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邪剣

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6部分:第六章


第六章

「空はいい」
「そうだな」
「そこから全てを見下ろして進むことは無上の喜びなのだ」
「あんた達はいつもこうして空を飛んでいるのか」
「如何にも」
 答える声もまた誇らしげなものであった。
「その通りだ。こうしてな」
「いいものだな」
「ああ、羨ましい」
 二人は素直に自分達の感想を述べた。
「こうして空を飛べるとは」
「龍とはいいものだ」
「御主達も魔法で空を飛べるだろう?」
 ホークムーンは彼を羨む二人に対して問うた。
「鳥に姿を変えることもできる筈だが」
「いや、それでもだ」
「こうして空を飛ぶというのは」
「違うか」
「ああ、全くな」
「別物だ」
 彼等は彼等でこうホークムーンに答えるのであった。
「何と言えばいいのか」
「まるで大空の支配者になった気分だ」
「ふふふ、そうか」
 ホークムーンは今度の二人の言葉を聞きまた誇らしげに笑うのだった。
「それ程いいものか」
「できれば次に生まれる時は龍になりたいな」
「こうして空を飛べるのなら」
「龍はいい」
 ホークムーンは言う。
「一度龍になったら止められはできない」
「そこまでいいものなのか」
「人間よりもかい?」
「人は人でいいものだ」
 だが彼は人間というものを否定はしなかったのだった。
「だが。龍もまたいいものなのだ」
「そうなのか」
「そうだ。今度生まれ変わったら龍になってみるといい」
 これが彼の考えであった。
「そうすればわかる」
「そうか。では今度はな」
「そう神様に願ってみよう」
「うむ。それでは着いたぞ」
 話しているうちにだった。
「ここだ」
「ああ、もうか」
「早いな」
 二人もその山に着いて思わず声をあげた。そこは森の終わりにありすぐに山脈がはじまっていた。その入り口にある洞窟であった。
 二人とホークムーンはその洞窟の前に降り立つ。その洞窟の入り口はかなり広くホークムーンの巨体でも優に入られる位だった。クリスはその巨大な洞窟の入り口を見て言うのだった。
「ここだよな」
「そうだ、ここだ」
 ホークムーンはそのクリスの問いに答えた。洞窟の入り口は上も下も白い岩石が見えるがその先は真っ暗になっていて見えはしない。
「ここの奥深くにその剣がある」
「モートの邪な剣が」
「残念だがオズワルドはもう中に入っている」
「ああ」
 アーノルドが彼の言葉に険しい顔で頷いた。
「そうだったな。もうな」
「それももうかなり先に言ってしまっている」
「じゃああいつが剣を持っていてもおかしくはないってことだな」
「むしろそう思うべきだ」
「そうだな」
「確かに」
 二人はホークムーンのその覚悟を決めている言葉に対して頷いた。
「時間を考えればな。やっぱりな」
「そう思うべきだ」
「オズワルドの強さはかなりのものなのは聞いた」
 ホークムーンの言葉には最早何の余裕もなかった。
「そしてあの剣はだ」
「龍すらも倒すか」
「それだけではない」
 その龍である彼の言葉である。
「国すらも一日で滅ぼしたことがある」
「国を滅ぼすってのは聞いていたが」
「一日なのか」
「そうだ。一日だ」
 この一日という時間が彼等の中で繰り返され強調されていく。まるで聖典の言葉の如く。
「一日で滅ぼしたのだ。一人残らずな」
「だとするとこりゃまずいな」
「僕達も腕には自信があるが」
「しかしだ。止めなければならん」
 ホークムーンはまた覚悟を決めている言葉で述べた。
「あの男だけはな」
「さもないと世界がってわけか」
「そうだ。モートはその剣で多くの国を滅ぼしてきた」
 今度は国を滅ぼしてきたということが述べられた。
「それがまた世に出れば」
「しかも操るのがあのオズワルドなら」
「想像するまでもないということか」
「何があっても止めなければならん」
 彼等はそれぞれ述べた。
「だからだ。行くぞ」
「ああ、わかってるさ」
「何があってもな」
 彼等は意を決して洞窟の中に入った。既に死は覚悟している。そうして中に入っていきやがてその奥に辿り着いた。するとそこにいたのは。
 まずは無数の悪霊達だった。そしてその中央に黒く禍々しく光る巨大な剣を両手に持ちそれをその不気味に宙を舞い続ける悪霊達に対して振るう紅い目の男がいた。ホークムーンは剣を振るうその男を見て二人に対して問うたのであった。
「あれが赤眼のオズワルドだな」
「そうだ。あいつだ」
「あれが赤眼のオズワルドだ」
「そうか。やはりな」
 彼こそがオズワルドと聞いてまずは納得して頷いた。しかしであった。
「だが。それでもだ」
「何故ああして悪霊達と闘っているかか」
「うむ」
 ホークムーンが問いたいのはそこであった。
「あれは何故だ?」
「それは俺にもわからない」
「僕にもだ」
 オズワルドは決死の顔で自身の周りに漂いそうして次々に襲い掛かって来るその悪霊達と闘っていた。悪霊達は切られれば姿を消すがまたすぐに新しい悪霊が出て来て彼に襲い掛かる。そうしてその身体に少しずつだが確実に傷を付けていくのであった。
 
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