ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
災禍の鎧
───ある男がいた。
その男は、ソードアート・オンラインの黎明期、つまり約二年前に存在した伝説的殺人プレイヤーの名前だ。
メタリックグレーの騎士型の鎧を見にまとい、凄まじい戦闘能力で数多のプレイヤーを地に這わせた。
その戦い方は苛烈、あるいは残忍の一言で、降参する相手の首をはね、手足をもぎ、暴虐の限りを尽くした。
しかし、無数のプレイヤーを死に追い込んだ彼にも、やがて最期の日はやってきた。
彼以外の、当時の最高レベルにあったプレイヤーが結束し、討伐隊が作られたのだった。
もちろん、その中にはレン、そしてユウキもいた。
遂にHPが底をつき、ゲームでの《死》を迎えたその瞬間、彼は哄笑とともにこう叫んだ。
──俺はこの世界を呪う。穢す。俺は何度でも甦る──
言葉は真実だった。
その男本人は、この世界から退場したが、鎧──メタリックグレーの騎士型の鎧は消えなかった。
その討伐に加わった者ひとりに何故か所有権が移動し、興味本位か誘惑に負けたか、それを装備してしまったプレイヤーの精神を──
乗っ取った。
それまでは高潔なリーダーとして慕われていたのに、一夜にして残虐な殺戮者へと変貌したのだ。
その荒ぶる姿は、《初代》とまったく見分けがつかないほどだった。
それと同じことが、実に三度繰り返された。
《鎧》の持ち主は大変な恐怖をばら撒いたのちに討伐され、しかし鎧は消えずに、主を討った者へと次々に乗り移り人格を変容させる。
いつしかその鎧は、《災禍の鎧》と呼ばれるようになった。
およそ半年前、すでに《六王》の一席を占めていたユウキ、そしてまだ六王には入っていなかったレンは、他の攻略組プレイヤー達とともに《四代目》の討伐に参加した。
幾多の犠牲を出しながら、《四代目》を倒した後、その場に生きていた者全員のアイテム欄を可視モードにしてまで、《鎧》の有無の確認がなされた。
そして、全員のストレージに《鎧》が無いことが確認され、《鎧》の脅威は去ったと誰もが思った。
そう思ったのだった。
「っざけんじゃねぇよ!!」
シゲクニの厳かに言った言葉に、激甚な反応を示したのは、事情を知らなかったテオドラだった。
「あたし達は、《四代目》を倒した時にストレージに《鎧》がないのは確認しただろう!」
冷静さを完璧に失っているテオドラは更に言い募る。
「その時、確かに全員のストレージに《鎧》はなかった!あそこで《災禍の鎧》の呪いは解けたはずだ!!」
「ならば《五代目》が現れ、暴れまわっている現状はどう説明する!!」
ヴォルティスが厳しい声で言い、テオドラは何も言えなくなってしまう。
テオドラが黙ったのを見て、ヒースクリフが相変わらずの無機質さを漂わすテノールで言う。
「ヴォルティス卿。暴れまわっているということは、すでに犠牲者が……?」
その問いには答えず、代わりにヴォルティスは、背後にいた副長と思われる男に頷きかけた。
確かヴィルヘイムとか言った、ツンツン頭の男は手元の紙に視線を落としながら言った。
「今現在、確認されているのは約二十人ッス。初めに襲われたのは、中層ゾーンの小さなギルド。リーダーが紙一重で脱出してきたおかげで、やっと情報が入ったッスよー」
軽い男の言葉の後半を聞き流し、レンはいつにない鋭い目を浮かべた。
「…………現在地点は?」
「だめッス。奴さん、次々階層移動してっから、全然掴めないッス」
ここにきて、今まで黙りこくっていたユウキが口を開く。
「……その人の……もとは………?」
これにはシゲクニが、傍らに立っている副長のツバキに目配せする。
長い黒髪を後ろで縛ったツバキは、ヴィルヘイムと違い、何も見ずに淡々と言った。
「もともとは中層プレイヤーのようです。名前はルーク、性別は男、友人の話によると、まだ年端もいかない子供だったそうです」
一瞬の沈黙。
テオドラが沈黙を破った。
「………対処はどうするつもりだ?」
「できればコリドーで牢獄に入れたいのだがな、アレを止めることは難しい。……いや、難しすぎる。我ら全員で戦っても勝てるかどうか………」
「じゃあ………」
「ああ、最終的には、殺さざるを得まい……」
苦渋を舐めるようなヴォルティスの筋肉の塊のような顔を見て、誰もが何も言えなくなってしまう。
再びの静寂。
時計の秒針が一回りするくらいして、やっとユウキが口を開いた。
「……どっちにしても、行動パターンと現在位置が掴めないとどーしようもないよね」
口々に賛同の声が上がる。
だが、その中で一人だけ賛同の意を上げなかった者がいた。
レンだった。
血色のコートに身を包んだ少年は、やっといつものように笑って
「一人だけ、見つけられるヒトを知ってるんだけど……」
言った。
アインクラッド第二十七層は、常闇の国だ。
外周の開口部は極端に少なく、昼間でも差し込む陽光はないに等しい。
内部はごつごつした岩山がいくつも上層の底まで伸び、そのそこかしこから生まれた巨大な水晶の六角柱がぼんやりとした青い光を放っている。
そんな二十七層の中にある深い谷底に、貼り付くような形の小さな街。
それが二十七層主街区の【ロンバール】だ。
岩の塊から掘り出したようなその街は、細い路地やら階段やらが複雑に絡み合っており、それらをオレンジ色の灯りが照らし出している。
寒々とした夜の底にポツリと燃える焚き火のように、どこかほっとする光景だ。
そんな【ロンバール】の転移門広場にある転移門が光を放ち、立て続けに三人のプレイヤーを吐き出した。
最初に出てきたのはレン、次にユウキ、そしてテオドラだった。
「しっかし、ほんとーにいるのか?短期間で《鎧》の行動パターンが調べられるヤツなんて」
手を後ろに組んで、テオドラが疑わしそうに言う。
「いるよー。性格はちょっとアレだけど……………ほら、見えてきた」
レンの指差す方向を、ユウキとテオドラは見て、そこに岩から削り出されたような一軒の家が立っていることに気付いた。
三角屋根にくっついた煙突から出る煙が、中に人がいることを示していた。
──コンコン──
レンが、別に躊躇した様子もなく木製のドアをノックする。
しばらくして、中から押し殺したような声が聞こえてきた。
「……………合言葉は?」
その声を聞き、隣に立っているユウキがぴくんと反応したが、テオドラがそのことについて問いただす前に、レンが同じく押し殺したような声を発した。
顔の表情が消えているように見えるが、気のせいだろう。
「…………………………性欲は人類の全て」
何かとんでもないことが聞こえてきたような気もするが、きっと気のせいだろう。うん、そうであってほしい。
「……違う」
「えっ!これじゃないの!?」
「…………冗談だ。入れ」
不毛なやりとりの後、ギイィィーとホラー映画のような効果音とともに扉が開いた。
扉の内側には、目の下に軽くクマを作った小柄な少年がいた。
かなり嫌そうな顔で溜め息をついているユウキの前で、レンは相変わらずののんびりとした笑みを浮かべ
「久しぶり。元気だった?ムッツリーニ」
言った。
「一枚!」
「……話にならん」
「じゃあ二枚!」
玄関で笑顔で対面した後、通された応接室のふかふかのソファーに埋没しながら、テオドラは呆れ半分の顔で目の前のテーブルに積み重なっていく女性プレイヤーの写真──おもにユウキの──を見ていた。
ちなみにユウキは、最初は苦笑していたが、今では悟りを開いた坊さんのようになっている。ぶっちゃけ言って、痛々しい。
だが、レンの言う数字が二桁を上回ってくると、やっと向かい合うようにして座っている不健康そうな少年──ムッツリーニというらしい──の言う言葉のレパートリーが増え始めた。
ぬぅ、とか、うぅん、とか言っている。
そんな煮え切らない態度に苛ついたのか、レンは笑顔でとんでもないことを言った。
「調べてくれたら、この二人撮影用に貸すからさ!」
「今日中に報告しよう!」
即答だった。
この上なく即答だった。
しかも、何を思ったか、鼻からはとぽとぽと鼻血が滴っていた。
「え……ちょっ……待っ──」
「ありがとう、ムッツリーニ!いい報告を待ってるよ」
慌てて止めようとするテオドラを無視して、ガシッと男の握手をする二人。
はたから見ればかなり青春っぽいが、実際はかなり汚い。
もう事態が、後戻りできないところまで進行してしまったのを悟り、がっくりと肩を落とすテオドラの肩にポンと置かれた手があった。
振り向くと、テオドラに負けず劣らず諦めの光を目に宿らせユウキの顔があった。
ユウキは静かに首を横に振った。
いっそう肩を陥没させながら、テオドラは負け惜しみのように言った。
「今日中に、《災禍の鎧》の現在位置なんて割り出せるのか?」
ムッツリーニは、その問いににやりと不敵に笑い、瞳をきらーんと自信満々の光に包ませながら
「エロに限界はない!!」
言い切った。
後書き
なべさん「はい、始まりました!!そーどあーとがき☆おんらいん!!!」
レン「はい、今回は申し訳ないのですが、前回言ってたキャラ紹介に押し潰されて、お手紙紹介はいたしません!送ってくださった霊獣さん、月影夜葬さん、ほんとーにありがとうございます!」
なべさん「とくに月影夜葬さんにはごめんなさいを言っときます」
レン「何があったんだ……」
なべさん「はいはい、行きますよ~、初回の今回は誰にするか迷ったんですが」
レン「お便りで、風魔忍軍についての反響が多かったんで、シゲさんからいこーと思います!」
なべさん「それではこちらです!じゃじゃーん!」
名前 シゲクニ(愛称はシゲさん)
年齢 72歳(SAO開始当時)
顔 髪は白髪で、瞳の色は濃い灰色。アゴヒゲは綺麗な三角形になっている
体格 体はヒョロリと長細く、折れ曲がっている
装備 いつも薄い紺色の着物を着ている。そのありとあらゆるところに剣を仕込んでいる。
具体的に言うと、短剣三本、片手直剣二本、両手剣一本、刀一本、刺剣一本、細剣一本。
野宿用に、常時背中に巨大な鍋を背負っている。
ユニークスキル 自在剣(月影夜葬さんに感謝!)効果は、通常一人に一つだけしか装備できない武器を剣に限って無制限にできる。
追記 いつも穏やかで、大抵の場合は場をいさめ、第三者の視点で公平に物事を見極める役に徹する。
なべさん「……こんな感じでいいのかな?」
レン「いいんじゃね?」
なべさん「はい、こんな感じで次回からやってきます!」
レン「あいよー」
なべさん「そして先日よーやく気付いたことがある!!」
レン「おや、なんだ?」
なべさん「200pt達成してましたー!!!!」
レン「なんと!こんな駄文のくせに」
なべさん「くせにとはなんだ!くせにとは!!」
レン「(無視)こんな駄文ですが、これからも変わらぬご愛読をよろしくお願いいたします」
なべさん「ぬぅ……自作キャラ、感想なども送ってきてください!」
──To be continued──
ページ上へ戻る