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A型メランコリー

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第三章

「スパもある」
「そうしたプールなの」
「駅前のあそこだよ」
「ああ、あそこね」
 そのプールとは何処か、私にもわかった。
「八条プールね」
「あそこでいいだろ」
「まあね。あそこならね」
 プールがあってしかもだ。
「スパもあって」
「長い時間いられるからな」
「デートにもいいわね」
「そうだろ、それじゃあいいな」
「ええ、それじゃあね」
 私もそれで納得した、そしてだった。
 私は彼と日曜に駅前のプールにデートで行くことになった、そうしてだった。
 家に帰って水着のことを真剣に考えだした、これが随分難しかった。
 ああでもないこうでもないと考えた、持っている水着を全部出してそのうえで見つつ考えて。そしてその結果。
「固定観念の打破だから」
 それが今回のデートのテーマになっていたからだ、それで。
 私は決めた、そうして日曜に挑んだ。
 その日曜日だ、私は駅前で彼と待ち合わせた、その格好もだった。
 彼はいつもとは違いネクタイだった、私はスラックスにベストを身に着けている彼の格好を見て眉を顰めさせて尋ねた。
「何、それ」
「普段とは違うお洒落だよ」
「お洒落っていうかね」
「外してるか?」
「ホストの真似?バーテンダーさん?」
「違うか」
「思いきりね」
 こう彼に言ってやった。
「サッカーのパスを外した時よりも凄く外してるわよ」
「失敗したか」
「ええ、目も当てられない位に」
「そう言うそっちもな」
「私も?」
「何だよ、その格好」
 彼も眉を顰めさせていた、私の今のファッションを見て。私の今のファッションはというと。
「タイツな」
「普段着てないから」 
 それで今回は、だった。
「それとね」
「半ズボンかよ」
「ええ、そうよ」
 かなり冒険してみた、青の半ズボンにだ。
 黒タイツ、そして上は白のブラウスだ。それにバッグという格好だ。髪はいつもは下ろしてるけれどポニーテールにしてみた。
 その私を見てだ、彼は言うのだった。
「何処の王子様だよ」
「あら、王子様なの」
「その半ズボンが特にな」
「ヨーロッパの童話に出て来る」
「靴だしな」
 それもシューズじゃない普通の黒い靴だ、これも普段とは変えた。
「余計にな」
「王子様に見えるのね」
「その半ズボンが提灯ブルマだと余計にだよ」
「ハムレットみたいに」
「何だよ、それ」
「似合ってない?」
「そういう問題じゃなくて外してるだろ」
 どうにもという返事だった。
「全くな」
「ってことは」
「お互いな」
 彼も私もだった。
「壮絶に外したな」
「そうみたいね」
「しかもな」
「しかも?」
「二人一緒にいるとな」
 これがだった、そのホストかバーテンダーの失敗の彼と王子様の失敗の私が一緒にいるとだった。
「外しまくりだな」
「ううん、そうかも」
「やれやれだな、まあいいか」
「何でいいのよ」
「俺達プール行くだろ」 
 それでというのだ。 
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