転生赤龍帝のマフィアな生活
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番外編:パラレルワールドに行きます ~その一~
前書き
原作の時期なんですが、レイヴェルがいる十巻あたりです。
この時期ってもっとシリアスだろというツッコミは無しでお願いします。
マゾヴェルの為に無理やり時期を合わせただけなので整合性が取れてないところもあるでしょうが許してください。これも全部変態のせいなんです。
それではどうぞ。
夏も終わりもの悲しい秋へと変わった季節にグレモリー眷属は“顧問”であるアザゼルから新しい発明品が出来たから実験に付き合えという理由で嫌々ながらもオカルト研究部に集まっていた。そして、そこにはいつも違和感なく、居座る紫藤イリナ。そして、つい最近、駒王学園へと転入してきたレイヴェル・フェニックスがいた。
「アザゼル、今度はどんな変な発明をしたの?」
「おいおい、変なのなんて言うんじゃねえよ。今回のはお前らも楽しめるようなものだからよ」
「そう言われると余計不安になるのだけど……で、なんなのかしら?」
今までの発明を思い出して溜息を吐きながらリアスがアザゼルに聞く。そんなリアスの様子など知ったことじゃないとばかりにアザゼルは笑いながら何やらメカメカしい物体を全員の前にドンと置く。その物体は一体何なのかと全員がアザゼルを見つめるとすぐに自慢げに解説をし始める。
「平行世界の自分を呼び出す、装置だ。名づけてパラレル君二号だ!」
「平行世界なんて本当にあるのかよ?」
「僕もにわかには信じられないね」
平行世界という言葉にイッセーと祐斗が信じられないとばかりに怪しげな視線をアザゼルに向ける。しかし、アザゼルから異世界の神である乳神の存在を忘れたのかと言われて、そう言えばと思い出す。異世界があるのなら平行世界があってもおかしくはない。
「それに理論的にも証明できてるんだが……面倒くさいから飛ばすぜ」
「それにして、よく、そんな機械を作れましたわね」
「まあ、これは面白い程、偶然が重なって出来たもんだからな。今まで長いこと研究してきたがあれだけ偶然が重なったのは初めてだぜ。まあ、ともかく実際にやって見せた方が早いだろ」
朱乃の言葉にそう答えて、アザゼルはイッセーの方を見る。そして他の者達もさも当然のようにイッセーの方を見る。そのことにイッセーはゆっくりと辺りを見渡した後に自分を指差す。その事に全員が頷く。
「なんで、俺なんだよ!?」
「こういうのはイッセー君にしか任せられないもの」
「……イッセー先輩しかいません」
「ファイトですぅぅうううっ!」
「そんな無駄な信頼はいらねえよ!」
イリナ、小猫、ギャスパーの激励に激しいツッコミを入れながらも結局は自分がやるしかないのかと折れるイッセー。そして、無茶苦茶いい笑顔で手招きをするアザゼルの元に行き、機械と正面から向き合う。本当に大丈夫なのかと問いかけるが、アザゼルは心配するなと言う。だが、まだ不安が残るのか、ONと書かれたスイッチを押せずに固まる。そんなところにアザゼルが魔法の言葉を語り掛ける。
「平行世界のお前は美人でおっぱいがデカいかもしれねえぞ」
「俺は決めたぞ! ドライグゥゥウウウッ!」
『平行世界の俺と少しでいいから相棒を交換出来ないものか……』
おっぱいというワードに背中を押されてイッセーは勢いよくスイッチを押す。そんな姿にドライグことおっぱいドラゴンは遠い眼をして少しの間でいいからまともな生活が送りたいと切に願う。だが、彼の予想を大きく裏切り、平行世界の自分は酷い生活を送っていることを彼はまだ知らない。そしてイッセーがスイッチを押した瞬間、機械から凄まじい光が放たれる。
「お、おいこれ大丈夫なのかよ!?」
「おーい、イッセー以外の奴らは一応伏せとけ」
「俺は伏せたらダメなのか!」
そんな漫才のようなやり取りをしている間に機械から光は失われていき、もう大丈夫かと思い、イッセーが近づいた瞬間―――爆発した。強烈な閃光が部室いっぱいに広がる。イッセーは壁際まで吹き飛ばされ嫌な音を立てて壁にぶつかってしまうが大事には至らなかったようで打ってしまった頭を擦りながらアザゼルに文句を言う。
「いてて、全然大丈夫じゃ―――」
「「あうぅぅ……びっくりしました」」
そこまで言って、何故か、重なって聞こえたアーシアの声にまさかと思い、煙のまだ残る中、声の聞こえた方に目を凝らして見てみる。すると、そこには少し涙目でキョロキョロと辺りを見渡す二人のアーシアがいた。
「「え?」」
二人は同時に顔を見合わせて目を大きく見開き、ポカンと口を開く。そして二人いたのはアーシアだけではなかった。ゼノヴィアも二人いてお互いに自分の姿を見てギョッとしていた。そしてレイヴェルも二人いたが―――
「突然、わけの分からない状態に陥る不安感……これも新たな快感ですわ!」
「こ、これは私なのですか?」
恐らくは平行世界から来た方の“レイヴェル”は頬を赤らめて何やらこの状況に快感を見出している。それを見てこちらのレイヴェルは顔を引きつらせる。そのことに片方のレイヴェルはどうやら若干、自分達の知るレイヴェルとは違うようだとここに居る者達は確信する。さらに、イリナも二人いたのだが。
「何、私と同じ顔してるのよ。咬み殺すわよ?」
「怖い! 怖いよ! もう一人の私、怖すぎる!」
明らかに平行世界の“イリナ”と思われる方が視線だけで人を殺せるのではないかと思うほどの目でこちらのイリナを睨みつけていた。その事にこちらのイリナは全身を震わせながら涙目になる。そして何故か、平行世界のゼノヴィアもそれを見てまるで雨の中捨てられた子犬のように震えていた。
「ううん……ここどこ?」
「オカルト研究部…?」
「私達、どうしてしまったんでしょうか?」
そして、誰とも被らない銀髪のロリ巨乳の美少女。その姿を見た瞬間イッセーからはなぜスイッチを押してしまったのだという後悔は消える。さらに妹系の美少女といかにも尽くす系の黒髪美少女が際どい恰好で倒れているために眼福とばかりにいやらしい目で見つめるが、突如として自分の額に冷たい感触を感じて目を上げる。
そこには赤い銃を自分の眉間に突きつけた状態で見下ろして来る、背が高く自分に顔立ちが似た人物がいた。顔こそ似ているものの、その目つきはどうやったらそこまで悪くなれるのかと思うほど悪く、目の色は赤かった。
「人の家族にいやらしい目を向けてんじゃねえよ、カスが!」
凄まじい威圧感と共にイッセーは理解する。これが平行世界の自分なのだと。
この世界のリアス・グレモリーとその眷属共、そしてまともなアザゼルから話を聞いて状況を理解する。つまりだ、平行世界の自分を呼び出す装置で俺を呼び出そうとしたが、機械の故障により俺の周りに居た奴らも巻き込んじまった。簡単に言うとそういう事だな。まあ、なんにせよ原因は―――
「取りあえず、謝っとく、悪かった」
「おい、遺言はそれだけか? 糞ガラス」
額に青筋を立てながら俺はこっちのアザゼルに『赤龍帝の二丁拳銃』を突きつける。そんな様子にこっちのグレモリー共が驚いているが知ったことじゃない。どっちの世界でも俺をムカつかせることばかりしやがって、俺の胃にどれだけダメージを与えてんのか、分かってんのか?
俺は溜息を吐きながら銃を下ろしてもう一度、この世界の奴らを見渡す。取りあえず、知らない奴はこの世界の俺と銀髪の女コウモリぐらいで後は特にはいねえな。……こっちの奴らの方が、中身が大分まともな気がするが気にしたら負けだな。
「確認だが、今は何年の何月何日だ?」
「20XX年○月×日だ」
「て、ことはこの世界の時間軸は俺達のものより進んでるってことか……おい、てめら平行世界と言っても余計なことは話すんじゃねえぞ。未来の事を知るなんざ、つまらねえからな」
「つまらないって……まあ、知ったら不味いこともあるだろうから余り不用意なことは言わないように気をつけるわ」
アザゼルの返事からこっちの世界の方が、俺達が来た時間よりも未来だという事が分かったのでこの世界のリアス・グレモリーに口封じをする。俺の言い方に気に入らないところがありそうだったが頷いて同意するリアス・グレモリー。そして、アザゼルが俺の方をしげしげと眺めて、さらにこの世界の俺を見る。
「に、しても、この世界のイッセーとはまるっきり違うな。お前、人間でそのオーラとか何の冗談だよ」
「カスと一緒にするな。こっちこそ、こんな雑魚が同じ俺だとは信じられねえよ」
「ざ、雑魚ってなんだよ!」
「あ?」
俺の雑魚という言葉が気に入らなかったのか噛みついてくる、この世界の俺を睨みつけてやると一瞬、怖気づきそうになるが怯まずに睨み返して来る。ふん、根性はあるみたいじゃねえか。
『相棒、悔しいかもしれんが平行世界の相棒は間違いなく生身の状態での力は相棒より上だ』
「あれを使っても、勝てないのか?」
『実際に使わねば分からないが……まあ、潜在能力は天と地の差だ。だが、それだけのことで勝負が決まるわけではないことは相棒が一番知っているだろう?』
「ああ、そうだな。ドライグ」
あっちのカストカゲ……面倒だから赤トカゲでいいか。とにかく、赤トカゲとそんな会話をするもう一人の俺。あれとわざわざ伏せて言っている様子からしてある程度未来に関わることなんだろうな。まあ、特に興味もねえがな。
「それにしても、もう一人の自分がいるというのは不思議な気分だな」
「確かにね、顔は同じなのに中身は全然違うけど」
この世界のゼノヴィアとイリナがそんな話をしながら、何とも言えない顔でこっちの“イリナ”と“ゼノヴィア”の様子を眺める。教会組という理由か、“イリナ”の隣に座らされた“ゼノヴィア”はブルブルと震えながら涙目で座っていた。この前、またサンドバックになったらしいからまだその恐怖が抜けねえんだろう……哀れだな。
「なぜだ! なぜこの世界の私は“イリナ”にサンドバックにされる恐怖が分からないんだ! 同じ私なのに!」
「………すまない。何故だか分からないがとにかくすまない」
「悪魔になってやっと“イリナ”から逃れられると思ったのにこんなのあんまりだ!」
なぜ、同じ自分なのに“イリナ”にサンドバックにされないのかと泣きながら叫ぶ“ゼノヴィア”にこの世界のゼノヴィアが本当に申し訳なさそうに謝り続ける。その様子にこの世界のオカルト研究部の奴らがかなり引きながら元凶である“イリナ”を見つめるが。
「……なに?」
「「「「なんでもありません!」」」」
凄まじい殺気をぶつけられてすぐさま全員が頭を下げて命乞いをし始める。あれは仕方ねえ、普段からあれを受けている俺ですら未だに恐怖心が沸き起こるくらいだからな。そして、とうの“イリナ”はそんな様子に詰まらなさそうに息を吐き立ち上がる。
「ダーリン、つまらないからちょっと運動してくるね」
そう言って、“イリナ”はナチュラルに“ゼノヴィア”の襟をつかんで引きずりながら外に向かう。そんな様子にこの場にいる全員が憐みの視線を送るが誰一人として“ゼノヴィア”と目を合わせようとする者はいない。そして、“イリナ”はドアの前でふと足を止めてこの世界のゼノヴィアの方を見つめる。
「同じ顔だし、こっちも連れてくわ」
「な!? 私は関係ないぞ!」
「イリナ」
「なに、ダーリン?」
「やりすぎるなよ」
「ダーリンが言うなら……仕方ないか」
この世界のゼノヴィアも一緒に連れて行こうとする“イリナ”に必死の抵抗を試みるゼノヴィアだったが“イリナ”の前では無力だ。そんな様子に“ゼノヴィア”は道連れが出来たとばかりに嬉しそうに手招きをしながら待っている。
俺はこっちのゼノヴィアの耐久力がどれ程なのか分からないので取りあえず、死なないように手加減するように伝えると渋々ながらも俺の言葉に従ってくれるみていだ。そして、“イリナ”は扉の外へと消えていく。……この光景に見慣れた自分が怖えな。
「ねえ……その、そっちの私っていつもあんな感じなの?」
「あれはまだ、マシな方だ。酷い時は本気で俺を殺しに来る……所謂ヤンデレだ。てめえは違うんだよな?」
「当たり前でしょ! だから、みんなも私から距離をとらないで!」
この世界のイリナが聞いてきたのでそう返してやると叫びながら先程の“イリナ”を見たせいでこちらのイリナにも怯えて距離をとるオカルト研究部の面々に目を潤ませながらに懇願している……正直言って、こっちからすればお前こそ、誰だこいつって突っ込みたくなるような別人っぷりだが気にしたら負けだな。
「そう言えば、私達が知らない人もいるわね」
「そうなの? じゃあ、自己紹介するね。私の名前は兵藤クローム。お兄ちゃんの妹」
「私は兵藤ユニです。一誠さんの妻です」
ユニの爆弾発言に思わず、耳を疑う。というか、何お前もちゃっかり兵藤って名乗ってんだよ! 因みにそれを聞いたこっちのオカルト研究部共は犯罪だの何だの言ってるが俺は間違ってもロリコンじゃねえぞ! 取りあえず、なんでユニがそんな冗談を言ったのか分からねえが誤解を解かねえと後が面倒くさそうなので訂正をいれる。
「妻じゃなくて許嫁だ! それとユニと俺は同い年だ。変に勘ぐるんじゃねえよ」
「直になるので、今からでも構わないと思いませんか? それとも……私じゃダメですか?」
「べ、別にダメだって言ってるわけじゃねえだろ!」
涙目上目遣いで俺を見て来るユニに耐えられなくなり首筋を赤くして顔を背けてしまう。
「なんだ、ただのツンデレか」
「一見怖そうだけど、ツンデレなだけなのね」
この世界の俺とリアス・グレモリーが何故か納得したように頷いてるのが気にくわねえ。誰がツンデレだカス共が。俺は認めねえからな! 後、さっきからニヤニヤしながらアザゼルの奴が見てきやがるのが一番気にくわねえ。
「ニヤニヤしてんじゃねえよ! この親馬鹿が!」
「うおっ! 何だよ、今の炎、面白そうだな。というか、誰が親馬鹿だよ」
俺が憤怒の炎を投げつけるがアザゼルは軽々しく避ける。ちっ、こいつの強さ自体はどこの世界に行っても同じみてえだな。本腰いれねえと当たらねえな。
「そう言えば、この世界の僕はどうしてるの―――パパ?」
ヴァーリがこの世界の自分が気になったらしくアザゼルに何気なく尋ねる。しかし、パパとヴァーリが言った瞬間に俺達の世界の奴ら以外が固まる。そして非難がましい目をアザゼルへと向ける。
「「「「隠し子か!」」」」
「おい、待て! 俺には隠し子なんかいねえし、こんな子供知らねえぞ!?」
「ヒグッ……酷いよ……パパ」
アザゼルが知らないと言った事にショックを受けて思わず、涙を流し始めるヴァーリ。その事にアザゼルを見つめる非難がましい目がさらに強まる。ぶはっ、まさかこんな所でアザゼルの困惑した顔が見られるとはな。違う人間だとは言え、いい気分だ。俺は良くやったという意味を込めてヴァーリの頭を撫でてやる。
「ほら、泣くんじゃねえよ、ヴァーリ」
「「「「ヴァーリ!?」」」」
ヴァーリという名前に反応してこの世界のオカルト研究部共が騒めく。反応からしてこっちのヴァーリとはだいぶ姿が違うんだろうな。まあ、どうでもいいことだがな。
「マジかよ……あの戦闘狂のヴァーリが別の世界じゃ僕っ娘ロリ巨乳とか信じられねえ。なんで俺の方は男なんだよ!」
「パパって……そう言う事か。こっちじゃ、あいつは俺の事をどう思ってんだか……」
俺の方のヴァーリが女だったことに血涙を流して悔しがるこの世界の俺。そしてアザゼルは何やら複雑そうな顔をして考え込んでいやがる。何か事情があるんだろうが俺にとってはどうでもいいことなので無視することにする。そんな時だった。
「うふふふ……誰からも注目されない状態。つまりは放置プレイ、やはり快感ですわ!」
「よ、よく似た別人ですよね? わ、私じゃないですよね?」
焼き鳥女がなにやら、今まで放置されていたことにより顔を紅潮させて快感を覚え始めて来ていた。俺の方としては日常茶飯事なので胃薬を飲むだけで耐えられるのだがこの世界の奴らは唖然として焼き鳥女を見つめる事しか出来ない。
特にこの世界のレイヴェル・フェニックスはこれが自分だと信じられずに縋るように俺の方に尋ねてきている。俺はその視線に対して気まずそうに顔を背ける。それにしても、イリナもそうだがどうやら、この世界はまだ変態による汚染が少ないらしい。非常に羨ましい限りだ……くそがっ! なんでこの世界はまともなんだよ!
「あなたも、こちらに来ませんか? すぐに気持ちよくなりますわ。まずはむち打ち百発からですわ」
「け、結構です!」
どこからか取り出した鞭を俺に押し付けて来てハアハアと荒い息遣いで四つん這いになる焼き鳥女。そのすがすがしいまでの変態っぷりに俺達以外はドン引きだったりする。因みに俺達はこんなことは日常茶飯事の為に今更驚かない。だが、お前が元凶か、といった目で見られるのは流石に辛い物がある。
「おい、俺をこんなドMの変態と一緒にするんじゃねえよ!」
「さあ、その罵声と共に私に鞭でお仕置きを!」
「…………………」
「あんた結構苦労していたんだな……」
「言うな……」
情けないことにこの世界の俺に同情の目を向けられてしまう。何となく、全員が俺に向ける視線が温かい気がする。俺は暴君のはずだろ? なのに、なんだこのざまは。ちくしょう……変態と関わるとやっぱ碌なことにならねえ。
「え、えっと、アーシア・アルジェントです」
「わ、わたしもアーシア・アルジェントです」
「「よろしくお願いしま―――はうっ!」」
そんな空気を壊してくれたのは二人のアーシアだった。何やら、自己紹介をしようという考えに至ったらしく、二人そろって同じ名前を名乗り、頭を下げた所に相手の頭と衝突させてしまい涙目になっていた……ああ、俺の胃が癒される。
「よかった……アーシアはどの世界でもアーシアなのね」
「アーシアまで可笑しかったら俺はどうしようかと……」
この世界のリアス・グレモリーと俺が、アーシアが普通だったことに感動して涙を流しているが、どうもその考えは間違っている気がする。確かに見た目も性格も同じだがどうにもこの世界のアーシアは弱い気がしてならねえ。……試してみるか。
「アーシア……両方だ。正拳突きをしてみろ」
「はい、イッセーさん」
「え? 正拳突きってこうですか?」
この世界のアーシアはやったことがないのか可愛らしく、えい、と掛け声を出しながら弱々しいパンチをする。ああ……やっぱり俺の世界の奴らにマトモなのはいないらしいな。俺は不思議そうな顔をするこの世界の奴らをよそに溜息を吐く。
「それじゃあ、行きますね。えい!」
同じく可愛らしい掛け声と共に放たれた“アーシア”の正拳突きは目に追えないスピードで繰り出され腕が完全に止まった後からパンッというピストルのような音が聞こえてくる。
「………い、今音が後から聞こえて来た気がするんだけど……」
「はい! 毎朝、感謝の正拳突き一万回のおかげでこんなにも速く出来るようになったんです!」
「す、すごいです。私も―――」
「「「「お願いだから今のままでいて!!」」」」
本当に嬉しそうに笑う俺の“アーシア”に触発されたのかやる気を出して正拳突きの練習をしようとするこの世界のアーシアをオカルト研究部の全員が涙ながらに止める。ああ……どうやら俺の世界はとことんまでカオスに染まっているらしいな。
(どうやら、この世界の俺には変態共の恐ろしさを教えてやらねばならないようだな。くっくっく、ドライグなどと呼ばれている甘ちゃんに現実の恐ろしさを教えてやろう。そして道連れに!)
後書き
今回はみんなの違いを書いたせいで変態を書くことが出来なかったぜ……だが、次回は大暴れします。
次回、歴代赤龍帝とカストカゲさんがヒャッハー! です(笑)
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