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真ゲッターロボ・地球最凶の日 第一部「滅亡への夜明け!」

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第八話「三匹が行く」修正

 
前書き
ユーコンへ行く前に、ちょっと明星作戦の話をしましょう?
しかし!この世界に紅牙以外の同一人物が、この世界に住む武はすでに存在しないとは言い切れるのでしょうか?

アバンテーマ「STORM」

エンディングテーマ「BURN THE RUN」
 

 
二年前、明星作戦にて


「みんな!落ち着いて逃げるんだ!?」
BETAの拠点の一つ横浜ハイヴの内部にてBETAにより捕獲された一般人の中から一人の青年が懐からフォトガンを取り出して兵士級を貫いた。次々と兵士級を射殺していく青年は周囲の人質を避難誘導させて、無事にハイヴからの脱出に成功した。太陽の光を浴びて周囲が歓喜にあふれる。
「た、武ちゃん……?」
彼の幼馴染の少女が、青年の名を口にする。
「純夏、お前も早く逃げろ?」
「で、でも武ちゃんは?」
「今、光子力研究所へ連絡しておいた。兜博士が俺の真マジンガーを手配してくれる。後から甲児や鉄也さんも応援に駆けつけてくれる。さ、早く逃げろ!」
「武ちゃん……気を付けてね?」
彼女はそう振り返り、一般市民と共にハイヴを出て行った。あとから市民たちはマジンガ―チームらに保護されるだろう。
「よし!俺も行かねぇと!」
武は、彼らとは真逆の方向へと走っていった。

BETAの拠点の一つ、横浜ハイヴを舞台に人類の反攻作戦が激戦を繰り広げていた。
「ヴァルキリー1から各機へ、なんとしても予定地点まで戦線を押し上げろ!」
12人の女性で構成された香月博士の直属の特殊部隊の隊長、伊隅みちるは指揮をとりつつBETAとの激戦に耐え続けていた。
「隊長!支援砲撃がない現状では戦線の維持が困難です!?」
「弱音を吐くな!予定時間ヒトフタ・フタマル後から光子力研究所からの支援勢力が来る」
それだけが唯一の救いだった。今や、戦術機を後方支援に日本のスーパーロボットを主力とした戦術が新たに発足され、従来の戦術論が見直されることとなった。
「あんな連中が居なくたって私たちだけで何とかして見せるんだから!」
そんな中隊の中で勝気で負けず嫌いの少女がいた。涼宮茜である。彼女の自称彼氏の男がゲッターのパイロットのために彼との間には妙なライバル心があった。
「城二のバカが居なくたって……!」
「その意気だ、奴らに我々の有能さを見せしめてやれ!」
伊隅の声に活気が掛け声をあげ士気が上がる。しかし、目の前のBETAの軍勢は無数に湧き出てくる。そして、さらなる衝撃が報告に入った。
「本部から入電!米軍より二発のG弾の投下が決行されました!!我が中隊は現在の予定ポイントをG弾投下時までに押し上げろとのことです」
「G弾だと!?」
伊隅は、米軍の安易な判断に怒りを覚えた。
「米軍は本気なの!?」
「こんな状況で……」
各機から混乱が湧き出るが、本部からの報告により間違いはない。
「本部からの入電だ。米軍は間違いなくG弾を使用する。各機、投下時間までに予定ポイントまで押し上げろ!」
ヴァルキリーズ各機は己の命さえも顧みない決死の覚悟で迫りくるBETAの群れへ飛び込んでいく。しかし!
「遙っ!後ろだ!!」
伊隅が叫ぶがすでに遅かった。
「!?」
ヴァルキリーズ涼宮遙の機体へ要撃級の巨大な爪が襲い掛かる……が!
「させっか!」
上空から彼女の戦死を否定するかのように数発の銃声と共に要撃級が肉片となった。
「あ、あれは!?」
伊隅が上空の太陽を見上げた。太陽を背にこちらへ降下する一体の鉄の巨人、その雄々しさはまさしく凶暴で戦いを求める「皇帝」とでもいえよう。
「遙、遅くなってすまねぇな?」
光子力研究所から救援に駆けつけた一体のスーパーロボット、それが第二世代のマジンガ―シリーズの後継機「カイザースカル」であった。スカルは、マジンガ―シリーズの中でも珍しい複座式の機体であり、砲撃手と近術戦を担当する者の二名が登場している。そして先ほどの砲撃、ブレストリガーを担当するパイロットは平慎二、そして遙の名を呼んだパイロットは……
「鳴海君!?」
涙ぐむ遙は次に大剣を担ぐスカルの姿に微笑んだ。
「こちらはアモン6だ。遅れてすまねぇ……もうだ丈夫だ。この俺が、奴らを根こそぎぶち殺してやるぜ!!」
途端に凶暴な笑みを浮かべる鳴海は、大剣「牙斬刀」による斬撃戦で次々と周囲のBETA群を蹴散らしていく。
「こちらはルシファー4、これより貴君を援護する。直ちに戦闘エリアから離脱せよ」
冷静な口調で伊隅たちへ連絡する慎二に、伊隅は。
「待て!今から米軍によるG弾の投下が始まるのだぞ!?」
「G弾?それって……アレのことか?」
と、鳴海の動かすスカルが、ぶっきら棒に人差し指を頭上の空へ指した。空はどす黒い堅塁に追われている。まさか……
「G弾を撃墜したというのか!?」
「俺たちの楽しみを邪魔しやがったんだ。しょうがねぇだろ?」
自分なりの理由を説明する鳴海にヴァルキリーズたちはあきれた。
「そらそら!早いとこ撤退しな?さもないと、BETAよりもっとオッかねぇ連中が来るぜ?」
鳴海のその台詞が無線に響いた直後、
「スクリュークラッシャーパーンチ!!」
「サンダーブレークッ!!」
上空からの巨大な落雷と地平から遅い来る巨大な両椀部によって前方の大群は一瞬にして肉片になった。
「甲児君!俺は帝国軍の救援に向かう!」
「わかったよ鉄也さん!ほかの雑魚とデカいのは俺に任せてくれ!!」
「甲児!鉄也のダンナ!ハイヴに引き籠っているBETAは俺らの獲物だから勝手につまみ食いすんなよ?」
と、鳴海。
「わーったよ!やれやれ……毎度ながら血の気の多すぎる奴らだぜ……」
苦笑いする甲児に遠慮なくスカルがハイヴへ向けて突っ込もうとしたが、
「プラズマサンダーッ!!」
上空からの叫びと共にエレキテルで構成された巨大な刃がハイヴに突き刺さった。
「な、何だ!?」
スカルは上空を見上げた。そこには自分たちと同じ巨大なスーパーロボットが上空から地上へ降下し、そして凄まじい地響きと共にその機体は現れた。
「ネオゲッターロボ、ただいま到着!ってな?」
蒼い上半身を太陽に浴びるそのネオゲッターロボは、自らはなった必殺技でハイヴが見事に蒸発しているところを見て満足のように笑い出した。
「プラズマサンダーの威力はいつ見ても感服すっぜ!」
「て、テメェ!あれは俺らの獲物だぞ!?」
しかし、目の前のターゲットをどさくさに紛れてぶんどられたことに鳴海はご立腹のようだった。
「ハッ!ハリウッドじゃ最後はアメリカが決めるってのが、お約束なんだぜ?」
「そもそも、貴様らは何者だ?」
慎二が冷静に問う。
「申し遅れた、俺たちはアメリカのゲッターチーム「ネオゲッターロボ」のパイロットたちだ。そして俺がネオゲッター1のパイロット、ユウヤ・ブリッジスだ」
「ユウヤ……プリッツ?」
首を傾げる鳴海。
「ブリッジスだ!」
と、叫ぶユウヤ。
「ところで、そちらに聞きたいことがある」
慎二はアメリカと名乗るネオゲッターへ尋ねた。
「……?」
「なぜ米軍はG弾の使用を決行した?その決断は俺たちが到達ポイントまでに間に合わなければの話のは話だ」
「俺たちゲッターチームは聞かされていない。軍の連中が勝手にしでかしたことだ。海外でも俺たちスーパーロボット勢を過小評価している連中が少なくはない。ま、一様シナリオに反しているとDrサオトメが俺たちの実戦試験を兼ねて呼び出したらしい」
「あぁ……早乙女の爺さんならやりかねないからな?」
「ってなわけだ。俺たちもこの喧嘩に混ぜてもらうぜ?」
そう言い残すと、ネオゲッター1は残りのBETA勢へ突っ込んでいった。
「あ、おい!これ以上俺達の獲物をつまみ食いすんな~!」
負けじとスカルも後に続いた。
「あり?もう終わっちまったのかよ!?」
プロトマジンガーの改良機として新たにパワーアップした後継機「真マジンガー」に変形機能を搭載した飛行ユニット、ゴッドスクランダーを装備し飛来したはいいものの、すでに現場は荒廃した荒地、荒野と化していた。
「俺の出番は!?」
その後、ネオゲッター1によるプラズマサンダーの一撃で横浜ハイヴは一撃で落城、BETAの残存勢力もその他のスーパーロボット勢によって五分もたたずに殲滅され、あっという間に平和のひと時が舞い降りるのであった……
しかし、彼以上に出番が与えられなかった紅牙達日本のゲッターチームらは……全員が食中毒にかかって倒れていた。
原因は、BETAの「肉」を食べてしまったことだ。実は、現在早乙女研究所は食糧危機に瀕しており、施設内の少量は全て尽きてしまった。前回の帝都半壊の件で研究所が全責任を負わせる結果となり、政府からの支援は一切入ってこなかったという。
死の淵に立たされたゲッターチームは、背に腹は代えられぬ覚悟で明星作戦発動の前日にハイヴ周辺に巡回していた兵士級を適当にとっ捕まえると、煮て焼いて刻んで食い殺したらしい。すると、BETAの味を占めてしまい、肉付きのよさそうな闘士級や、目玉が美味そうなレーザー級、果てはカニやロブスターみたいな味がするかもしれないと、要撃級をゲッターを使って狩りだした。
しかし、未知なるエイリアンの肉を食ったら、細菌らの関係で最悪の場合死に至るのでは?と、思われた。しかし、彼らは運よく食中毒というレベルで済んだという。

                      *

数日後、アメリカ首都ワシントンにて

「はぁ!?俺が新型戦術機のテストパイロットに!?」
ワシントン支部のゲッター線研究所にてその知らせを受けたユウヤは、目を見開いて研究所の主任、神隼人へ叫んだ。この男は、かつて初代ゲッターチームの一人であり竜馬が行方を絶った後は早乙女博士によってアメリカ支部のゲッター線研究所へ着任命令が与えられた。
「そうだ。そもそも、お前は元アメリカ陸軍に所属する戦術機のパイロットだったな?過去のデータによればエースパイロットのようだが……」
「俺はもう戦術機には乗らないって決めたんだ!あんなモヤシ野郎のどこがいいんだよ!?」
「ユウヤ……すまないが、耐えろ?お前が軍を追い出されて、そこを拾ってやったんだから文句を言わずに従ってくれ」
と、サングラス越しから除く隼人の冷静な目がユウヤを見つめた。
「ッ……!」
しかし、ユウヤはご立腹の様子だ。彼は性格上、自己中な行動をとることで有名なパイロットで、訓練中にもその行為が毎日のように目立った。
そうして更衣室で同僚らに絡まれ、日系アメリカ人と差別を言ってきた黒人のパイロットの顔面を人間ピカソのごとくボコると、後に周囲と大乱闘を繰り広げた。
さらに、訓練中にまたもや命令違反を起こしたことで滑走路で相方のパイロットに殴られてた彼は、頭に血が上ってその殴ってきたパイロットを半殺しにして二度と戦術機に乗れないような体にしてしまった。軍法会議にかけられ独房行きになるところを疾風に拾われたというのだ。
「ネオゲッターはどうすんだよ!?」
「それも並行して行う。つまり、お前さんには二役を演じてもらう……」
「ふざけんなよ!?俺が一番要領が悪すぎんのはアンタだって知ってるだろ!?」
「そういう不器用の悪さは他のパイロット二人もそうだ。お前たちネオゲッタのチームは三人揃ってこそ一人前だからな……」
「だったらどうして俺に二役を……!」
「戦術機に乗るのが特技だろ?それなら大丈夫かと思ってな……」
「アンタって人は……」
「よって明日にはお前をアラスカのユーコン基地へ向かわせる後の二人はその後日に向かわせよう?」
「俺だけえらい急だな?」
「アメリカ本国の防衛はテキサスマックのキング兄妹に任せる」
「じゃ、とりあえず俺たちはアラスカへ飛べって?」
「簡単に言うならそうだ。では、そうと決まれば今からでも荷造りしてこい?」
「へいへい……」
ユウヤはやれやれとため息をつきながら愚痴を言い続けて隼人の司令室を後にした。


「……」
輸送機機内の座席に座る唯衣は、二年前に起こった明星作戦を回想していた。
ただ見ているだけしかできない自分に無力さを感じさせられていた。斯衛兵たちだけではない。苦汁を味わったのは戦術機を扱う軍人側である。民間で構成されたスーパーロボット勢に軍が毎度のように助けられているのだ。今回も、彼らが駆けつけてくれなければ被害は更に拡大していたころだ。
だが、戦う人間たちが戦わない人間たちにこうも救われていると自分らのプライドが徐々に怪我されていくのである。軍らは、このスーパーロボット勢にわずかな希望と、それ以上の嫉妬を抱いていた。彼女、唯衣もそのうちの一人であった……
(XFJ計画が必ず真ゲッター計画よりも有能だということを国連に思い知らせる!XFJ計画こそが……父様のXFJ計画こそが、この世界を救うのだ)
輸送機はそのまま無事にアラスカのユーコン基地へと到着した。さすが世界最大の軍事基地だ。各国から集った英知と戦士で構成された人類反撃の砦だ。
「しかし……困ったものだ?どこへ行けばいいのか……」
到着して早々、どこへ向かえばよいのやら、迷宮のごとく広大な施設の一角で彼女はさ迷っていた。
簡単に説明しよう。この基地は東西を流れる二種類の川に沿った米国領土とソ連租借地の境界線にまたがる地域に建造され、二つの川の合流地点に建設された司令部を中心に幾多もの居住区、商業区、整備・研究施設、飛行場、宇宙住還機基地、演習場、そして近年阿多らに建造されたゲッター線研究施設などの設備があり、その広さ、面積は東西240キロメートルにも及ぶ。
また、基地全体が国連区であるため、基地関係者の大半がフリーパスで米ソ国境線を自由に通行できるようになっている。
「しかし、これだけ広いとどこへ行けばいいのやら……」
「どうしたの?」
「え?」
ふと、彼女に呼びかける幼い少女の声に彼女は振り向いた。そこには、銀髪を風に揺らし、クマのぬいぐるみを抱えた少女がポツリと立ってこちらを見つめていた。
「え、あぁ……ここはとても広いから、どこへ行けばいいのかなぁ……」
子供に会わせて口調を変えるが、そんな彼女に構わず少女はスッと細く白い指をまっすぐ向けた。
「お姉ちゃんの行きたい場所はあっちじゃない?」
「……?」
「あ、クリスカが呼んでる!」
と、少女は唯衣を追い越して向こうで立っているもう一人の女性の元へ駆けていった。
「……」
唯衣は、そんな少女の不思議な雰囲気が印象に残した。


……時を同じくして、もう一機の輸送機がユーコンに向けて飛行を続けていた。アメリカ一凶暴な男を乗せて。しかし、彼は冷や汗を流すと共に苦笑いを続けていた。
「いやぁ~またお前と一緒にやれるなんて思ってもみなかったぜ?俺が着たからには大船に乗ったつもりでいろよ?ユウヤ」
「……」
しかし、ユウヤは黙ったままうなずくだけだった。それでも、この金髪のわけ髪男はお構いなくお気楽に話しかけてくる。だが、それがユウヤには気まずかった。
(……コイツ、誰だっけ?)
マイク?いや、ジョン?いやいや……ジェームズ、だったかな?思い出せそうで思い出せない。軍にいたころ、記憶の片隅にいた人物だったはず!
「でさぁ~?……って、聞いてるのか?ユウヤ!」
「え、ああぁ……すまねぇ、聞いてるよ?」
「ところでぇ?お前さん、軍をやめてからは何やってたんだ?まぁ……やるっていったら傭兵ぐらいだもんな?」
「……?」
この男は、俺がゲッターチームに入ったことを知らない?なら、やっぱりこいつはただ単に人違いをしているのだろうか?いやいや……だったら、俺の名前なんて知らないはずだ!こいつはいったい誰だ!?何者なんだ!?
益々、隣の男に疑問を持ち始めるユウヤはとりあえず名前を思い出すことに専念した。
(思い出せ!思い出すんだユウヤ!!この男は確かに嘗ての知人に相違ない。しかし、俺は軍でのつらい過去を忘れるために関係者の人間のことは全て忘れ去った。このうえ何が望みだというんだ!?)
「でさぁ~?」
と、一方的に話している男だが、そんな彼の話など一切耳に入れず、ユウヤは思い出そうともがきだす。
(思い出せ……確か、戦術機の整備ドッグにいた……)
「それでさぁ~?」
(名前はマードック……いや、マーベリック?って違う!ピート?」
「でも、それでさぁ~?」
「あぁ!」
「ゆ、ユウヤ!?」
突如大声を上げたユウヤに驚く男、しかしユウヤはようやく思い出したと胸を張りながら堂々と名前を尋ねた。
「思い出したぜ。お前、確か俺の戦術機をよく整備してくれた整備長のジョージだろ?」
「は、はあぁ?」
「いいや、そうだ。お前はジョージだ……け?」
しかし、また記憶がもうろうとしてしまい、やはりジョージではないと気づく。
「ユウヤ……お前、ひょっとして俺のこと忘れちまったっていうんじゃ……?」
「そ、そんなことはねぇ!軽いジョークだ?ちゃーんとお前のことは知って?」
「そうか!ならいいんだけど……」
どこか怪しいという目つきで宥める男にユウヤは視線を逸らした。
「と、ところで……その隣に置いてあるのは何だ?」
男は、ユウヤが片手に握りしめてる一本の剣を目にした。赤い鞘の日本刀である。
「ああ、こいつか?コイツは……」
とりあえず話題が変えれそうだと、ユウヤは自分の私物について説明しようとした……
そのとき、突如機内に警報が鳴り響いた。何事とユウヤは、操縦室へ飛び込む。
「何が起こったんだ!?」
訪ねるユウヤに操縦士二人は必死に操縦桿を握りしめていた。
「くそっ!こっちに戦術機が突っ込んでくるんだよ!?」
戦術機、それも二つの機影が猛スピードで飛び交い、そして前方の輸送機へ衝突しそうになっているのだ。

ユーコン基地に備わる演習施設上空にて、あるアクシデントが起こった。
「くそっ野郎は本気かよ!?」
まだ、幼い声がF15アクリブ・イーグルのコックピット内で張り上げる。演習中、ソ連の戦術機と思われしき機影によるペイント射撃を浴びせられている。しかし、逃げ回る方は、それを実弾を受け止めて必死に振り切ろうとする。
「え、演習じゃねぇのか!?」
「さぁ……逃げろ、どこまででも追い詰めて殺してやる!」
イーグルの後方よりロックオンで狙いを定めるソ連軍戦術機SU37チェルミナートルの複座に身を収める二人の少女らしき声は快楽のような口調を発し、F15の追撃を楽しんでいる。
この二機の空域を間近で飛行するのは一機の輸送機、それらユウヤ達であった。
操縦室では何度も無線で連絡を続けているが、やはり応答はない。このまま戦術機との衝突を余儀なくされてしまうのか?いいや、ユウヤは往生際の耐えない男だ。無線の応答がこないということでキレた彼はふと座席に戻ってそこに置いていた刀を手にした。
「お、おい!どうする気だよ!?」
「ちょっと連中をシメてくる!」
「も、もしかして……お前、気は確かか!?」
「非常識な奴じゃねぇとゲッターチームは勤まらねぇんでな!?」
「ゲッター……?」
男が首を傾げると、ユウヤは操縦室へ叫ぶ。
「下のハッチを開けろ!」
その声に、操縦室のパイロット両名は、ハッチから信号を送ってくれるのかと思い、あっさりと了解してしまった。これからユウヤがとる予想外の行動を目にするまでは……
「さぁって……!」
後ろの貨物室へ向かい、後部ハッチがゆっくり開き、そこから吹き上げる強風に髪が荒く揺れる。ユウヤは、片手に握る刀を前手にゆっくりと引き抜いた。
「さぁって……久しぶりの合金斬りだ!」
腕前は鈍っていないか不安であるが、そん不安よりも今から試す緊張感と娯楽感に見舞われて、そんなもの関係なかった。
「よっと!」
ユウヤは後部ハッチからこちらへ突っ込んでくるイーグルへ飛び移ったのだ。
「うわぁ!?」
突然人が飛び乗ってきたことで高度を落とし、輸送機との間をギリギリ避けた。
「な、何だコイツは!?」
イーグルのモニター画面には機体の頭部に張り付いているユウヤが映っていた。
「とっとと失せねぇと叩っ斬るぞ!?」
叫ぶユウヤの声にやや非常識に思われるも、パイロットが言い返す。
「う、うるせぇ!こっちは逃げ回るのに手一杯なんだよ!?」
「じゃあ、ギリギリだけでも奴に近づけ!」
「だーかーらー!逃げてるって言ってんじゃんか!?」
「つべこべ言わずとっとと近づけつってんだよ!!さもねぇとコックピットをぶっ刺すぞ!?」
モニターから除くユウヤのにらみ顔に押されたパイロットは、止むをえすダメもとでUターンしてチェルミナートルヘ突っ込んできた。
「何の真似だ……?」
気でも狂ったか?今まで逃げ回っていたイーグルが腹をくくってこちらへ突っ込んできた。それならそれだと、チェルミナートルは発砲して迎え撃ってくる。
「俺がいいといったら上昇して奴を飛び越えろ!?」
「わ、わかった……!って、お前はどうすんだよ!?」
「いいから言うとおりにしろ!」
「くぅ!どうなっても知らないからな!?」
イーグルはギリギリまで距離を縮めて突撃し、ユウヤの「今だ!」という合図の叫びにイーグルは一気に上昇してチェルミナートルの頭上を飛び越えた。
「チェーストー!!」
刹那、ユウヤはイーグルから真下のチェルミナートルの頭部へと乗り移った。
「さぁて!ソ連の戦術機はどういう切れ味がすんだ?」
飛び移った途端に残忍な笑みを浮かべるユウヤは、あいさつとしてチェルミナートルの顔面に顔を張り付けた。
「な、何だ……!?」
複座のパイロット二人は突然画面に張り付けて中指を立たせる青年に目を丸くさせた。
途端、モニターは砂嵐となった。ユウヤが剣先で頭部の目を抉り回しているのだ。
「おらぁ!」
そして、チェルミナートルの頭部を切り裂いた!
頭部を失って操縦不能に陥り、墜落するチェルミナートルから飛び降りるユウヤは爽快な気分だった。
「へっ!ざまぁ見やがれ!!」
しかし!
「……て、この後どうすりゃあいいんだぁ!?」
撃墜したはいいが、自分は高度数千メートルの上空をダイブしており、無論パラシュートなど所持していなかった。そのままユウヤは真っ逆さまに落下して行った。
一方、イーグルは燃料切れもあって滑走路へ横たわる形で不時着した。
「しかし、ひでぇやられ様だな?」
コックピット付近へ這い上がるヴィンセントはそのペイントだらけのF15を見つめていた。
ヴィンセントは、ハッチを開けて中から少女のように細いパイロットの手を引っ張り出した。いや、まだ未成年、それも十代後半に見える少女がパイロットのようだ。
「大丈夫か?」
「あ、ああ……って!それよりも、アイツは!?」
ハッチから飛び降りてイーグルの頭部を確認するも、ユウヤの姿はなかった。
「おい!イーグルの頭にしがみついていた変な野郎はどこ行った!?」
「え?別に人っぽい影は見てないけど……あ!そういえばユウヤはどうした!?」
輸送機から出てこず、もしやハッチを開いたとたんに暴風に巻き込まれて落ちてしまったのでは……
と、そのとき。
……うあぁ~!!
上空から次第に大きくなる叫び声に、二人は頭上を見上げた。
「ゆ、ユウヤ!?」
男は目を見開いた。そして、それと同時にユウヤは大股開いて地面に着地したのである。
足元から、とてつもなくジーンッ!とき来たユウヤは蟹股姿勢で男へ顔を向ける。
「よ、ようし!いっちょシメてやったぜ?」
「ゆ、ゆ、ゆ、ユウヤ……?」
手を振るわせて男は、ユウヤを見る。もちろんパイロットの少女も顔をあんぐり開けていた。
「じゃあ、早いとこ行くぜ?ジョージ!」
「お、おう……て、ジョージって俺のこと?」
と、蟹股で歩きながらユウヤは男こと、ヴィンセント・ローウェルと共に基地へと向かった。
「……」
未だ信じられない状況を目にパイロットの少女は、あんぐりを口を開け続けていた。

そのころ、墜落したチェルミナートルのコックピット内ではすすり泣く少女の声が聞こえた。その少女は、基地内で唯衣と会ったあの銀髪の少女と、彼女を迎えにきた同じ銀髪をした年上の女性だった。
「どうしよう……この子、落ちたっちゃよ……私たちも死んじゃうの?クリスカ……」
「大丈夫だよ?きっと治るから……それに、何があってもイーニャは私が守るよ?」
(しかし……機体のモニターにへばりついていたものは、本当に人間だというのか?)
クリスカは、今も信じられない非常識な光景に目を疑い続けた。



同時刻、ユーコン基地正門前にボロキレのマントを被った男が倒れており、門番らに保護されて後に尋問にかけられていた。
「貴様!何の目的でこの基地に来た!?」
「腹減った……」
しかし、男の返答は「腹減った」か、「飯食わせろ」の、二言しか返ってこない。
「貴様、見るからに東洋人のツラだな?どこから来た!?」
「腹減った……」
先ほどからそうとしか言わない男にさすがの兵士二人は苛立ちを隠せなかった。
「ごまかすな!そもそも、民間人がユーコンまでどうやって行きつけるっていうんだ!?」
ドン!と、机を叩いてどやすも、男の態度は変わらない。
「飯食わせろ……」
「も、もう一度聞く!貴様は正門になぜ倒れていた!?」
と、これが最後の質問だといわんばかりに兵士の一人が男の胸ぐらを掴んだ。しかし、
「飯食わせろ……」
「上等じゃねぇか!だったら俺らの拳を味わらせてやるよ!!」
そういうと、兵士の一人か男に向かって拳を振るうが、その拳を真っ向から噛みついてくる男がいた。
「固くてゴッツイ、不味いな?テメェの拳は……」
思い切り噛みしめ、拳から血が噴出して兵士からは何とも言えない声が上がる。
「て、テメェ!」
もう一人の兵士が棍棒を片手に男へ殴りつけるが、逆に棍棒をひったくられてその兵士の口中へ棍棒がねじ込まれた。
「その棍棒は何味だ?うめぇ棒みたいなサックリ感があるのか?」
「う、う``う``う``~!!」
気持ち悪がる兵士の鳩尾へ蹴りを入れて二人の兵士を戦闘不能にした男。その名は我々が知る黒銀紅牙であった。
何故、彼がこのような状況になってしまったのかというと……
ゲッター線研究所では帝都半壊によって損害賠償を追うために研究所の資金が底をつきかけてしまい、アラスカへ飛ぶ交通費などゲッターチームへ払うことはできず、早乙女博士から「責任取って自力で行け!」と怒らしてしまったので、仕方なくアラスカへ向かう各ゲッターチーム三名はそれぞれの手段でアラスカのユーコンへ向かうハメになったというのだ……
「ああ……」
だるそうな唸り声をして紅牙は横たわる二人の兵士を無理やり起こした。
「腹減った、飯食わせろ……」
「「……?」」
血だるまの二人は首を傾げた。
「腹減った、飯食わせろ……」
「「……」」
その後、紅牙は二人から有り金を巻き上げて近くのレストランでドカ食いしたのは言うまでもなかった。



同時刻、ユーコン基地商業区域にて

とある街角にこの場所には似合わない人物が立っていた。小鉢を片手に鈴を鳴らす大柄の托鉢僧がそれだ。
「……」
黙りこくって坊主は、行きかう人々から怪訝な視線を受けるものの三度笠で半顔除いては小鉢の中身を除く。しかし、ただ行きかう人々に写真を撮られるか怪しまれるかのどちらかであるかで、小鉢へ気にも留めなかった。
「はぁ~……やっぱ外国じゃ牧師か神父ってのが流行ってんのかな?」
托鉢僧を知る国といえば、せいぜいアジアだけであろう?当初、日本から出る時に気前のいい帝国軍の士官が輸送機でアラスカへ乗せて到着後、ヒッチハイクを繰り返しながらどうにかユーコンへ行き着くことができたが、到着して早々空腹に悩まされるとは思わなかった……が、
「!?」
ふと、自分の小鉢に手を添える人物が……柔らか味のある女性の細い手だ。手は小鉢へ一枚の札を入れ、目を見開く坊主は、その手の主を見た。
「ぼ、菩薩様……!?」
それほど美しくこちらへ微笑んでいた。
「あの……つかぬことをお尋ねしますが、御坊様は日本から参られたので?」
「え、ええ!そうだ……ああ!?」
三度笠を捨てて坊主は慌てた顔で驚く、最初は美人過ぎてわかりずらかったが、よくみると自分の顔見知りの人物だった。
「ゆ、唯衣ちゃんなのか!」
「ま……まさか、ゲッターチームの紫電赤城なのか!?」
「おう!そうよ?いやぁ~久しぶりだな!?」
「……して、居様がここへ何の目的で?」
途端に、不愛想な表情になって問い詰めるかのように赤城へ尋ねた。
「あ、ああ……新型のゲッターロボの試験訓練を行うって早乙女の爺さんが言ってたんだが、先の帝都防衛戦で紅牙がゲッタービームで帝都を半壊しちまっただろ?それが原因で帝都半分を弁償させられて資金が底をつきかけちまい、アラスカへ行く金なんざー無いってことよ?」
「惨めだな……」
「うん……それを言われると泣きたくなる」
「貴様がいるというのなら、ほかにも二名がこの基地を訪れているというのだな?」
「ああ、だがアイツらがどうやって基地に行くのかは知らないぞ?紅牙は喧嘩事で済ませるからいいにせよ、疾風だったら……」
あまりにも先のことを予想するのが怖すぎて、基地の行く末が不安になる。
「そういえば、貴様は基地へ入るためのパスを渡されてはいないか?」
「ああ、爺さんが一様俺たちにくれたのさ?今日まで肌身離さず持っていてよかったぜ!」
一様乗り物でここまで来た赤城だからパス券を落とすことはしなかったはずだ。しかし、残りの二人が気になる……
「パスさえ紛失しなければ、いいのだが……」
しかし、そうつぶやく彼女の周辺を数人のMP部隊が横切った。
「侵入者だが!怪しい奴が基地に潜入している。見つけ次第直ちに拘束しろ!!」
「侵入者は、ボロキレのマントを来た男だ。尋問の兵士を倒した後に逃げ出して現在はレストランで目撃されている。そう近くへは行っていないはずだ!」
MPが過ぎ去ったあと、唯衣は侵入者の正体が一発で分かった。
「あのサルめ……!」



さらに時を同じくし、ユーコンへ向かう物資輸送船にて。

「ひ、ひいぃ……」
操縦士が首筋に押し付けられた鋭いナイフに怯えていた。ナイフを持つ男は肩まで髪を伸ばした凶暴な目つきの男。言うまでもないが、神威疾風である。
「無線で変なこと言うんじゃねぇぞ、その首が操縦席から転がり落ちるからな?」
「な、何が目的だ……!?」
「俺をユーコンまで運んでくれればそれでいい。俺がこの輸送機をジャックした事は全て内密に済ませろ?以下のことを守れるなら、俺は何もしない……」
「わ、わかった……」
震えた手で操縦士は無線を握り基地へ報告する。
「こ、こちら物資輸送機……これより着陸許可を求む」
『了解、着陸を許可する』
無線は基地に不信を与えることなく終わり、安心した疾風はナイフを操縦士から引っ込めた。すると、彼は背を向けて入口のハッチへ向かった。
「何をするきだ!?」
操縦士が問う。すると、疾風は炎でこう答える。
「ユーコンについたからには、ここには用はない。ありがとよ、そんじゃあな……?」
ハッチをこじ開け、疾風はパラシュートを背負って輸送機から飛び降りた。
上空に一つの落下傘が降下していた。訓練か何かだろうと地上の人々は目もくれないが、パラシュートで降下するそれは、ゲッターを操る悪魔の一人だということを、基地の人間らは知る由もない。

また、ユーコンへ訪れた三匹はこの地に壮大な破壊と殺戮をもたらすことも人々は知らなかった。
 
 

 
後書き
ユーコンへ現れたゲッターチームと名乗る謎の三人。そして、忌まわしき過去の産物と新たな蒼き希望とを駆る戦士に、どのような心境を与えるのか?

次回
「錚々たるゲッター」
 
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