とある3人のデート・ア・ライブ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六章 颶風の巫女
第11話 激突する力〜交差〜
前書き
どうも、ラーフィです。
八舞編最終話です。最後には新たなるキャラが登場します!お楽しみに!
ではでは〜
〈アルバテル〉
先ほど艦体上部にプラズマが激突し、制御できなくなり降下していた。
幸運にも〈ラタトスク〉の空中艦は自分たちを追ってこない。
その理由は住民に気づかれるからだ。
精霊を平和的手段で解決しようとする集団の艦長ならば、魔力砲を打てば鳥に被害が及ぶ可能性があるので打ってこないだろう。
そして、その予想は見事に的中したのだ。
しかしパディントンもただでは終わらせるわけにはいかない。
数機の〈バンダースナッチ〉を失い、〈アルバテル〉を損傷させ、逃げ帰った。その時点でパディントンの失態は決定的なのだ。
それを帳消しにするためには、それを補う成果を上げなければならない。
だからーー
パディ「遠隔制御室の消化は済んだな!?艦に残っている〈バンダースナッチ〉を全て発信させろ!なんとしても〈ベルセルク〉と〈プリンセス〉を拿捕するのだ!」
強行手段に出た。
「し、しかしーー」
「いいから、やれッ!」
パディントンの怒号に、クルー達は奥歯を噛み締めながらコンソールを叩いた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
耶倶矢「……何よ、あれは」
夕弦「同調。空気を読んでほしいです」
上空の巨大な鉄の塊を見上げると同時、下から何者かが来る気配がした。
耶倶矢「……あんた、空飛べるんだ」
夕弦「突然どうしたのですか、当麻」
上条当麻は耶倶矢と夕弦の肩を並べるように飛んできた。
上条「いや……もしかしたらな、っと思って」
耶倶矢「……?どうゆうこと?」
夕弦「質問。あれは何ですか?」
上条「多分、俺たちがさっき倒したやつの仲間だ。耳のイヤホンで通話してたから……多分こいつらと」
耶倶矢「ふぅん……じゃあ″アレ″も敵ってことでいいのね?」
と、耶倶矢が上空の艦体にむけて指差す。
でも、耶倶矢が指差したのはどっちだったのだろうか。
艦体本体か。
それとも、
戦艦の下部のハッチのようなものが開いたと同時にバラバラと出てきた、手足に様々な武器を積んだ人形のことか。
それとも、両方か。
上条「……あぁ、そうだ」
どちらにしても、彼らは敵だ。
上条は右手を前に出すと、その周辺の風が渦巻いていき、槍を一直線に投げたように放出された。
まるて、佐天の『絶風破』のように。
その渦巻いた風は周りを巻き込み、〈バンダースナッチ〉を一括した。
耶倶矢「へぇ……やるじゃない」
夕弦「同調。こちらもやっちゃいます」
二人が小さく頷きあうと、耶倶矢が左手を、夕弦が右手を差し出し、ぴたりと合わせた。
すると二人の霊装と天使が光り輝き、耶倶矢の右肩の羽と夕弦の左肩の羽が合わさって、弓のような形状を作った。
次いで夕弦のペンデュラムが弦に、耶倶矢の槍が矢となった。
そして。
左右から同時にその弦を最大まで引いた。
そして。
『〈颶風騎士ーー【天を駆ける者(エル・カナフ)】!!』
二人が全く同時に手を離し、巨大な矢を天高く打ち上げた。
瞬間、今までとは比べものにならないほどの風圧が辺りを襲った。
絶対にして無敵の一点集中攻撃。
風の加護を纏った矢の進行を止められるものなど、この世には存在しない。
人間の産物である戦艦に、それを防げる道理など、あるはずがなかった。
巨大な戦艦は、〈颶風騎士〉の矢に貫かれ、その風圧により内部機関を滅茶苦茶に破壊され、巨大な爆発音とともに散った。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
結局、凜袮に頼りっぱなしだったな、と上条は少し思った。
凜袮が大人しかったのも、『幻想殺し』を限りなく理想の形にするため。
凜袮から話されたことも全て『幻想殺し』と切り離された『力』のこと。
精霊のことに詳しかったのも、今回魔力の消費を少なく抑えられたのも全て凜袮の助言や努力の成果だったから。
だから改めて思う。
凜袮は、すごいと。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
耶倶矢「それより、だ。士道よ、早く我らの力を封印してみせよ」
夕弦「同意。まだ時間はありますが、早い方がいいです」
士道「え、いや……それは……」
士道が十香の方をチラッと見て、そして上条の方にも向いた。
まるで、少しの間頼んだぞ、と言わんばかりの目線で。
上条はため息を一つつき、十香の方に駆け寄った。
上条「十香。さっき俺が持ってたカバン一緒に探してくれないか?さっきの風でどこか行っちゃってさ」
十香「ん?別に構わんが……」
上条「サンキュー。じゃあ俺と十香はこっち側探すから士道と耶倶矢と夕弦はあっち側を探してくれないか?」
上条の十メートルほど後方にそのカバンがあるのは気のせいだと信じて、士道はその言葉に肯定した。
封印をする際の儀式と代償を十香に見せるわけにはいかなかったから。
十香「お、あれではないのか?」
上条「おっと、あったあった。これだ。サンキューな十香」
そう言いながら十香の頭を撫でる。
十香「うむ!容易い御用だぞ!じゃあシドーたちにも見つかったことを言わなきゃいけないな」
上条「そ、そうだな。見つかったのに探してたら、無駄な労力になっちまうし……」
でも本音を言うとまだ士道達の方へ向かってほしくなかった。
案外早く見つかったせいか、まだ封印が成功した時に起こる代償ーー身に纏っていた服が消えた際に出る光の粒子をまだ確認できていなかったから。
十香「じゃあ行くぞ!」
上条「ち、ちょっと待ってくれ!」
封印した後はどうとなってもいい。だが士道も十香がいる前じゃ流石に封印する儀式ーーキスをしにくいだろう。
だから、僅かの時間稼ぎをするつもりだった。
その、つもりだった。
十香「ん?どうしたのだ?」
上条「えっと……あ、ちょっと質問なんだけど……」
十香が可愛らしく首を傾げた。
上条「十香から見て、今の俺ーー上条当麻はどう映って見える?」
だが、
上条はこの質問をしたことを少なからず後悔することになる。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
光の粒子が空高くに消えていくのが見えた。
十香「シドー?何やら光っていたが、何かあったのか?」
士道「……!?と、十香!?」
上条「あ……」
そこでは、耶倶矢と夕弦が二人揃って胸元を覆い隠し、その場にうずくまっているところだった。
上条が一瞬で察し、十香が遅れて状況を理解した。
そして、その顔を真っ赤に染めた。
十香「し、シドー!?な、ななな何をしているのだ!?」
士道「い、いや違うんだって!俺は何もーー」
言い争いが始まったところで上条はカバンを開けて中にあるものを取り出した。
それを耶倶矢と夕弦の方へ持って行き、バサッと頭から被せる。
耶倶矢「ばふっ!?」
夕弦「同調。ぶふっ」
毛布ではない。それはーー
耶倶矢「着物……?」
夕弦「疑問。どうして……」
そう。
あの時持ってきたカバンの中身は旅館にある着物だったのだ。
耶倶矢「あんた、まさか……!?」
夕弦「驚愕。最初からこうなることを予想していたのですか……?」
耶倶矢と夕弦が着物で身体を包みながら上条に問いかけた。
そして上条から返ってきた言葉は、さらに予想を上回るもので
上条「″予想″じゃねーよ。″確信″だ。お前たちならいつか自分達の本当の気持ちに気づく。俺はそう確信したからこそ、こうやって持ってきたんだ。封印の際の儀式と代償は知ってたからな」
耶倶矢と夕弦は、しばらくポカンとしていた。
我に帰ったのは上条に帯を渡された時だった。
その後、十香が士道に制裁を下したというのはまた別の話。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
帰り道。
上条「(……そっか)」
前方では耶倶矢、夕弦、十香、そして士道が仲良く談笑しながら歩いていた。
上条「(俺は、もう″そんな域″まで来てたんだな……)」
上条当麻は。
先ほどの十香の言葉を思い出していた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
十香『今の当麻?』
上条『そ、そうなんだ。最近やけに見られてるような気がして……』
十香『う〜ん……″外見″はあんまり変わってないような気がするのだが……』
上条『そ、そうか……なら良かった』
上条がホッと息を撫で下ろしたのも束の間、
十香『でも……』
上条『ん?』
十香『私としての″立場″から見たらーー』
十香『ーー精霊になった、だろうか』
上条『ーーーー』
十香『……何と無く、いつからか感じるようになったのだ。理由は分からないのだが……でも、なぜか……』
十香『いつか当麻は、この世界を変えるような……とてつもない存在になるような気がしてならんのだ』
上条『ーーー』
十香『あ、いや……あくまでそんな気がするだけだ。勘違いかもしれんから気にしなくていいぞ!』
十香が弁解するように必死に手を振る。
でもーー
上条『そっか……俺はもうそんなところまで……』
小声でポツリと言ってしまった。
十香『……!?』
それと同時に、十香が眉をひそめて疑問と驚愕の織り交ぜたような表情を見せた。
上条『いや、何でもない。さ、士道達のところに行くか』
十香『当麻……?まさか、本当に……?』
上条『またいずれ話すさ。今は士道達のところに戻ろうぜ』
十香『う、うむ……む?あの光は何だ?』
そして、
十香は先ほどのことなどなかったかのように、空へと舞い散る光の粒子の場所へも向かった。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
上条『残滓の回収は終わったか?』
凜袮『もちろん。そのために私はいるんだから』
上条『お疲れさん。なんか色々とありがとな』
凜袮『いいのいいの。どうせ暇なんだし』
上条『ま、そりゃそうか』
凜袮『じゃあ部屋に戻ったら毎日恒例の″アレ″をするよ』
上条『……あぁ、魔力玉に魔力を送るんだっけ』
凜袮『そうそう。当麻は保持魔力が少ないからこうやって毎日貯金しないと、いざという時に困るでしょ?』
上条『ま、そうだな。上条さんはそのいざという時が来ないことを願ってるけど』
耶倶矢、夕弦、十香、そして士道が仲良く談笑する後方で、上条は僅かな微笑を浮かべた。
流石に、十香にズバリと今の自分の現状を言われた時は驚いたけど。
いずれ皆んなに話す時はくるだろう。
そう、信じたい。
と、上条は心の奥底で静かに思った。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「久しぶりたね、五河司令」
書斎のような部屋に琴里の方に顔を向けてくる男がいた。
円卓会議議長、エリオット・ウッドマン。
〈ラタトスク〉の創始者であり、琴里の恩人でもある人物だった。
でも、その後ろにもう一つ人影があるような……
でも今は気にしている余裕はない。
琴里「ご無沙汰しております、ウッドマン卿」
琴里は踵を揃えて綺麗に敬礼をした。
エリオット「随分と活躍しているそうじゃないか。円卓の連中も驚いていたよ。何でも三人の助っ人がいい動きをしてくれるとか」
琴里「はい。あの者達にはとても感謝をしております」
エリオット「そうか……ところで、つい先ほど報告があったのだが……」
琴里「報告、ですか」
エリオット「あぁ。〈フラクシナス〉がDEM社製と思しき空中艦に襲撃されたらしい」
その報告は既に受けていた。
琴里「ええ。聞いています。しかし艦には神無月や助っ人がいます。問題はないでしょう」
エリオット「そうだろうね。どちらかというと問題はもう一つの方だ」
琴里「と、いいますと?」
エリオット「君の兄上が天使を顕現させたらしい」
琴里「……!」
その言葉に、ピクリと眉を動かした。
琴里「そうですか。もう……」
エリオット「あぁ。恐らく君の霊力の再封印がきっかけになったのだろう」
琴里「……っ」
エリオット「……私も人間として未熟だな。まず最初に言わなければならないことも忘れているとは。五河司令、〈灼爛殲鬼〉を使ったと聞いたが、大事はないかね?」
琴里「は、はい。ご心配をおかけしました」
エリオット「随分と無理をさせてしまって申し訳なく思っている……でも、もしもの時は、″適切な対処″を迫られるかもしれない。でなければせっかく封印を施した精霊達に、また災いが降りかかることになる」
琴里「承知、しています。もしものことがあればーー」
琴里「ーー士道は、私が殺します」
エリオット「……嫌な役を押し付けているのは分かっているが、頼んだよ」
琴里「はい……」
エリオット「そうだ。変わり、っていうわけではないが……」
琴里「……?」
エリオット「君たちの助っ人がそちらに来るとほぼ同時期にこちらもある″助っ人″が来てね。″彼″は裏で活躍してもらっているよ。表舞台にはあまり出ずに……ね」
琴里「え……?では、そこにおられるのは……」
エリオット「そう、その″彼″だ。私も忙しい立場なのでね。彼を代理人とする時がくるだろう。だからよろしく頼むよ」
琴里「い、いいのですか?そんな重要な役割を……」
エリオット「君だって助っ人の一人に司令代理を任命したそうじゃないか。それと同じことだよ」
琴里「……」
エリオット「そう睨まないでくれ。それだけ私は彼を信頼しているのだよ。何せ、あの″学園都市″の子だからね」
琴里「え……?」
エリオット「あぁ、紹介がまだだったね。彼はーー」
エリオット「学園都市Level5の第二位、垣根帝督君だよ」
その垣根帝督と呼ばれた少年は、こちらに向けて微笑を浮かべた。
琴里がエリオットの言葉を理解するのはそう難しくなかった。
なぜ、そんなにも信頼できるのか。
それは、自分が一番経験している。
学園都市Level5の第1位、一方通行に司令代理を任せたように、それだけの成果を上げて、信頼を築き上げたということだ。
やはり、
学園都市の人間はただ者ではない、と琴里は今更ながら痛感したのであった。
後書き
第六章颶風の巫女、いかがだったでしょうか?
個人的には、この『とある3人のデート・ア・ライブ』の核心にまた一歩近づけれたかなと思っております。
今回も謎を深めるばかりでしたね。神無月も一方通行のことをよく知っているような雰囲気を出しましたし。
そして、何といっても垣根帝督!!!彼をここで投入しました!!ミサカ→垣根ときていますが、次は誰が来るでしょうか。そんなことを考えながらこれからの話を楽しんでいただけると、ありがたいです!
次からは、一度短編ーー夏休み編を挟んで美九編に突入したいと思っております。
では……最後に。
作者がここまでやってこれるのも読者のみなさんのおかげです!本当にありがとうございます!!!
これからもよろしくお願いします!!!
ページ上へ戻る