罪を背負い
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2部分:第二章
第二章
「何しろ御主が人を殺したのは事実じゃからな」
「安心しろ。私は罪を犯している」
「その通りじゃな」
「私もまた人を殺した」
ギルガメシュは玉座から男に言ってみせた。
「それはその通りだ」
「左様、お主もまた罪人じゃ」
「そのことを責めるのか」
「それだけではない」
男はだ。さらに言うのだった。
「御主は川の魔物を倒したことがあったな」
「三年前のことだな」
「フンババを倒したこともあったな」
男はそのことも話してきた。ギルガメシュは英雄でもある。彼は魔物がいれば自らその退治に向かうのだ。そうしているのである。
その中でだ。川の巨大な魔物を倒したこともあればフンババを倒したこともある。それもまた紛れも無い事実であった。彼はそのことを隠さなかった。
「そしてその時じゃ」
「川の魔物を倒した時とだな」
「フンババを倒した時じゃ」
その二つの時だというのだ」
「川は乱れたな」
「私と魔物の戦いによってな」
「森もそうなった」
フンババのいるその森という意味である。
「荒れ果てた。そしてその巻き添えでじゃ」
「川の近くや下流の家や畑が流されたか」
「森の木々も倒れてじゃ」
「多くの者も死んだな」
「御主が壊し殺したのじゃ」
男は邪な笑みで彼に告げた。
「全てな」
「そうだな。私が直接手を下したにないしてもだ」
「御主のしたことなのは事実じゃ」
「そのことも否定しない」
ギルガメシュはまた玉座から言ってみせた。
彼はその玉座で胸を張っている。そうして傲然とさえしてだ。男に対して言い続けるのだ。そこには何の負い目も引け目もないようだった。
そしてだ。彼は男に言うのであった。
「私と魔物達の戦いのせいでそうなった」
「そうじゃな。御主の罪じゃ」
「そうじゃ。罪じゃ」
男は笑いながら言ってくる。
「紛れもなくじゃ」
「私は数多くの罪を犯してきたな」
「その罪を自覚しておるな」
「自覚している」
その通りだというのだった。
「そしてだというのだな」
「罪について何も思わぬのか?」
男はこうギルガメシュに問うた。
「そのことについてじゃ」
「私の両肩には罪がある」
ギルガメシュは言った。
「紛れもなくな」
「その罪を償おうとは思わぬのか」
「償うか」
「その重荷から逃れるのか?それともじゃ」
「それともか」
「居直るか」
男の声の陰が深くなってきた。
「そうするというのか」
「逃れることはしない」
その男にだ。彼は答えた。
「そして居直ることもしない」
「どちらもか」
「そうだ、しない」
その二つはないというのだ。
「そして償うこともしない」
「何と、何もせぬのか」
「御前の言うことは何もしない」
そうだというのだ。そうしたことはしないというのだ。
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