偽の高潔

「あの連中か」
「ああ、革命派だよ」
　かつて何度もテロ事件を起こした者達である、今も公安がマークしている組織だ。
「あの連中とな」
「つながってるのか」
「そうらしいな」
「環境保護とかな」
「ああ、聞こえはいいがな」
　題目としては素晴らしい、しかしというのだ。
「それを隠れ蓑にしてな」
「やっぱり過激派が入っているんだな」
「そこからな」
　その題目の運動から、というのだ。
「自分達の勢力を拡大させようとしているな」
「連中の手口だな」
「だからな」
　それで、というのだ。
「公安はあいつをマークしてるらしい」
「そこから何が出るか、か」
「あいつの資金源もな」
　活動のそれもというのだ。
「調べていくかもな」
「金か、金の出処からな」
「そしてその流れからな」
「色々わかるからな」
「だからな」
　それで、というのだ。
「あいつのことはな」
「調べていくんだな、公安は」
「そうかもな」
「そういえばあいつはな」　
　牧野は鋭い、この上なくそうなった目で津田に福嶌について言った。
「国会議員の選挙に出ようとしているな」
「ああ、民主社会党からな」
「国会議員になると逮捕されないしな」
　議員の不逮捕特権である。
「何よりも権力を握られる」
「でかいぞ」
「若しあいつが議員になればな」
「とんでもないことになるな」
「公安がどう動くか」
「気になるな」
　こう話すのだった、職場で同僚とも。とかく牧野は福嶌を警戒し危険人物とみなしていた。だがそれと共にだ。
　牧野は津田にだ、こう言ったのだった。
「まああいつがどれだけ善人ぶっていてもな」
「それでもだな」
「わかる奴にはわかるんだ」
　その素顔が、というのだ。
「それが白日の下に晒されるさ」
「絶対にな」
「悪党の末路なんてわかってるだろ」
「ああ」　
　津田は冷静な声でだ、牧野に答えた。
「この仕事やってるとな」
「悪党ってのは何時かな」
「絶対にボロが出てな」
　自分から出す場合もある。
「そしてな」
「お縄になってるんだ」
「だからあいつもな」
「絶対にそうなる」　
　悪事が公になる時が来るというのだ。
「その時が俺達の仕事か」
「そうなるだろうな」
　こうしたことを話すのだった、そして牧野は暫く福嶌を嫌悪の目で見続けていた。彼の仕事ではないということもあり。
　だが彼の予想通りだった、福嶌の実態は。
　徐々に知られていった、それはネットからだった。
「福嶌おかしいよな」
「ああ、絶対にな」
「言ってることがおかしいっていうか」
「自分に都合のいいデータだけ出してるだろ」
　その主張に、というのだ。