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眼病から

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第四章

「おい、今の凄いな」
「凄い動きだったな」
「一瞬で技を見破って」
「それで内股を決めるなんてね」
「凄かったな」
「凄い流れだったな」
「自然に出来たんだよ」
 倉見はこう周りに答えた。
「何か」
「自然にか」
「さっきの動きが出来たのか」
「そうだったんだ」
「さっきのは」
「ああ、そういえばな」
 ここでだ、倉見は自分のさっきの動きを頭の中で思い出した。そのうえで周りに考える顔になってこう答えたのであった。
「感じたんだよ」
「俺の動きをか」
 相手だった男が言って来た。
「わかったんだな」
「ああ、一本背負いしてくるってな」
「それでか」
「こっちは崩してな」
「そこからだな」
「内股仕掛けられたんだよ」
 そうだったというのだ。
「空気の流れを感じて勘もな」
「勘もか」
「感じてな」
 そして、というのだ。
「出来たんだよ」
「前と違うな」
「そうだな」
 部員達はその彼の言葉を聞いて言った。
「前はな」
「そこまで出来なかっただろ」
「確かに強かったけれどな」
「力と技でな」
「その二つだったからな」
 倉見の武器はだ。
「相手研究してても」
「そういうのは使わなかったな」
 勘やそうしたことはというのだ。
「敵の気配とかもな」
「感じなかったな」
「そうだったな、けれどな」
 今は、というのだ。
「何か違ってきたな」
「それはあれだろ」
 これまでこの場では黙っていた岩松が言って来た。
「御前目の病気になっただろ」
「はい」
「その時御前ずっと目が見えなかっただろ」
「ええ、ずっと目に包帯巻いて」
「それで見えない分だけな」
「耳とか鼻とか使っていて」
「そっちの感覚が発達したよな」
「そうですね」
 それは今でもだ、とかく前よりも聞こえるし匂いを感じる。そして味覚も随分と鋭くなり触ることにも敏感になった。
 そして勘もだ、かなりよくなってだったのだ。
「目以外の感覚が」
「それでだよ」
「柔道も変わったんですか」
「ああ、勘とかも使ってな」
 そして、というのだ。
「そうなったんだよ」
「そうですか」
「これ何て言ったかな」
 岩松はここで首を傾げさせてこんなことを言った。
「ええと、インドで言うな」
「インドですか」
「ほら、チャクラとかいっただろ」
 ここでこう言ったのだった。 
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