美しき異形達
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第三十九話 古都での死闘その十四
「蝮とかに噛まれたら」
「死ぬっていうんだな」
「そう、だからね」
「それお医者さんにも言われたよ」
「やっぱり」
「蝮って怖いのよ、実家じゃいつも言われてたのよ」
こう言ったのだった。
「蝮には注意しろってね」
「噛まれたら毒にやられるからか」
「そう、毒茸にも注意しろって言われてたけれど」
「蝮はか」
「噛まれたら本当に死ぬって言われてたの、ヤマカガシもね」
「ああ、お医者さんヤマカガシのことも言ってたよ」
「そう、だからね」
それで、とだ。裕香は薊に熱心に言った。
「何もないのなら本当にいいことよ」
「それ本当に言われたよ、お医者さんに」
「けれど何もないのなら」
「いいんだな」
「よかったわ、けれど」
「ああ、相当な毒だったみたいだけれどな」
「殆ど平気だったって」
このことについてだ、裕香は真剣に首を傾げさせてこうも言った。
「どういうことかしら」
「幾らあたしの身体が頑丈でもな」
「象も死ぬって言ってたわよね」
その怪人が、というのだ。
「そんな猛毒なのに何ともないって」
「人間としたら」
鈴蘭も言う。
「ないわね」
「それな、どういうことだろうな」
薊本人も腕を組み首を傾げさせる、そうした話をしつつ。
一行は病院を出た、薊は病院を出てから皆に言った。
「次何処行く?」
「毒のことは何ともないから」
「ああ、あらためて何処に行くんだい?」
「行きたいけれど」
それでもとだ、裕香は薊に難しい顔でこう言った。
「もう夕方よ」
「あっ、だからか」
「そう、一旦旅館に帰ろう」
裕香はこう薊に話した。
「それでお料理食べよう」
「奈良のか」
「あそこの旅館のお料理は奈良時代のお料理出してくれるから」
「奈良時代のかよ」
「そう、あの時代のね」
「へえ、どんなのだろうな」
「色々あるみたいよ」
裕香の返事は詳しくは知らないが、というものだった。
「乳製品もあったりして」
「日本で乳製品かよ」
「奈良時代は乳製品も食べていたの」
「へえ、そうだったんだな」
「それと奈良時代のお酒もね」
その酒はどういったものかというと。
「白酒、どぶろくね」
「へえ、どくぶろくなんだな」
「それも出るから」
「じゃあそっちもか」
「楽しめるから、あそこの旅館お風呂も凄いから」
「そうしたのも楽しんでか」
「また明日ね」
こう話してだ、この日はだった。
薊達はこの日は旅館に帰った。鈴蘭達は自分達の宿泊先のホテルに。そして薊達は旅館で天平時代の料理と風呂を楽しみ次の日の観光も楽しみ奈良も満喫して大阪に向かった。
第三十九話 完
2014・11・14
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