ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
進軍開始
敵襲の笛の音が鳴り、ダーク達はベルクーリの所へ集まっていた。
そこにアリス、アスナ、レンリ、シェータが現れると、ベルクーリは言う。
「成る程、“敵”側リアルワールド人てのの遣り口は相当なモンだな。皇帝ベクタが、思いきった手に出たようだ。荒縄一本を便りに、幅百メルの峡谷の横断を強行しやがった」
「……面倒な事になったか」
ダークは言うと、ベルクーリは言う。
「だが、こいつは戦争だ」
古の豪傑は続ける。
「異界人のアスナさんやダークらはともかく、俺達がダークテリトリー軍に情けを掛けてるばあいじゃねぇ。この機は……活かさねばならん」
「……奴等が荒縄と使って来ると言うなら、俺達はそれを斬って落とせば良い。レンリ」
ダークが言うと、突然名指しされたレンリが背筋を伸ばす。
「お前の“比翼”……最大射程はどのくらいある」
「はい、通常時で三十メル、記憶解放状態なら恐らく五十……いや、七十メルは」
「よし。では……俺とベルクーリ、それと四騎士で渡峡中の敵主力に斬り込む。俺とレンリが攻撃担当、残りが護衛担当だ」
「御命、了解しました!」
次いで、シェータも、低く呟く。
「だいじょうぶ。私が……守る」
すると、ベルクーリとダークの作戦から名が外れていたアスナが一歩出る。
「私も行くわ。壁は多い方が良いでしょう?」
「……済まん。では、すぐに出るぞ!」
ダークが言うと、全員が頷いた。
†††
七騎は、十本の荒縄目掛け、馬を駆けさせる。
「作戦行動範囲だ!しくるなよ!!」
ダークは弓『狼牙弓【邪獄帝】』を展開し、構える。
そしてーーーー
「リリース……リコレクション!」
レンリが記憶解放したと同時。
「守れ!!縄を死守しろぉーっ!!」
誰かが叫んだ。
荒野を駆け抜けたダーク達は、馬から飛び降りると、ダーク以外は一丸になって突進した。
「ウラアァァーーーーーッ!!」
突撃した騎士達に、十数人の拳闘士達が一斉に飛び掛かる。
しかし。
「リリースリコレクション、喰らえ、邪獄帝!!」
ダークが放った矢は、漆黒の狼となり、半分を食らう。残りはシェータが切り裂くと、レンリが比翼を投げる。
右端の太縄に弧を描くように飛ぶと、
「やめろおおおぉぉぉーーーーーッ!!」
誰かの叫びと共に、その太縄は斬られ、数十人の闘士達が落ちた。
「むぅ……最早戦なのかこれ……」
ダークはぼやくように言うと、次々と邪獄帝を放っては闘士達を食らう。端から見れば最早ワンサイドゲームに近い。いや、実際そうなのだろう。
と、ダークは思っていると、三本目も斬れて、闘士達を落としていく。
(ここまでは順調だ……さて、どう出るベクタ)
ダークはそう考えているときだった。
ぴりりりりっ。
ダークの腕輪が鳴る。シャドウからの通信だ。
「此方ダーク」
『シャドウです。ラースが漸くAWのSTRA倍率が1.00になっているのに気が付きました』
「……眼鏡の役人(笑)から眼鏡の役人(馬鹿)と言い直す日が来るとはな…穿て、邪獄帝!!」
移動しながら邪獄帝を放つと、シャドウが言う。
『それと朗報です。ユイ……ボトムアップ型AIが援軍を呼んでくれました。もし、彼方が先でも、強力な神アカウントの在る三人が此方の味方なら百万の兵を獲たも同然』
その報告と同時、五本目の太縄が切断された。
「……で、報告はそれだけか」
『イエス』
「……了解した。引き続き頼む」
腕輪を切ると、邪獄帝を変形させてブレードモードにすると切り込みをかける。
だがその瞬間、漆黒の闇が何かを感じとった。
「……来やがった!」
ダークが言うと、主戦場から五百メル離れた所に、次々と現れる。その数、二万、いや三万は下らない。
「な……何だあの連中は!!」
降りてきた五百のプレイヤー等が拳闘士を攻撃している所を見たベルクーリが言う。
「リアルワールドプレイヤーだよ!!」
ダークが言うと、すぐにアスナが言う。
「システム・コール!ジェネレート・フィールド・オブジェクト!!」
すぐにその効果が現れ、サウンドエフェクトと共に、リアルワールドプレイヤー達を吹き飛ばしていく。
「アスナ、無理はするなよ」
そう呟き、邪獄帝をアローモードにし返すと、邪獄帝を放っていく。
闇の狼は吼え、辺りのリアルワールドプレイヤー達を食っていく。
「欲望に忠実過ぎるだろアメリカ人!!」
ダークは邪獄帝を上に構えて、矢を放つと、今度は拳闘士を外して漆黒の雷撃矢を放つ。
途端、ベルクーリが言う。
「ダーク!密集陣形でずらかる!!」
「オーライ!!」
ダークは答えると、拡散にして邪獄帝を放つ。
(数が多い!!)
ダークが危惧していた事が起こりそうな予感をしつつ、狼牙刀を持って投げ付ける。心意を帯びたそれは、ビットの様な動きをしてアメリカ人らをほふる。
と、そこに。
「ダークさん、アリス殿が!!」
レンリが叫ぶ。
「アリスがどうした!!」
邪獄帝をブーメランモードにして投げると、レンリの元へ行く。
「アリス殿が、ベクタに拐われました!こいつらも、拳闘士も……最初から囮だったんですよ!!」
「なっ……!?」
ダークは驚愕した。予想を遥かに越える出来事である。
「ベルクーリ閣下が後を追いました!まず、この戦線をどうにかしない限り……!」
「だな……どうやら、拳闘士達は此方の味方に一時的になったに過ぎねぇしな!!」
ブーメランモードの邪獄帝を掴むと、デュソルバードの炎の弓を思い描く。
「精製!」
そして、ダークの左手に、新たな炎の弓が現れる。
「頼む、火竜弓【陸王】!」
ダークはそれを狼牙弓【邪獄帝】と連結させると、炎と闇が全体に放たれる。
「レンリ、今から道開けっから、全員連れて退却しろ!」
そう言うと、弓を上空に構える。
「狼竜・福音唱歌!!」
矢を放つと、それらは分裂し、竜と狼になってプレイヤー達を食らう。
「行け、長くは持たん!!」
レンリに言うと、レンリはすぐに頷いて、残ったもの達を引き連れて退却していく。
「お前達はもう少しだけ付き合えよ!!」
ブーメランモードに切り替え、投げつけると、首などが切断され、一気に数を減らしていく。
それをもう一度掴むと、弓に展開し、矢をつがえて言う。
「食らいな、狼竜!!」
矢を放つと、狼と竜が現れ、プレイヤー達を襲っていく。
「……さて、俺も退却しないとか!」
弓を背に、ダークは在るだけ矢を放つと、アスナ達と合流するために、森へと撤退した。
ページ上へ戻る