仮面の戦士
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第十章
「そこまでされてな」
「見事な方ですね」
「全くだ、あの方ならばだ」
それこそ、とも言うジュリオだった。
「これからよりよき騎士になられる」
「王も素晴らしい騎士を手に入れられましたね」
「まさに宝だな」
「そうです、ただ」
ここでだ、レオはこれまで晴れやかだった顔を曇らせてだ。自身の主にこう言った。
「旦那様は」
「私がどうしたのだ?」
「優勝はされました」
「うむ、幸いな」
「しかし。王の軍にはですか」
「ははは、入らんよ」
「ミスコンティ辺境伯の軍に入られると仰いましたが」
王に優勝の時に実際に言った言葉だ。
「叔父上でもあられる方の」
「そうだ、そしてそこでな」
「異教徒達と戦われるのですか」
「私にはそうした方が合っている」
こう言うのだった。
「気品ある王の軍よりもな」
「辺境の方がですか」
「会っている、だからな」
それで、というのだ。
「私は行く」
「そうされますか」
「うむ、ではな」
こう言ってだ、ジュリオはビールを飲んだ。大杯は瞬く間に空になった。そしてその木のジョッキにまたビールを注いでもらい。
再び飲む、レオにそうしつつ言った。
「一旦領地に戻り行くぞ」
「はい、そういえば辺境伯のご領地は」
ここでレオはあることに気付いた、その気付いたことはというと。
「ビールもワインもでしたね」
「むっ、知っていたか」
「まさかそちらの方が」
「ははは、そちらもある」
否定はしなかった。
「もっとも気品がある場所は似合わないのは本当だ」
「その二つの理由で、ですか」
「叔父上のところに行くぞ」
「あちらでもお酒は程々に」
「またそう言うのだな」
「何度でも、何時でも言わせて頂きます」
主を思うが故に、というのだ。
「私は旦那様の従者ですから」
「だからか」
「左様です」
こう言いつつもだ、レオはジュリオと共にいた。ジュリオは辺境伯領において武勇を馳せアンジュリーナも王の軍で活躍した。その二人の若き日の逸話である。
仮面の騎士 完
2014・12・20
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