フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち~
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ゼロの使い魔編
第一章 土くれのフーケ
エピローグ:誓約
「ん・・・・・」
架が目を覚ましたのは、学院に戻ってから数時間が経過した頃だった。いるのはいつか見た医務室のベッド。そして自分の足もとには、
「すー、すー 」
静かに眠るルイズの姿。まるで初めてこの世界で目覚めた時と同じ状況である。
しかし、心境の方は正反対だった。あの時は右も左も分からなかったが今は違う。
コイツ(ルイズ)に出会って・・・
と思いながらルイズの綺麗な桃色の髪を撫でてやる。暫くすると「ん・・・」と声を漏らしながらルイズは薄く目を開けた。
「ああすまん、ルイズ。起こしちまったか?」
「あれ・・・カケル・・・?」
寝ぼけているのかボンヤリとした目でこちらを見ていたルイズだったが、途端に目を見開くと「・・・カケル!?」とガバッと起き上がった。
「カ、カケル!?もう大丈夫なの!?」
「あ、ああ・・・大丈夫だ。」
「まったく、心配したんだから・・・」
ルイズはブツブツ言っているが、架は別の方に注目していた。自分は魔力切れでぶっ倒れたというのに、ルイズには大した消耗が見られない。魔力供給がないわけではないが、やはり自分が正規のサーヴァントではないことが影響して供給量が不十分なのか。それともルイズの持つ魔力が桁外れなのか。生憎それを見抜く力は架にはなかった。
「そ、それで、カケル?これは?」
「ん?」
ルイズが聞いてきた「これ」とは、起き上がってもなお彼女の頭に置いてある手のことだった。架は何も答えず、
ナデナデ
「・・・・・っっっ!!??」
たちまちルイズは耳まで真っ赤になり
「な、なああにご主人様の頭を撫でているのよおおおおおお!!!!!」
物凄く声を荒げながら、架に掴みかかるルイズ。それに架は笑いながら「悪い悪い」と口だけで謝る。
傍から見れば、和やかな雰囲気。勿論本人たちはこんな光景誰にも見られたくないのだが。
しかし!お忘れだろうか。架は先ほどこの場面にデジャヴを感じていたが、もしあの時通りならば次には・・・
「なんだカケル、もう目が覚めたn・・・・・」
「え・・・」「あ・・・」
アイツが部屋に入ってくるのだった。
ヴァロナの目に映るのは、寝ている架と、殆ど馬乗り状態になっているルイズの姿。さらにはベッドにあるはずの布団は床に投げ出されシーツはクシャクシャになり、どう見ても暴れた形跡となっている。
「・・・・・」(架)
「・・・・・」(ルイズ)
「・・・・・」(ヴァロナ)
数秒の間―――本人たちからすれば相当長い時間――――硬直する空気。
「・・・・・」(架)
「・・・・・」(ルイズ)
「・・・・・」(ヴァロナ) ニコッ(´▽`)
バタンッ
「「いやいやいやいやいやいやいやいや!!!」」
起きたんなら学院長室に行け。残りの二人も既に待っているぞ!
というヴァロナからの言葉を聞き、二人は大急ぎで学院長室へ向かった。部屋にはオールド・オスマンにキュルケ、タバサが待っていた。
オスマンの話は、フーケは捕らえられなかったものの破壊の杖は無事戻ってきたことに対する労いと、フーケを撃退したということを宮廷に報告したところこれが高く評価され、近々三人には何らかの褒賞があるとのこと。
しかし、それを聞いたルイズは遠慮がちにオスマンに尋ねた。
「あの・・・三人って」
「うむ・・・残念だが、彼は貴族ではないのでな・・・」
「そんな・・・」
ルイズの言葉にオスマンも本当に残念そうな顔をした。実際オスマンは、「撃退したのはミス・ヴァリエールの使い魔である。」という事実もしっかりと報告していた。しかし、使い魔の功績は主の功績というのが当たり前の王宮は気にも留めなかった。架のことを詳しく話すわけにもいかず、オスマンもこれで納得するしかなかったのである。
「まあ、破壊の杖も再び宝物庫に納まったことだし、これで一件落着というわけだ。今日の祝賀会の主役は当然君たちじゃ。」
話は以上だ、下がってよいぞ。ということでルイズたちはドアへ向かっていく。キュルケは今夜のパーティに向けておめかししようととてもご機嫌のようだ。架もルイズの後に続こうとしたが、「ああ、使い魔君。折角じゃ、少し話をしていかんかね。」とオスマンに呼び止められた。
「こうして話すのも初めてじゃな。私がこの学院の学院長、オスマンという。」
「ルイズの使い魔をやっております。影沢架と申します。」
オスマンの話によると、ロングビルの正体がフーケだということは架の予想通りオスマンは気付いていたようだ。ただ、昔彼女の父親には借りがあったらしく、気付かないフリをして彼女を秘書として雇ったらしい。架が、恐らく故郷に帰っただろうと報告すると「そうか・・・」と嬉しそうに笑みをこぼした。
また、驚きだったのは破壊の杖の正体が架の世界にある武器、「ロケットランチャー」であることが判明した。オスマン曰く「60年ほど前に助けてもらった恩人の形見」らしい。
「私からも一ついいですか。」
「うむ。」
「これについて、何かご存じで?」
架が示したのは左手に刻まれたルーンだった。
「・・・言い伝えによると、それは始祖ブリミルの使い魔に刻まれるルーンだと言われておる。君のルーンは四つある内の一つ、『ガンダールヴ』というものじゃ。」
「始祖ブリミルというのは?」
「この世で最も偉大なメイジと言われておる。『ガンダールヴ』、『ヴィンダールヴ』、『ミョズニトニルン』、『リーヴスラシル』と呼ばれる四つの使い魔を使役したとされている。」
そこでオスマンは一度言葉を切り、目を瞑りながら「実はの・・・」と語りだした。
「このハルケギニアの歴史の中ではこの四つのルーンを持つものたちが数多く目撃されておるのじゃ。」
「え?」
「彼らは使い魔であるにも関わらず皆、人の姿をしておったそうだ。それも人間とは思えない力を持った、な。」
「それって、「サーヴァントの可能性が高い、と言いたいのかの。」・・・なっ!?」
「ほっほっ、伊達に長く生きてはおらんということかの。」
オスマンはサーヴァントを知っていた。そしてそれを知っているということは異世界の存在や聖杯戦争のことも知っているのだろう。
「君もサーヴァントとして召喚されたのなら、あちらではさぞ名のある御仁だったのじゃろうな~。」
「ま、待ってください!それなんですが・・・」
「む?」
サーヴァントを知っているのならそこは説明しなければならない。架はオスマンに自分はもともと一般人であり、英雄でもなんでもないということと、どういうわけかルイズによって召喚されたことをかいつまんで説明した。
「ふうむ、そうじゃったのか・・・。」
「このことは出来れば他言無用でお願いいたします。」
「分かっておるよ。困ったことがあればこちらも出来る限り力を貸そう。」
「ありがとうございます。」
「と言っても、そのガンダールヴについては情報が少なくての。同じ英霊なら、何か知っておるかもしれんが・・・。」
ということは、オスマンはこの学院にもう一人サーヴァントがいることには気付いていないのだろうか。なら二人のためにも不用意な発言は今後避けるよう気を付けなければ。
オスマンとの話は「今後ともミス・ヴァリエールをよろしく頼む。」という言葉で締めくくられた。
「よう、どうした相棒。こんなところで呆けた面しちまって。」
「ん、まあな。」
夜、学院のパーティ用の大ホールでは、にぎやかな『フリッグの舞踏会』が行われていた。あちこちで着飾った人たちが語らい、酒を酌み交わし、豪勢な料理を堪能していた。
そんな中、架は一人隅の方で窓から外を眺めていた。
「少し、昔のことを思い返してな。」
「記憶が戻ったんだろ。何だ、元の世界に帰りたくなっちまったのか?」
「・・・俺は」
架が何か言おうとした時、ホールにファンファーレが響き渡った。
『ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおなーーりーーー!!』
という衛士の声と共に会場入りしたのは薄い桃色のドレスを着飾ったルイズであった。その可憐な姿に普段は彼女を小馬鹿にしている生徒たちは男女問わず感嘆の声を上げ、男子たちは次々にルイズにダンスの申し入れをしている。それらを断りながらキョロキョロと会場を見渡していたルイズだったが、架の姿を認めるとこちらに歩いてきた。
「おう、馬子にも衣装じゃねえか。」
「う、うるさいわね!」
デルはそんなことを言っていたが、架の方はというと正直見とれていた。いつもは下ろされている桃色の髪は後ろに結い上げられており、普段の横柄さはナリを潜めて優雅な雰囲気を醸し出している。正直、ここまでドレスが似合うとは思っていなかった。
「よく似合っているぞ、ルイズ。」
なのでここは素直な感想を言っておく。ルイズも照れたように「あ、ありがとう。」と返した。
すると、会場の照明が変わり音楽が流れてきた。会場にいた人たちは男女で手を取り合い音楽に合わせ踊り始める。
「ルイズも行ってきたらどうだ?」
「え、ええ。そうね・・・」
とは言ったものの、ルイズはその場から動こうとしない。というか、モジモジとしながら視線を逸らすその様は、明らかに何か言いたそうだ。架が「?」を浮かべていると、やがて決心したようにすうっと息を吸って、
「・・・・・てもよくてよ。」
「ん?何だって?」
「だ、だから!踊ってあげるって言ってるの!!」
その怒鳴り声を聞くと、どれだけ着飾ってもやはりルイズなのだなと思ってしまう。苦笑交じりに、「いいのか?俺なんかで。」と聞くと、「今日だけだからね!」と言いそして
「私と一曲踊って下さいませんこと、ジェントルマン。」
ドレスの裾を両手で持ち上げ膝を曲げると、恭しく架に一礼した。
その姿に、ダンスが大好きであった茜の存在をまたしても思い出してしまう。
――――本当に、この二人はよく似ているな。
前々から感じていたことだが、ルイズは時々茜を連想させる。下手をすれば、もう二度と会うことも出来ない彼女がとても身近に感じてしまう。
そう思うと、今更になって懐かしさや一末の寂しさなどいろいろな感情が自分の中に押し寄せてきた。思わず、目を手で押さえながらクックと笑い声を漏らす。やがてその手の隙間からは一筋の涙が流れてきた。
笑われたと思ったら今度は泣きだしたりでルイズは怒ったり慌てたりと、そんなやり取りがしばらく続いた。
「全く、驚かさないでよね。」
「いやあ、悪い悪い。」
あれから数分たち、ようやく落ち着いた架はプンスカ怒るルイズを苦笑まじりに宥めながら音楽に合わせて踊っていた。
まったくもう・・・と呟きながらルイズはあることに気付く。
「それにしてもあなたダンスも出来るのね。どこかで習ってたの?」
「え・・・いや、まあ、その」
見た感じから、あまりダンスの経験がないと思っていたルイズだったが、架は思ってた以上に上手く踊れていた。曲のテンポは割と遅く決して難しいわけではないが、それでもキチンとルイズの動きについていっている。
しかし、架は歯切れが悪そうに答えた。
「どこで習ったかって・・・・・まあ強いて言えば現在進行形で、かな~。」
「・・・へ?」
よく見ると架は顔を動かさず、視線だけをあちこちへ向けている。その視線の先には他の踊っている組、それも比較的上手な人たちだ。さらに、マスターとサーヴァントの繋がりからか架が魔力を使っているのが感じられた。つまり・・・
「あ、アンタ、まさか・・・」
「ああ、これも『模倣』だよ。はっきり言って、踊りなんてやったこともない。」
相手の技や動きを真似する『模倣』。まさか戦い以外でこんな使い道があったとは・・・。器用なものね、と思うルイズだったが、でもと考える。
架は自分の力は他人を真似たものであって自分自身のものじゃないと評価している。けれど、ルイズはそうは思わなかった。
確かに、最初は真似ただけかもしれない。でも次からは架はその技を使いこなしている。今だってそうだ。見よう見まねの動きだった踊りは徐々に慣れていって、今ではちゃんとルイズの動きについていけている。それは紛れもない架自身の力なのだ。
だから、やっぱりアンタは出来損ないなんかじゃない・・・!!
そう言おうとするのだが、面と向かって言うのは何故か恥ずかしくなってしまう。
「ふ、ふん!仕方ないわね、次からはちゃんとしなさい。レディをエスコートするのが紳士の務めなんだから!」
結局出たのはつっけんどんな言葉だった。ただ、本人は気付いてないようだが、顔を真っ赤にしてそんなことを言われても説得力がまるでないのだが。
架もそんなルイズに「はいはい。」と苦笑しながら返す。その笑みにルイズはまた顔に熱を帯びるのを感じ、「そ、それで!」と慌てて話題を逸らした。
「昼間あなたの過去について話したじゃない?施設から抜け出したって。」
「? ああ。」
「それで・・・あの後、どうなったの?」
架が幼い頃妹を連れ施設を抜け出したところまでは聞いている。しかしそこからどうなったかはまだ聞いていなかった。
「そうだな、話したように俺たちは生き方を知らなかった。脱出してから一週間ほどたったころにはもう餓死寸前にまで追い込まれていた。意識を失いかけた茜のために必死に食糧を探したよ。でも、俺にも限界がきて倒れこんだんだ。」
「そ、それで、どうなったの?」
「まあ、知らない男に助けられた。」
その人は自分たちが回復するまで片時も目を離さず看病してくれた。歩けるようになったある日、自らの事情を説明した俺は自分たちは追われている身だ。あなたと一緒にいては迷惑をかけると言い、妹を連れ出ていこうとしたが不意に男が声をかけた。
『出ていくのは構わないけどね。そんな状態で、そいつらから逃げ切れると思っているのかい?』
逃げ切ってみせます、と答えても男はなお問うてきた。
『生き方もロクに知らないキミが?そんなんじゃ、誰も守れやしないよ。』
言い返したかったが、何も言えなかった。そして今の自分がただの強がりであることも知った。
数秒の沈黙の後、男に頭を下げて言った。今の自分には何もできない。だから、どうか生きる術を教えてくれないか。
その言葉を聞いた男はそのやや痩せこけた顔をニッコリとさせ、こう言ってきた。
『うん、これからよろしくね。なあに、おじさんと一緒にいた方が安全だよ。何せ僕は・・・
魔法使いだからね。』
それが、少年少女二人の人生が大きく変わった瞬間だった。
「あの人は本当にいろいろ教えてくれたよ。字の読み書きから始まって、お金の計算、食べ物の種類や食べ方、道具の使い方・・・数えだしたらキリがない。皆には当たり前にできることが俺たちには新鮮そのものだった。」
さらにあの人はさまざまな場所にも連れて行ってくれた。海というのを初めてみた。緑豊かな大自然も見せてくれた。大昔の皇帝が建てたという巨大な宮殿も見た。幼い妹が「前いた『おうち』より大きいね!」と言ってきたときは二人揃って顔を引きつらせたけど・・・。
とにかくあの人と出会ってからのおよそ一か月は考えられないくらい濃いものだった。そして自分たちのいる世界がとても広く、綺麗なものだと知った。
そんな中意外だったのは、男は行く先々でまるで子供ようにはしゃいでいたことだった。彼曰く、『楽しむときは思いっきり楽しまなくちゃ』らしい。
「それとな、実は俺たちの名前はその人につけてもらったんだよ。」
「えっ、そうなの!?」
『そういえば、君たちには名前がないね。ふうむ、どうしようか。』
ある日の夕方、草原に寝そべりながら男はふと呟いた。両サイドには自分たちが同じように寝転がっている。それまではずっと近くにいたため、特に名前で呼び合う必要もなかったが、名前がないと不便なのは確かだった。
自分があなたにつけて欲しいと言うと男は『う~ん、困ったねえ・・・』と言いながら、ヨイショと身を起こした。そして夕焼けを眺めながら、『茜色の空かぁ・・・』と呟いた。そして妹の方を向き、
『よし!君の名前は茜ちゃんだ!』
妹―――茜は喜んだようで、立ち上がってキャッキャッと走りまわった。その様子を見ながら『君はねえ・・・』とこちらに言った。
『君は、あの子を守ると言っていたね。つまり、君はあの子の未来へと繋ぐ架け橋となるんだ。だから・・・』
―――――架
それが、俺につけられた名だった。大雑把なつけ方ではあったが、それでも嬉しかった。
男と出会ってから一か月と少し経った頃、男は突然俺たちの前から姿を消した。当時寝泊りしていた家には置き手紙があった。
『息子の顔が見たくなったので帰ります。僕は日本という国にいる。もし会いたかったら冬木市という場所を訪ねなさい。君たちなら、僕の息子・・・士郎とも仲良くなれるだろう。この一か月はとても楽しかったよ。ありがとう。』
「それから数年後、俺たちは日本に渡った。当然あの人に会うためにな。」
だが結局、それが叶うことは出来なかった。男は、既に亡くなっていたのだ。架と茜はその後、性を「影沢」とし冬木市に住まうことに決めた。自分たちが望んだ穏やかな日常を過ごすために。
「まあこれが、昼間の話の続きかな。」
「そう・・・。」
今に思えば、あの人は自分の死期を感じていたのだろう。だから、架たちのもとを去ったのだ。最期の時を、血は繋がっていなくとも確かな繋がりはあると誇るように言っていた家族と過ごそうと・・・。
「それで、その・・・」
「ルイズ?」
「カケルは・・・帰りたいの?」
ルイズが恐る恐る尋ねた。ルイズの中ではきっとカケルは「帰りたい。」と答えると思った。それだけ想いれのある人たちがいる世界なのだ。帰りたいに決まっている。何より架を異世界に呼び出してしまったのは他でもない自分なのだ。
けれど・・・、架の口からそれが出るのを考えるとなぜだかとても怖かった。自分をマスターだと言ってくれた彼がまたいなくなってしまうのを考えると・・・。
「バ~カ。」
「・・・ふえ?」
考えに浸っていたルイズは、かけられた声につい間抜けな返事をして顔を上げる。目の前には架の呆れたような顔があった。
「バ、馬鹿とは何よ!私はねえ・・・!」
「ルイズ、俺の言ったこと、もう忘れたのか?」
「・・・え?」
「確かに帰りたい気持ちがないわけじゃない。茜に会いたい、守ってやれなくてごめんって謝りたい。でも、まずやるべきことが出来た。」
「やるべき・・・こと?」
「俺はサーヴァントとして召喚されたんだ。だったら、主に仕えるのは当然だろう。言ったはずだ。お前を守ると、俺は他の誰でもないルイズのサーヴァントなんだと。」
「・・・・・。」
その言葉にルイズはまた泣きそうになった。嬉しかった。帰りたいと言わなかったからではない。彼がこのまま自分の傍にいてくれると分かったことが堪らなく嬉しかった。
それを言おうとするも、またしても恥ずかしくなり、「あ、ありがとう・・・」と俯きながらボソボソとしか言えなかった。
だが架には伝わったらしく「ああ。」と返事が聞こえてきた。そして突然思いついたようにある提案した。
「ルイズ。折角だ、誓約を交わそう。」
「え?誓約?」
「ああ。俺のいた世界で俺のよく知るサーヴァントがマスターと交わしたらしい誓約だ。」
丁度その時、演奏が終わった。ああ、そういえば自分たちは踊っていたんだっけ、とルイズがボンヤリ考えていると架はルイズから手を放し、一歩下がる。
そして、徐にその場で跪いた。
「えっ!?・・・ちょ、ちょっと、カケル!?」
突然の架の行動にルイズはあたふたと慌てた。周りの人たちも何事かと見守る。
しかし架はそれに構わず続ける。
「これより我が剣は貴女と共に在り、」
その光景は、まさしく美しい一人の姫君と忠誠を誓う一人の騎士の姿であった。
「貴女の運命は私と共に在る。」
その輝かしい情景に誰一人として口を挟むことなどできず、二人を見守った。
「此処に契約は完了した。」
今ここに、本当の意味で主と使い魔の契約が成された。
「貴女が―――――私の、マスターだ。」
後書き
第一章終了です。
「ゼロの使い魔編」では、こんな風に原作になぞらえつつ、サーヴァントを出していこうと思っています。次は何のクラスがでてくるのか、真名は何なのか、マスターは誰なのかなど考えながら読んで楽しんで頂けたら幸いです。(原作のどこまで行くかは未定です。また、マスターがオリキャラの可能性もあります。)
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