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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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仲間の背中

 
前書き
ザザ戦最終局面!
されではどうぞ!! 

 
戦士というのは「兵隊」とは180度異なる。
兵隊は上官に命令されるまま動く(命令がなければ動けない)が、戦士は男であれ女であれ、自らの意志で、自らの信じるもののために自発的に行動する。彼あるいは彼女はどのような挑戦も障害も乗り越えて目的を貫く。
戦士は彼もしくは彼女が信じていることのために耐える強さをもつ。信じるものを守るために正直に話し、行動する───
~ショウニー国チーフ テクムシェの教え~

その心に信じるのは正義か、悪か───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

キンッ、ガッ───

しばらく続く金属音、それは吹き荒れる強風の中でもはっきりと聞こえていた。
そして金属音の混じる銃声も。

「そらッ!」

「ッ!」

シオンとザザの交戦は激化の一途を辿っていた。ザザが攻めれば同様にシオンも攻め、両者ともに隙を見せない闘いを繰り広げていた。

「何故だ、何故、そこまでして、闘う・・・?」

「あ?」

ザザはシオンに攻撃を繰り出しながら問う。

「おまえは、何も、護れない。にも、拘らず、おまえは、剣を、振る。おまえは、何のために、闘っている?」

ザザの問いに対してシオンは少し間をおいてからこう答えた。

「・・・おまえ、言ったよな?俺は誰も護れないし、救えないって。確かにそうだ、俺は誰かを護れるほど強くねぇ・・・。だけどなぁ・・・」

シオンは真っ直ぐに前を見据えた眼で言った。

「こんな俺でも大切な奴(仲間)の背中は護ることはできる!」

「フン、ほざけッ!」

ザザは刺剣をシオンに突き刺そうとするが、シオンはそれをかわし、ザザの顎に拳を叩き込む。

「グッ!」

「オラッ!」

浮き上がったザザの身体をシオンは回し蹴りで蹴り飛ばす。

「俺が仲間の背中を護り、その仲間が俺の背中を護ってくれる。俺はそれだけで充分闘えるし、心強い。だから、この居場所だけは誰にも譲らねぇ!この命に変えても!」

「クッ・・・」

「ザザ、お前には無いか?誰にも譲れない何かが?」

「俺は・・・お前を、倒す。俺の、手で・・・」

ザザの仮面は口元で砕けており、その口元は笑みを浮かべていた。

「そうか、それだけあれば・・・」

それはシオンも同じだった。

「充分だ!!」

二人は弾かれるように飛び出した。ぶつかり合う剣は火花を散らし、シオンがコルトガバメントを放とうとするもザザはそれを手で止め、コルトガバメントを奪い、放つ。
シオンはそれを頬スレスレでかわし、ザザが奪い取ったコルトガバメントを破壊する。
続けざまに拳を繰り出すも止められ、背負い投げという形で地面に叩きつけられる。ザザは刺剣を突き刺そうとするが直前でかわされ足をとられ蹴りをくらう。

休むこと無く続く二人の激しい攻防戦、その光景に映像を見ているギャラリーは湧きに湧いていた。

「どうよ、ザザ!久しぶりに本気で闘う気分は、よッ!」

「フン、中々、悪く、ないッ!」

「ああ!俺もだッ!!」

二人は自然と笑みがこぼれていた。この状況、この勝負を誰にも譲れない。そんな考えがシオンの頭にはあった。

『こんな楽しいバトル、誰にも譲れねぇッ!』

「これで、終わりだッ!」

「その言葉、そのまま返すぜ!!」

二人は同時に地面を蹴り、突進する。

「くらえッ」

「貫けッ!」

同時に衝突、衝撃が辺りに伝わる。
刃は身体に突き刺さり、赤色のエフェクトが(ほとばし)る。

「終わりだ・・・」

ザザは俯き加減のシオンにそう言った。

「俺の、勝ちだッ!」

しかし、シオンはこれを待っていたかのように叫ぶ。

「捕らえたぞッ!」

「ッ!」

ザザの腹部に光剣が貫かれたのはその直後だった。

「グッ!」

「ま、だぁああああッ!!!!!」

シオンはM945を抜き取ると、残りの弾を全て撃ち込んだ。木霊する銃声、ザザのHPは残り数ミリまで減少した。

「これで、終わり、か?なら、俺の・・・」

「まだだ!」

「ッ!」

シオンは大きく息を吸い込み、ありったけの声で叫んだ。

「アリアァあああああッ!!!」

その人物は塔の頂上で目を光らせていた。

「待ってたよシオン!」

アリアが構えていたNTW-20かつてアンチマテリアルライフルの中では最強と詠われ、今では取引禁止とされ、こう呼ばれている。

Vidhwansak(破壊者)と───

「お前、自分の身体を(なげう)ってまでッ!?」

「言っただろ?『命に変えても』って、今の俺は・・・《戦士(ファイター)》だ!!」

「刻みなさい、破壊者の風穴をあなたの胸に!」

アリアが引き金を引くと、周辺はとてつもない衝撃波と轟音に襲われた。
破壊力をもった弾丸はザザとシオンもろとも貫き、そこには大きな風穴が空いていた。
二人は地面を転がり、砂漠の大地に倒れた。

『俺は、敗けた、のか・・・』

ザザは薄れいく意識の中でそう思った。
自分はシオンに敗け、今まさに横たわっている。

『不思議だ、敗けた、はずなのに・・・』

そう敗けたはずなのに、ザザの心は不思議とスッキリとしていた。

「悪くない、気分だ・・・」

それを最後にザザの意識は途切れた。《DEAD》の表示が出ると、シオンは空に浮かぶ星を仰いだ。

「楽しかったぜ、ザザ。お前とは、もっと純粋なデュエルで戦いたかったよ・・・」

HPを確認すると、ダメージが継続しており今にも尽きてしまいそうだった。

『俺もここまでか・・・』

シオンは再び空を見る。上空に輝く星にその手を伸ばす。

「ほんと、遠いなぁ・・・」

近くて遠いその存在に幼い頃彼は憧れた。昔、聞いたことがある。

『ねぇ。あの空の先には何があるの?』

『さぁな、何もないんじゃないか?』

『そうなんだ・・・』

『だが・・・だからこそ、人は憧れる。人は海に憧れ船を作り、空に憧れ飛行機を作り、そして宇宙に憧れロケットを作った・・・。人はいつだって未知なる世界や目標とすべきものに憧れる』

『僕にもなれるかな?』

『どうだろうなぁ~、それはお前の努力次第だ。お前の努力次第でお前の回りにはいろんな人が集まってくる、そうなれるように頑張れよ~』

『うんッ!』

それから数年経った今、彼はその憧れに手を伸ばしている。

「なぁ、俺は、誰かの憧れになれたかな?」

それを最後にシオンの意識は途切れた───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

『朝田さん、僕が、僕が守るからね・・・』

夜道を歩く新川恭二は朝田詩乃の家へと早足で向かっていた。
そしてその道のりである公園を横切っているとき───

「やぁ、こんばんわ」

車椅子に乗った青年に出会った。髪は白く、年は少し上くらいだろうか・・・

「いい夜だね♪」

「は、はぁ・・・」

「こんな夜には星を見るに限る」

青年は空を見上げそう呟いた。恭二は何のことか分からず、そのまま去ろうとした。

「あの僕、急いでるのでこれで・・・」

「朝田詩乃のことかい?」

「ッ!何故彼女の名前を!!」

「ほう、図星か。あんたの相棒はもっと頭がよかったぜ?」

「お前、一体何者なんだ・・・?」

「お前を叩き直す存在さ」

青年は意味深な笑みを浮かべ、恭二はその表情が気に入らなかった。

「そうか、君が、僕の、朝田さんを・・・!」

『お前の、ねぇ・・・?』

「シオンッ!」

「ッ、朝田さん・・・」

公園の入り口にはシノンこと、朝田詩乃が来ていた。

「待ってて、朝田さん。今、邪魔な奴を片付けるからッ!」

「それってもしかして懐の入っている劇薬でかな?」

「何故それを?」

「また図星。お前、こういう駆け引き苦手だろ?」

青年こと雪羅は呆れた顔で言う。

「うるさい!いいから答えろッ!」

「ったく、自分の都合の悪いようになったらキレる。まったくもってナンセンスだ。で、なんだっけ?ああ、そうか理由な。この犯行を成立させるにはまず一つ、ターゲットに短時間で近づくことのできる配置。二つ、寝ている人間を死亡させるだけの劇薬を容易に入手できる環境。三つ、それを行うだけの人選、人数。この三つに当てはまるかつ、今ここにいる朝田詩乃の周りでいる人物、そして彼女に異常なまでの執着心を持っている人物といったら~・・・お前しかいないんだよ、新川恭二くん?」

「ッ!そ、そんなのただの妄想だ!証拠はなんだ!?」

新川の反応に雪羅は頭を掻いた。

「証拠、ねぇ・・・?それはお前が今まさに掘りまくってる墓穴だよ」

その瞬間、新川の怒りは頂点に達した。

「貴様ァアアアッ!!!」

「遅ぇ」

雪羅は車椅子を器用に動かすと新川の足を引っ掻けた。

「グアッ!」

「いいか?敵を捉えるときはまず全体を見ろ。闇雲に来たところで返り討ちになるぞ」

「だまれぇえええッ!!!」

「それと殴るんなら腕だけじゃなくてもっと腰を入れろ」

こんな風にな、と言うと雪羅は新川の顔の目の前で拳を止めた。
その圧力に新川は思わず後ずさりしてしまう

「ほら」

雪羅は新川に木刀を一本投げる。

「取れ、お前のそのひねくれた根性、叩き直してやる」

雪羅も木刀を取り出すと、構えた。

「来い・・・」

これが、最後の仕事───

凍てつく公園に雪が降り始める───
 
 

 
後書き
ザザ戦が終わり、次回は新川恭二とのラストバトル!
次回をお楽しみに!!

コメント、評価お待ちしてます!!

ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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