宇宙世紀UC外伝 もう一つのUC計画
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脱走
前書き
いきなりです、ええ。書いたら止まらなくなりました。
何方か番外個体の名前を決めてくれんかなぁ。
「ナナイ、サイコフレームの搭載部分について聞きたい。データを見せてもらっても?」
「いいわよ。ていうか前にあなたにデータベースの閲覧許可をあげたでしょう」
そうだったか?と男の方、名はカペルという−−−−−−が言うと、ナナイはため息をついて自身のタブレットを操作、パスワードを解除して極秘データであるサイコフレームのデータを表示してカペルに手渡した。
「私は大佐のところに行くわ。あなたもそろそろα・アジールのパイロットのとこへ行きなさい。彼女の世話はあなたの役割よ」
「わかった」
カペルは頷くと目の前に立つ巨人を見つめた。赤いずんぐりとした巨体。傍にあるシールドも大きい。そして新開発のビーム切り替えが出来るビームショットライフル。さらにビームアックス、までもが置いてある。
じっとそれを見つめて、カペルはサイコフレームの搭載場所を決めた。はめ込まれたようになっているサザビーのコックピット周りと四肢の関節。これでレスポンスが上がるだろう。傍にいたメカニックにそれを伝え、カペルはそこを後にした。
一方その頃ナナイは。
「大佐、そろそろニュータイプ研究所に行くお時間です。準備をよろしくお願いします」
それを聞いたスーツを着た、金髪の男、シャア・アズナブルは振り返るといきなりナナイに抱きついた。
「大佐。今はこうしている時間はありません。帰ったらお相手致しますので今は準備を・・・・・・」
ナナイはそう言うと気づいた。シャアの体が震えていることに。ナナイはシャアを受け入れると、どうしたのです?と聞いた。シャアはゆっくりと口を開いた。
「α・アジールのパイロット・・・・・・プルシリーズの生き残りである彼女は、一体何者なのだ?私が寝てるうちに、ララァが出てきた。彼女と共に」
プルシリーズは強化人間。身体能力、反射神経共に優秀だ。そして産まれながらニュータイプのような能力を手に入れている。しかし、ニュータイプの夢の中に出るほど影響力はないはずなのだ。
「・・・・・・カペル中尉に確認するよう言っておきます」
そう言って一旦外に出ようとすると、シャアは再びナナイを止めた。
「ナナイ、それを伝えるついでに彼にここに来るように言ってくれ。そろそろ計画の内容を彼に伝えるべきだろう」
「了解しました」
そう言ってナナイは外へ出た。
「よう、番外個体。もう立派な大人だってのに、まだ引きこもってんのか?」
カペルはプルシリーズの中でも最高の性能を示しながら、歴史の闇に葬られた個体、番外個体を見た。その瞳は無気力で、髪は伸びっぱなしで周囲には本が錯乱している。カペルは本を整理しながら、話を続けた。
「いい加減、俺たちに力を貸してくれんかね。組織もお前をずっと面倒できるほど、大きい器は持っちゃいない」
それでもワーストは無言だった。カペルは周囲の本をまとていると、6枚の絵を見つけた。
「こりゃぁ・・・・・・貴婦人と一角獣か?」
それをまじまじと見ていると、今まで動かなかったワーストが顔を赤らめながらカペルの手にあったその絵をとった。突然動き出したことに驚いていると、ようやくワーストは口を開いた。
「・・・・・・お前はどれが好き?」
「そうだな・・・・・・。À mon seul désir。我が唯一つの望みにかな。未だに望みはわかってないしよ、そういうのを考えんのロマンがあると思わねぇか?」
そう言うと今度はワーストは微笑んだ。そのことにまた驚いていると、ワーストは再び話し始めた。
「私はね。幸せになりたい。戦争をやるんじゃなくて、誰かに嫁いで、幸せな家庭を持ってみたい。戦うためだけなんて、辛いから」
「・・・・・・そうだなぁ、いつか・・・・・・そういう時代が来るといいよなぁ。だけどさ、平等じゃねんだよこの世界は。大佐はそれを正そうと頑張ってんだ。だからよ、力を貸してくれねぇか?」
そう言うとワーストは途端に悲しい顔になった。
「お前は優しい人。みんなのことを考えている。私のことも。けれど、シャア・アズナブルの計画を知ったら、貴方は・・・・・・」
「計画?そりゃどういう・・・・・・」
言おうとした時にナナイが部屋に入ってくる。
途端にワーストは身を固めて部屋の奥へと行ってしまった。
「おい、ナナイ聞いてくれよ!あいつ始めてしゃべったんだぜ!?不思議な感じだっけどよ、あいつはいい奴だ!鍛え抜かれた俺の勘がそう言ってる!」
興奮した様子でカペルがナナイに詰め寄るとナナイははいはいと適当に流し、奥に引っ込んだ番外個体を見た。番外個体は目に恐怖を浮かべながらナナイを見つめていた。
お互いに見つめ合い、番外個体が更に奥まで行ったところでナナイは舌打ちした。それを訝しげに見ていたカペルは舌打ちの音を聞き逃さなかった。
「・・・・・・ナナイ」
「何?」
「お前・・・・・・番外個体に」
何かしたか?と言おうと足を動かしたところで、カペルは床に落ちていた紙に足を滑らせて盛大にすっ転んだ。それを見たナナイは即座に引き上げるようにして、顔をカペルの顔に近づけ、耳打ちした。
「大佐がお呼びだ。この後、すぐに大佐のお部屋に来い」
「・・・・・・?」
このタイミングで何の用なのか。番外個体に力を入れろと言ったのは、何を隠そうシャア・アズナブル、我らの総帥その人だ。
そう思ったがカペルは素直に言うことを聞いて立ち上がった。
ナナイが先に室内から出ていく。それを少し見てタイミングを見計らい、カペルはチラリと番外個体を見た。自身には夢があると言う強化人間を見た。
「すまないな。急用ができちまった。これから大佐のとこに行ってくる。・・・・・・また、後でな」
このタイミングと番外個体が言っていた大佐・・・・・・シャア・アズナブルの計画とは一体、なんなのだろう?頭の中でそれを考え続けながら、カペルは番外個体の部屋を後にした。
カペルside
番外個体の部屋から大佐の部屋は意外なほど近い。大佐は番外個体が望んだものを全て買い与えていると言う。あのタペストリーもそれだろう。どうでもいいことを考え、ナナイの背中を急いで追いかけると、すぐに大佐の部屋に着いた。
「大佐ぁ、失礼しますよ。御用とはなんでしょうか?」
適当に敬礼すると大佐は笑って堅苦しいのはいいと言ったので、俺は素直にその言葉に甘えることにした。ナナイは気に入らなかったのか呆れたような目でこっちを見る。
「で、話ってのは?」
大佐はその顔に微笑を作り、こちらを見つめた。凄まじいプレッシャーがこちらに向けて放たれている。なんでこっちに向けられてるのかはわからなかったが、ナナイは飄々とした顔をしていることから、どうやら俺一人に向けられているようだ。
「・・・・・・大佐」
「なんだね?カペル中尉」
「俺なんか悪いことしました?プレッシャーがキツいんですけど」
大佐はすぐにプレッシャーをとくと、こちらに褒め言葉を送ってきた。
「さすがだな、墓守。その腕、鈍っていないようだ」
その顔を見て一気に力が抜けた。真面目に殺されるかと思うレベルのプレッシャーだった。口調を一年戦争当時のものに戻して赤い彗星に言った。
「勘弁してくださいよ、赤い彗星。今はあの頃ほどの腕を持っちゃいません」
「そうかな・・・・・・?シュミレータとは言え、君は唯一私を墜とした男だ。彼奴のように・・・・・・」
途端にその顔が強張った。その顔は誰かを待っているように見えた。それは、ジオンの軍人なら誰でも知っている男だろう。優勢だったジオン軍の流れを、たった一機のモビルスーツが悲劇の流れに変えてしまった。
連邦の白い悪魔と呼ばれたモビルスーツ『ガンダム』と当時十六歳だった、現在は連邦の主力部隊ロンド・ベルで白き流星の異名を持つパイロット、アムロ・レイ。赤い彗星は一年戦争の頃よりその決着を望んできた。
「すまなかったな。話を戻そう。これから君に話すことは機密事項だ。外部には漏らさないことを約束してくれるね?」
「え、ええ・・・・・・」
いつになく真剣な大佐の顔に、俺は少したじろいだ。大佐が話を開始した。地球に縛られたアースノイド、憲法すらろくに確立していないスペースノイド。人類をニュータイプとして宇宙に上げるため、大佐は驚きの計画を口にした。
「地球に巣食う地球連邦のウジ虫どもを一掃するために、アクシズを地球に落とす・・・・・・!!」
その計画は、偽りの政治取引をして連邦の管理下に置かれている小惑星アクシズを入手し、ルナ2で奪取する予定の核ミサイルを搭載、それを地球へと落とす。しかも前座として5thルナを落として、地球の人々に宇宙に上がってくるように警告するのだそうだ。
が、核ミサイルを積んだ5.3キロの物体を地球に落としたらどうなるか。
答えは簡単、核の冬がやってきて、生物は死に絶え、誰も住めなくなる。
それが本当にスペースノイドのためになるのか、真の平和を呼ぶことができるのか。
「大佐。いや、赤い彗星………!!」
「どうやら俺は付き従う人を間違えちまったようだぜ………!!」
そのまま赤い彗星に殴りかかると、後ろからがちゃりと何かを抜く音が聞こえ、振り返らずに後ろに目をやれば、ナナイが銃を構えて頭部に突きつけていた。
「やめなさい、カペル。一旦頭を冷やしなさい」
「冷やしてられねぇよ、ナナイ………その様子じゃお前も知ってたようだな。お前はそれで本当の意味で平和が来ると思ってんのか?」
ナナイは何も答えなかった。しかし、銃は降ろさずに淡々と言い放った。
「カペル・グラウス中尉。貴官を本日付で番外個体管理役から外します。そして、今日一日、頭を冷やしなさい」
俺はそのまま退室させられ、自分の部屋に押し込められた。
時間が許す間、必死に考え続けた。本当に赤い彗星がそんなことをするのか、もし行った場合の、その後の地球のことは考えているのか。
人類全てをニュータイプに。そうすれば、確かに理想的な世界となるかもしれない。だが、それまでにかかる犠牲者の数は恐ろしいこととなるだろう。
―――――――――それで本当に平和へと近づくのか?
いや、この計画では確実に平和など来ない。地球に残った人々同士で戦争が始まるだろう。
決断してからの行動を早かった。部屋の中にある拳銃と手榴弾を持って、ドアを解錠するとそこには。
「カペル中尉?どこに行かれるのですか?」
ジオン兵が目の前にいた。
………ナナイか!
ナナイがこちらの動きを封じ込めるために、送り込んできたのだろう。
「すまん………!!」
銃床で思い切り頭を叩く。兵はくぐもった声を出して気絶した。兵が持っていたアサルトライフルと弾倉などを全て奪い、番外個体のところへと向かう。
ジリリリリリリリ!!!
警報が鳴り響き、周囲を赤く照らした。
兵士が次々と出現し、わざと外しながら肩などを撃っていく。兵士がこちらを見て一斉に発砲した。
(既に射殺許可は与えられてるってことか………!!)
スモークグレネード、催涙弾を投げ、足止めしたところを目をつむって飛び跳ねて進む。兵にぶつかりながら。
なんとか自分が撒いたそれらを抜けると、番外個体の部屋が見えて、今日中のロック解除キーをスキャンさせて部屋に滑り込む。
「番外個体!番外個体、いるか!?」
奥で震えている番外個体を見つけ、無理やり抱き起こす。
「あ、う。怖い人たちが来るぞ………!!」
その瞬間、部屋の中に音を立てて入ってくる、球状の侵入者が見えた。
(手榴弾………ッ!?)
思い切り蹴り飛ばし、おまけで閃光弾も投げる。
(番外個体もいらねぇってことか………シャア、あんた一体何を考えてる!?)
急いでドアを閉めると、直後に爆発と閃光が炸裂したようで、ドアが凹み、衝撃で吹き飛ばされた。
今度はドアを蹴破ると、周りは黒焦げになっていた。そのままモビルスーツデッキに向かうと、兵士が何人か固まっている。
心の中で舌打ちし、肩などにアサルトライフルを叩き込んだ。全員が死んでいないことを確認し、適当なモビルスーツを探すが、頼り甲斐のないギラ・ドーガしかない。
だが、俺はそのまま奥の方へ進んだ。ギラ・ドーガよりも頼り甲斐のある機体がそこにあることを知っていたから。
連邦から鹵獲したペイルライダーとその予備パーツ。ペイルライダー自体は今、クロエ・クローチェと呼ばれる少女にトーリスリッターとして運用されている。
これはその予備パーツから作られた機体だ。ベースはグレミーの反乱時に作られた機体であるドーベン・ウルフ。そこに連邦の技術を使われ、サイコフレームの試験機として建造された。その名もフェンリル。
フェンリルのコックピットは既に開いており、番外個体にパイロットスーツを着るよう指示して、後ろを振り返る。下には数人の兵が銃を構えていた。
急げ!そう言おうとしたが既に発砲音が響いていた。頭に走る激痛。撃たれた。
「カペル!」
番外個体が初めて名を呼んでくれた。そうだ、彼女を守らねば。彼女が平和にお嫁さんになれるように。
「ッ………」
どうやらこめかみを掠めただけのようだ。パイロットシートに座り、コックピットハッチを閉じる。
「全員退け!ここから先は戦場になるぞ!!」
傍にあったビームライフルとシールドを持ち、専用のビーム・スマートガンを背部に設置する。
そう言って、兵士たちが巻き込まれないよう計算した場所へとビームライフルを撃ち、蹴破って脱出する。
「こいつはGがやべぇから・・・・・・しっかり掴まってろよ、番外個体!!」
フェンリルのおかしいところはメインジェネレーターを合わせて、機体に搭載されたジェネレーター数は実に5個という点にある。アナハイムの方から譲り受けたZ計画の中の一機。その設計データを流用しているらしい。
両肩の増加装甲の中、両足の脛。そしてメインジェネレーター。その全てがこの機体を怪物に変貌させている。
乗り手のことなど考えてもいない事が丸わかりなその圧倒的出力。全天周囲モニターにバイオセンサー。
「来るか………!!」
機体を操作して後ろを向かせる。ギラ・ドーガが前方に二機。後方のはるか遠くに一機。合計三機やってきた。
一機がビームマシンガンとシュツルムファウストを撃ってくる。機体を操作する。
着弾すれすれでそれを避け、もう一機を睨んだ。その機体はクラッカーらしきを物投げる。
バルカンでそれを撃つと、たちまちスモークが広がった。相手のビームアックスらしきものが、二機同時に煌めかせた。
「なめんなぁっ!!」
機体を強制的に上昇させ、煙を振り切る。それと同時に遠方からビームが飛来してライフルを焼いた。
「こなくそオオおおおお!!」
上昇すると巨大なデブリが画面に現れた。下のギラドーガ二機は、こちらに追いつこうとスラスターを吹かせている。
(今なら!!)
さらに速度を上げる。パイロットスーツがないため驚異的なGがそのまま体に掛かる。
歯を食いしばる。こめかみからの血が溢れ、目の前が真っ赤に染まる。デブリがすぐ正面に見えた。
「でえええええええええ!!」
姿勢制御のブースターを吹かして縦に機体を回転させ、デブリの背後へ回り、機体正面をデブリに向かせた。
突然の姿勢制御は難しかったらしく、ギラ・ドーガたちはデブリにぶつかってくれたようだ。
「セイッ!!」
掛け声とともにデブリへと蹴りを放つ。そしてシールドを投げ捨て、腰部に配置されたハイパー・メガ・ビームサーベルを二刀抜き放ち、デブリごとギラ・ドーガを蹴り抜くと共にビームサーベルで真っ二つにした。
残るは遠距離装備のギラドーガのみ。背部からビーム・スマートガンを抜き、脛のジェネレーターと結合させ、狙撃体勢をとる。
「いけるか………?」
ロックオンが完了し、ギラ・ドーガの姿が鮮明に見えた。
「狙い撃つぜぇっ!!」
ビームが収縮され、高エネルギーの弾丸としてギラ・ドーガに向かった。果てから爆発光が見え、安心したその瞬間だった。
凄まじいまでのプレッシャーがこちらに向けられているのがわかった。視界が自分の血で真っ赤に染まる中、血を拭えば赤い機影が爆発光の中から見えた。
out side
カペルはすぐさま機体を操作し、狙撃モードを起動せず、もう一度同じ場所へと向け撃った。
ギラ・ドーガの爆発光が消える頃には、新しい爆発光が見えた。
「やったか………?」
思わず口に出したその瞬間、背後から凄まじい衝撃がカペルと番外個体に襲い掛かった。
後ろを振り向けば、そこには通常のモビルスーツより大きく、見方を変えればモビルアーマーとも思えなくはない赤い巨人、サザビーが立っていた。
「シャアか!!」
「その通りだ、カペル中尉!!」
だが、なぜ?今の爆発光は一体?サザビーの背部が見えた。
標準装備であるはずのプロペラントタンクがない。
(プロペラントタンクを切り離して………!)
シャアは絶妙すぎるタイミングでプロペラントタンクを切り離し、それにビームを命中させたのだ。
(馬鹿げてやがる………ッ!!)
ビームアックスが振りかざされ、ハイパー・メガ・ビームサーベルで受け止める。
「大佐!なんであなたはあんな計画を!!あれじゃあ、誰も救えんでしょうが!」
剣戟が始まる中、サザビーが左腕のライフルで撃ち抜こうとビームを発射してくる。
「地球に巣食う腐ったウジ虫どもをどうにかしなければ、真の平和は訪れん!誰かが人柱になって実行しなければいけないのだよカペル中尉!」
ビーム同士が弾き合い、サザビーはコクピットに向けて蹴りをくりだし、その反動を利用して後退した。だがそれは、背部にある武装を解き放つためのものでしかなかった。
「ファンネル!!」
自動砲台が次々にこちらに向けてビームを撃ってくる。シールドに搭載されたドーベン・ウルフのメガランチャーを展開し、薙ぐようにしてファンネルを焼きはらったその時、サザビーがビームアックスをぶつけてきた。
ビームコーティングが辛うじてビームを弾いていたが、すぐに装甲をバターのように溶断し始めた。
騒々しい警告音が周囲に響き、俺の焦りを加速させた。
「っ、やめて!!シャア・アズナブル、私はあなたに従います。だから、彼を・・・・・・!!」
番外個体が叫んだ。シャアもそれを叫んで返した。
「女が男の戦いに入ってくるな!!」
番外個体の思念が押し返されたのを感じた。カペルの怒りは頂点に達した。
「俺に応えろよ、フェンリル!!」
機体が動いた。フェンリルはコクピット周りに埋め込まれたサイコフレームから水色の燐光を噴出させた。
せり出してきたサブモニターに、そのシステム名が表示された。
《HADES》
リミッターをかけなければいけないそのシステムのリミッターを解除し、機体はさらに水色の光をその身に宿し、強めた。
「行くぞ、シャア!!」
機体を動かすと瞬間移動かと思うほどの加速を見せ、急停止するために奥歯を噛み締めた。
サザビーが追いかけてくるが、この速度にはついてこれないようだった。
「なんだ、この光は!?」
急旋回すると、カぺルの噛み締めた奥歯が砕けた。突進するように突っ込んできたフェンリルのビームサーベルが、サザビーの左腕と両脚部を焼いた。
「なんだと!?この速度・・・・・・中尉はニュータイプとでも言うのか!?」
番外個体はぼそりとカペルに向けて呟いた。
「あんた・・・・・・まさか」
「お前が思ってるのと違うぜ、番外個体。俺は・・・・・・」
「強化人間だ」
攻撃してきたサザビーの動きが急に止まった。サイコフレームを装備せず、ファンネルなどを使ったからだろう。
トドメをさそうと思ったが、既にエネルギーも後僅かだった。カペルはその場を後にし、がむしゃらに遠くへと機体を動かした。
スラスター光が暗い宇宙に光って見える。
カペルの意識は限界だった。意識を手放そうとした瞬間、通信が入った。
『聞こえていますか?こちらはビスト財団のガエル・チャン。あなたの所属と目的を・・・・・・』
ガエルが言い終わる前に、カペルは言った。
「亡・・・・・・、命、だ・・・・・・」
そのままカペルは意識を手放した。
後書き
フェンリルはもっとチートに!!書きたいことありすぎて8000を超えてしまった・・・・・・。
まぁ、スペックとしては当時のEx−Sガンダムみたいな?
HADESシステムはリミッター解除が任意で可能です。キャバルリーのようにOSに組み込まれているのではなく、ブルーディスティニーと同様に音声認識です。
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あと、番外個体の名前を募集します。よろしくお願いします〜!!
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