神葬世界×ゴスペル・デイ
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第一物語・前半-未来会議編-
第一章 時の始まり《1》
前書き
キャラクターとか小説なのに多く登場します。
更に独自の世界観があるため、非常に解りにくい事があると思いますがご了承下さい。
随時設定を投稿しますので、コメントをして下さったら設定に記入させて頂きます。
遥か昔、地球と呼ばれた星は超規模天変地異「終焉」により滅びた。
人々は住む星を無くし、三千世界を巡り、やがて異界へと助けを求めた。そこで人類は多くのことを学び、何時かは自分達の星に帰れることを願っていた。
幾年の時が過ぎ、人類は地球と呼ばれた星を目指した。
想像した星の姿は、緑が生い茂るありのままの自然の世界。だがそこは、想像していた星とは違う光景が広がっていた。
地形は全くと言っていい程までに変わり、地には緑ではなく、人類にとって有害な生物が蔓延っていた。
しかし、人類は自分達の技術には不可能は無いと誇りを持っていた。
その誇りに応えるかのように、人類の技術は数年という短い期間で人類の生活圏を開拓し、有害生物を外へと追いやっていった。
そしてある日、人類は「流魔」という全ての始まりとされる祖源体を発見し、これを最大限に利用した。
順来のエネルギーには限りがあるが、「流魔」にはこの概念は通用しない。
使えば使った分の量だけ「流魔」を放出し、この星に流れる「流魔」の量を一定に保つ、まさに魔法のようなエネルギーだった。
ただし、それが人類にだけに味方するモノだったのなら。
何時ものある日、一瞬流魔の異常放出を確認したが人類はこれを危険視しなかった。
そして突如、流魔が多く流れる流活路から異常なまでの大量の流魔が地上に放出された。
高濃度の流魔を浴びたものは全て突然変異を起こし、人は人ではなくなった。
人類は初めて流魔を危険視し、再び三千世界へと退避しようと考えた。が、その考えは甘かった。
星から離れるための人工物は、今となっては流魔を主としたエネルギーで動いている。
それを高濃度の流魔のなかで動かしたらどうなるかは、既に考えた時点で解り切っていた。
人類は「終焉」の再来と嘆き、犠牲を出しながらも逃げ続けた。
逃げ延びた果てには何もかもを失った人類は絶望し、その時を狙ったかのように高濃度流魔のなかからは有害生物が弱った者を次々と喰らう。
それでも生きることを願う人類に、この世界の 神々はかつての人類を感じた。
「終焉」により救えなかった人類に神々は今償おうと決め、神々は人類に告げる。
“我らとの約束を結ぶことで、生きる力を与える”と。
その日を境に、この星の神々は葬|(はぶ)り祀られるようになった。
救われた人類は、限られた土地のなかで国を創った。
時代が進むにつれ、失われたと思われていた過去の情報は少量だが見付かるようになり、人類はこの星と運命を共にするようになった。
「終焉」以前の世を崩壊世界、その後の世を創生世界と呼び。人類が生活出来無い地域を崩壊区域、人類の生活圏内を創生区域と呼ぶようになった。
時が進むにつれ、崩壊世界の宗教と呼ばれるものを元に、各国では宗譜|《スコア》と呼ばれるものをつくり、人々をまとめあげた。
神々と共に生きる人類は、休息を取るように長い間平凡な日々を過ごしていた。
だがある日、人類は考えてしまった。
――この世界を実効支配出来無いものかと。
その日から人類は終わり無き争いを始めた。
●
世界時暦一〇八二年、四月一日。
空には雲が流れ、肌を撫でるような風が吹く。
青く晴れた空の下、大小様々な建物が並んでいた。
山々に囲まれた盆地のなかに一つの町が見える。
幾つかの区域に分かれているのか、町は四角形を並べたような形をしている。
まるで何かに乗っているように、規則正しく。
区域を分けるように間には、幅約二十メートルの大道が一直線に縦横と通っている。
幾つもある区域の一つに“日来学勢院高等部校舎”と書かれている時計塔が建っていた。
時計塔の針は、午前八時三十分を指していた。
日来学勢院の昇降口には校舎のなかに入る学勢が数名いる程度で、他の学勢は見当たらない。しかし、昇降口の正面に見える校庭に二十名くらいの学勢達が集まっている。
校庭に集まっている学勢達は、それぞれが好きなことをして暇を潰していた。
「それにしてもよくクラスの大半以上が集まったね。何時も遅刻一分前集合が当たり前のこのクラスなのに」
「君が言えたことじゃないだろう。ところで毎回変な台詞言いながら、咲先生の前通るの止めた方がいいよ。あれ病気だと思っているからね」
「お前が言えたことでもないだろ。毎日巨乳の学勢を数えているのは等々変態紳士から更なる昇格でも狙う気か?」
「巨乳は僕の全てさ。語ること他に無し」
「どうでもいいけどさ、君達、残り五人知ってる人いる?」
映画面|《モニター》に文字を打ち込む男子学勢の問いに、周りの学勢達は――
いないのって誰だっけ?
うち、知らないヨ。
それはゲームのことかっ!
価値の無い話は知らん。
お金に関係無いなら私も知らないかなあ。
お前らなあ……。
などと、口々に言う。
そんななか、皆を見て問い掛けをした学勢の元に、一人の女子学勢が胸に細身の女子学勢を押し付けてやって来た。
「皆、知らないみたいだから私が教えてあげるわ」
「私は知っているぞ」
「お黙りペタン子。私しか知らないの、いい?
わ・た・し、しか……知らないの!」
「わ、分かったから明、美琴をそんなに胸に押し込むな。もがいてるぞ」
胸に押し込まれている美琴が、苦しそうに首を左右に振っている。
その度に胸が激しく揺れ、灯はそれを逆に楽しんでいた。
「んっ……そんなにもがいたら興奮しちゃうじゃない。っあん!」
「いい加減にしろ」
飛豊は悪ふざけが過ぎる灯に軽く拳を食らわし、もがいていた美琴を引っ張り出す。
見ていた少年は呆れて、口からため息を漏らした。
「あのさ、どうでもいいから誰かぐらい言ってよ。主席確認は覇王会戦術師である僕の役目なんだから」
「だったら自分でやれ、と。ってこれ旨いですなマチョラ君!」
「チッ……黙れ、家畜豚」
「い、今、家畜豚って言いましたな!? 自分これでも五十メートル走八.五三秒、レヴァーシンクよりも約一秒も違うんですけど!」
巨漢な学勢と弁当を食べていたぽっちゃりな学勢は、口に入れた米を飛ばしながら長々と言葉にならない言葉を喋っていた。
「切りが無いな。明、さっさと言ってやれ」
「仕方無いわね。いないのは機関部三人組、後はお調子巫女と馬鹿長だけよ」
「了解」
そう言い、レヴァーシンクは映画面に映る名簿にチェックを入れる。と打ち込んでいる時、校舎の方から声が聞こえてきた。
「皆さーん、おはようございます」
スカートをなびかせ、手を振りながら女性教師がこちらに向かって走って来た。
後から髭をなぞるように弄る中年の男性教師が、数歩後ろをのんびりと歩いている。
傍から見れば、ただのおじさんにしか見えない。
「おや、殆ど来てないと思ったら集まってるなあ。俺って必要無い?」
「いえいえ、榊さんがいるだけで肩の荷が下りますから」
「それ俺に責任押し付けるってこと?」
「ち、違いますよ!」
否定する咲を榊は面白そうに笑う。
運ぶ足をゆっくりとし、早歩きから普段の歩きに変える。
咲は今いる自分が担当する組の学勢達を見て、心中ほっとしていた。
それにしても、何時も遅刻寸前のこのクラスですけど、この日だけは違ったようですね。
感心する咲に、レヴァーシンクは今いる学勢を報告する。
時計塔の針は四十分を指そうとしていた時だ。榊の後ろから、三人の学勢がこちらへ向かって歩いて来た。
「……随分と集まってるな……」
「ほんとだねえ、珍しいこともあるもんだ。機関部よりも早く集まるなんて……変なこと起きなきゃいいけどね」
「美兎が見当たらないね、それに長も」
校庭の芝生を踏みながら、煙管をくわえた女性学勢とふて腐れたような顔をしている男子学勢、帽子を被った同じく男子学勢は既に集まっていた学勢のなかに加わる。
山に囲まれているため、町には日の光はまだ充分には当たっていない。ここも外交区域の建物が、日を遮るように立っているため同じだ。
そんななかで咲は、自身が受け持つクラスの皆を確認する。
「機関部の三人が来たので後は幣君と長莵さんだけですね」
「そこで再び私の登場――!」
咲の前に、突然と明が登場する。
地に着きそうな長い髪を振りながら、皆の視線を自分へ集める。
「お調子巫女は朝に馬鹿長迎えに家に向かって行ったわ。それを偉いわね、て褒めたら顔赤めて全力疾走。あれは襲う気よ! あの馬鹿長、元カノいる分際で調子乗ってると思わない? ね、琴姫」
「え? う、うん」
「美琴、そこは否定するところだろうに」
「あっ、いけない」
煙管をくわえた女子学勢、入直の言葉に美琴は顔を赤めながら、飛豊の後ろに見える顔を引っ込めた。
「それにしてもあの二人は遅いな。一体何をやっているのだ」
「トオキンてば遅い遅いうるさいナ」
女子学勢が機竜の鎧甲を蹴っているが、当の機竜は、やれやれ、と言うように頭を掻いている。
ここで学勢院のチャイムが鳴り、バラバラだった学勢達は咲の前に集まった。
少し話を入れながら、
「空子、戦闘の準備はいらないからな。外交とは言え、さすがに今回は襲われないだろうから」
「はいヨ。でもうち、何時でも行けるようにしとくからナ」
「彼方がどう出るか気になるね」
「兄ちゃん、それ嫌でも分かると思うんだよねえ」
「最悪どうなるか予想しているのか? アストローゼ」
「当たり前だ。 価値あるものにはならんがな」
学勢達は言葉を交わし意思を伝える。そして、白い息を吐きながら意思を受け取る。
その時だ。校門の方から二人の学勢が走って来た。
長髪の女子学勢が後ろから走って来る、フード付きの制服を着た男子学勢の腕を掴んで、引っ張るように走っている。
静まり返った校庭に二人の会話が響いた。
「おいおい、そんなに引っ張ったら一本しかない腕が千切れるって」
「人間の腕はそう柔では無いので簡単には千切れませんから。もう、こんな大事な日に寝坊だなんて信じられませんよ」
「仕方無いさ。夜遅くまで想い人のこと考えてたんだから」
へらへら笑う少年に、美兎は焦りの色を隠せないでいた。
何時も呑気でいられると、相手にするこちら側が困ると感じた。
セーラン君は何時も笑ってますよね。さすがに今日は遅刻はしないと思ってましたが、それはなかったみたいです。
はあ、とため息を付く美兎をセーランは笑顔で見ていた。
二人の足音が校庭に響く。
息を切らせながらも美兎は無事、セーランを連れて来た。
そのセーランは息も切らせもしないですぐに歩き出し、二人の教師に手を挙げることで挨拶をした。
二人の教師を越えた先。集まっていた学勢を見渡し、こほん、と咳払いを入れる。
「えっと、美兎のお陰でこうして来られたわけだが。――何やんの?」
「「知らないのかよ!」」
皆はツッコンだ。
知らん、と答えるセーランに呆れてものも言えない。
大声に釣られてか、校舎から教室の窓側付近に座る者達が外を覗き込むように見ていた。
「じゃ、じゃあ確認と学習も兼ねて、皆さんも聞いて下さいね」
咲はそう言い、右手を左に寄せ、素早く右に振り映画面|《モニター》を表示する。
それを拡大させ、学勢達の方に向けた。
映画面には簡略化された神州瑞穂の地図が映っている。
地図には奥州四圏と表示されている場所と、日来と表示されている場所に分かれていた。
咲は奥州四圏の東側を指差し、
「今日はこの奥州四圏の辰ノ大花と日来の存続に関わる話し合いをするわけですね。
前にも言いましたが、人類は外交と軍事を主とする社交院と、学業と治安を主する学勢院とで分かれています。これは限りある創生区域での人口の飽和を避けるため、少ない人数でやっていけるようにしたものですね。
社交院は原則として学勢院に手出し出来ません。それはこちらも同じです。しかし、その原則を“常に”破れるのが各地域の学勢院に設けられた覇王会と、社交院のトップ数名です」
別の映画面を出し説明を続ける。
新たに出された映画面には、覇王会と表示され、各職務が表示されていた。
学勢達は教師の話しを、口を開かず大人しく聞いていた。
「覇王会は元々学勢院の軍事を指揮する組織でしたが、それが発展して、学勢達の意思を無視して行う政治に介入出来る組織となりました。
今回もそれに当たります。ですから実際は社交院の方が行う筈でしたが、現覇王会会長である幣君の意見により社交院の代わりに私達、三年一組が行うわけです」
ふう、と息を吐き一息付く。
長々と話すのは慣れていないものでキツい。だが、これからのことを考えると弱音は吐いていられない。
前半はこれで終わりですね。後半もこの調子で行きますよ!
最初に出した映画面を前に持ってきて、宙を撫でて奥州四圏の文字を赤で囲む。
皆は赤で囲まれた部分に注目し、顔をそこへ向けた。
「日来は今、存亡の危機に立たされています。何故なら、神州瑞穂の主戦力である奥州四圏全地域からお荷物扱いされてるからです。
そこで奥州四圏は他勢力群|《イレギュラー》から、古くからの貿易相手である調と呼ばれる貿易艦隊と日来を取っ替えっこしようとしているわけですね。日来に住んでいる私達にはとんでもない話しですから、今回は奥州四圏から最も日来と交友関係を持つ辰ノ大花の覇王会と話し合いをするわけです」
まだ冬を感じさせる冷たい風だが、話して火照っているせいか心地好い。
時間も経ち、今は日が昇って日来の全てを照らしている。
眩しそうに目を細めている学勢もいる。
学勢達を瞳に映し、言葉を続ける。
「ですから私達は、何としてもこの話し合いを成功させなければいけないのです。
いいですか? これは遊びじゃないんです。日来の今後の未来が掛かっているんです。私は貴方達のことを信じていますよ」
「そう言うことだ、分かったかな諸君」
「「お前がだよ!」」
皆はセーランを指して、またツッコンだ。
俺? と言うように、セーランは自分を指す。
本当に大丈夫なんでしょうか……。
映画面を消していて咲は思った。このクラスの学勢は変わり者ばかりだと。
彼らに限った話しではないが。
「まあ、見守ろうじゃないか」
「読心術ですか!?」
「見れば解る」
見透かされたような言葉を言われ、咲は心底驚いた。
今、自分の目の前にいる学勢達が今後の日来の運命を背負っている。
崩壊世界では学勢達に、こんな重い責任を背負わせないんですけどね……。
咲は自分の担当するクラスを、心配そうに見詰めていた。
何一つ取り柄の無いこの町だが、ここは彼らを受け入れてくれた。
世界では様々な事情を抱え、祖国から離れる者は少なくない。日来は、そんな者達が最後に行き着く場所。
だからここの住民はお節介が大好きで、仲間を犠牲にすることは絶対にしない。誇れるとしたらそこだろう。
日に照らされているこの町は、このままで終わりへと進んでしまう。今、馬鹿騒ぎをしている学勢達はそれを防げる最後の砦。
日来覇王会会長である彼が何を考えて、社交院と交渉したのかは、咲や周りの者達の殆どが知らないだろう。
しかし彼は、社交院と交渉した時に確かにこう言ったらしい。
″身近にあるものくらいは救ってやる。何かが欠けてる俺達だけど、それくらいは出来るからさ″、と。
そして今、彼の声が聞こえる。
皆を頼るように、自身を奮い立たせるように。
「まあ、難しい話は後にして、いっちょ救いに行こうぜ。俺達を終わらせないためにもなあ!」
「「了解!」」
セーランの言葉に、腹から声を出し皆は答える。
今、彼らは外交区域学勢領に向かい歩いて行く。セーランを先頭に、それぞれが彼の後に続いて。
日が射す道を、彼らはただ歩く。
そんな彼らを見送る者はいない。ただ、沈黙がその場を支配していた。
だが全ての始まりは静かに、しかし確実に始まった。
後書き
今回は物語の始まり始まりの部分です。
まあ、分からないところ、気になるがあるなら許容の範囲内で説明致します。
出来無い場合もありますので、ご了承下さい。
次回は奥州四圏の辰ノ大花とのお話。
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