」
曰く。
分室で、着払いの送り状と梱包テープと大サイズの強化段ボールを用意したアリスは、まず監視カメラの映像に、わざと居室から出ていく自分の姿を記録。
しかるのち、エントランスのカメラ視界外で箱を組み立て、キリトの住所を記した送り状を添付し、各関節のロックを解除しながら箱の中にきっちりうずくまる。上蓋の片側にテープを貼り、内側から引っ張る様にして蓋を畳む。更に、内部からもテープで蓋を仮止めする。
そうしておいて、宅配業者にメールで出荷を依頼する。やって来た業者は、無論ゲートで警備員のチェックを受けるが、メールは確かにビル内から発信された物だし、エントランスには荷物もある。よもやその中に、世界で最も重要なAIが潜んでいる等と知るよしも無く、業者はやや甘いテープの封をきっちり貼り直し、荷物を回収してトラックに乗せ、翌朝に埼玉県は川越市まで配達し……。
「「…………成る程ね……」」
キリトはずるずるとソファーに沈み込みながら呟き、俺はエネルギーパックを飲みながら言う。
結局、アリスは昨日は一歩もある意味では分室ビルから出ていない訳だ。足取りも追えないのも通りだ。
しかし、驚くべきはその手口だ。一ヶ月にしかならないアリスがそれを発想して実行したことに他ならない。
すると、アリスは軽く肩を上下させて言う。
「まだ騎士に任ぜられて間もない見習いの頃、一度この手でカセドラルを抜け出して街を見学したことが在りますから」
「「……そ、そうっすか」」
これで、アリスが情報テクノロジーに習熟してしまったら、一体どうなるのか。彼女は、アミュスフィア無しで即時に仮想空間にダイブ出来る、ある意味ネットワークの申し子なのだ。
ーーーと、言う思考を押し退け、俺は言う。
「しかし、アリスよ。何故こんな手を使った?神代さんなら、言えば時間を作ってくれたろ」
「そうでしょうね。あの方はいい人です。私の事をとても気にかけて下さっています。故にーーーキリトの家を訪問する機会は得られても、護衛の衛士が一個小隊付き、と言うことになったでしょうね」
「……後で上に掛け合おうそれは」
俺は言うと、ストレアと共にリビングを出て、家を出た。
「ストレア、先に家に帰っててくれ」
「分かりました」
ストレアは言うと、歩いて家に帰宅した。
俺はスマホを持つと、神代さんに電話をする。
『もしもし?』
「……俺だ。アリスを見付けた。キリトの家だ」
俺はアリスから言われた事を話すと、流石の神代さんは五秒程絶句した。
『……そう、だったの』
「大切に扱うのは分かるが、アレも人間だ。……気付いてやれ、出なきゃ、後になって後悔するぞ、俺とダークの様にな」
数日前の無人島戦闘を思い返し、俺は言う。結局、俺はダークを分かってやれなかった。だから、責めて今度は、周りの人間の心は分かってやろうと思う。……出来ることと言えば、それだけだから。
『……分かったわ』
「後でキリトからも連絡が来るかも知れん。くれぐれも、俺が電話をしたことを悟られん様にな」
俺は電話を切ると、ポケットにしまう。
そして、俺は家に帰った。 
 

 
後書き
漸くです!!次回こそ完全な最終話!!
ライト「俺達の物語ももう終わりか……」
ダーク「長かった様な……短かった様な……」
ロード「それでも、今までよく頑張ったよね、僕ら」
ゲン「ああ……」
……ごめん、コラボじゃロード達出ないからね?
三人「何でや!!」
あ、血濡れさんは出るかも。一応神様化してるし。
ヘイト「もー、ビックリさせないでよーwww」
二人「……後から出た新参者に」
死んでるからしょうがないでしょうが!
ライト「俺の能力のせいだもんな。一つに統合されちったし」
二人「解せぬ」
まぁまぁ……。と言うことで次回は最終回!予定が狂いましたが、本編最終回!それではご唱和下さい!!せーの!!
ライト・ダーク・ロード・ゲン・ヘイト『次回!狩人と黒の剣士!!俺達の冒険は終わらねぇ!!』
ライト「さぁ、狩猟時間(ハンタータイム)?レディー、ゴー!!」
キリト「次回も見てくれよな!!」 
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