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『ひとつ』

作者:零那
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『其れ』


いつかの遠い過去に置いてきてしまった『其れ』を、また取りに行きたくて...
だから、今も、こうして此処に...

『其れ』は目には見えなくて、聞くことも出来なくて、匂いも無くて、触れる事など勿論不可能で...

そう『其れ』は形など無い曖昧なモノで...

それでも、どうしても触れてみたくて、感じてみたくて...

きっと『其れ』が何なのか曖昧なままだから答えが欲しくて、探しては彷徨って...

もしかしたら一瞬なら触れたことが在ったかもしれない『其れ』を、確かなものにしたくて...

いつかの遠い過去に置いてきてしまった『其れ』を、また取りに行きたくて...
だから、今も、こうして此処に...此処に在り続けてるのかもしれない...

 
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