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美しき異形達

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第四十二話 近付く真実その八

「近くに凄い人がいたよ」
「凄い人?」
「それは誰ですか?」
「八条大学の名物教授と言えばわかるかな」
 問う少女達に返した、この言葉を。
「これで」
「ひょっとしてあの人ですか?」
 最初に言ったのは裕香だった。
「悪魔博士っていう渾名の」
「聞いてるね、噂は」
「何でも百五十歳っていう」
「あのあらゆる分野の博士号を持ってるっていう」
 菊も言う。
「あの人よね」
「そう、あの人だよ」
 まさにとだ、智和は彼女達に答えた。
「あの人に聞けば若しかして」
「あの人のことは私も聞いていますが」
 桜が目を丸くさせて智和に言った。
「魔術やそうしたことも」
「うん、噂ではね」
「ご存知なのですか」
「とにかく正体不明の人で妖怪じゃないかっていう人もいるよ」
「百五十歳にもなると」
「そうした噂もね」
 あるというのだ。
「仙人じゃないかという話もあるよ」
「本当にそんな人がいるなんて最初は信じられなかったです」
 向日葵も言う。
「お会いしていないですけれど、まだ」
「そうだね、けれどね」
「その人にお会いすれば」
「若しかしたら」
「うん、身近にいたよ」
 彼等が通うその八条学園にだ。
「これも天の配剤かな」
「何かあれだよな」
 薊は考える顔で智和に言った。
「人間って偶然でな」
「人と会うね」
「それも物凄く大事な人とな」
「運命だね」
 それに依るものだとだ、智和は薊の今の言葉に答えた。
「それはまさに」
「運命か」
「そう、運命は人間の力じゃなくてな」
「神様の力だよな」
「そうだよ、この世の中は理屈だけじゃないんだ」
 それだけで語れる、説明出来るものではない。理屈と屁理屈は違うものだがその理屈でも語りきれるものではないのだ。
「何か。人ならざる」
「そうした力もあってか」
「動いているものなんだ」
「そしてそのうちの一つがか」
「運命だよ」
 まさにそれだというのだ。
「ここにいる僕達が会ったことも」
「そして今度その博士に会うこともか」
「全部ね」 
 その出会い全てがというのだ。
「運命なんだよ」
「運命か」
「運命は人にはわからないよ」
 何処にあるのかどういったものかわからない、形はなく音もない。それで人が感じられる筈がないものなのだ。
「そして変えることもね」
「出来るんだな」
「そうだよ」
 まさにというのだ。 
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