義勇兵
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1部分:第一章
第一章
義勇兵
日中戦争は泥沼化していた。その中にアメリカは義勇軍として多くのパイロット達を送り込んでいた。
所謂フライングタイガースである。国民党政府を助ける為にアメリカが送り込んだ軍人達である。この時はまだ日本との完全な戦争状態になることを避ける為にだ。あえて義勇軍としたのである。
彼等は重慶に迫る日本軍の航空機と戦っていた。その中でだ。
日本軍の戦闘機である隼に乗る者達はだ。そのことに気付いたのである。
「あの、今回の敵ですけれど」
「パイロットが」
彼等はだ。基地に戻ってから怪訝な顔で話をした。まずは自分達が見たものを否定しようとしていた。
「顔が違いましたよ」
「あれは亜細亜人の顔じゃないですよ」
「あっちの顔でしたよ」
「ああ、御前等も見たか」
隊長の一人が部下達の怪訝な言葉に応えて言った。
「俺もだ。あれは絶対に」
「ええ、亜米利加人です」
「ヤンキーです、間違いありません」
「あの顔は」
「何で亜米利加の奴等がいるんだ?」
彼等は怪訝な顔で話す。これは至って政治的な理由からだった。
その理由により彼等はである。公式でないにしろアメリカ人達とも戦うことになったのである。そしてフライングタイガースの面々もだ。
「ジャップの奴等かなり驚いていたな」
「ああ、侵略者共のあの顔」
「かなり笑えたな」
「全くだ」
基地のバーで酒を楽しみながらの話だった。酒はバーボンと老酒がある。木造の粗末な、それでもアメリカ風のそのバーの中でだ。円卓を囲んで話していた。
「さて、じゃあ明日も戦うか」
「中国の人達の為に侵略者達を倒すぜ」
「ああ、やってやろうぜ」
「しかしな」
ここで一人の男が言った。緑の目にブロンドの髪の背の高い男だ。鼻が高く赤らみ気味の顔だ。髪は丁寧に後ろに撫で付けている。
その彼がだ。こう仲間達に言うのだった。
「強かったな」
「ジャップのパイロットがか」
「強かったか」
「ああ、強かった」
こう言うのであった。
「それもかなりな」
「そういえば動きはよかったな」
「ああ、腕もいいしな」
「戦闘機の性能もな」
「馬鹿にならなかったな」
中間達も彼の話を聞いてだ。酒を飲む手を止めたうえでだ。こう口々に話した。つまみにしているひまわりの種を食べる手も止まっている。
「思いの他強かったな」
「案外以上にな」
「ドイツのパイロットと比べて弱いって聞いてたんだがな」
「手強い奴が多いな」
「だからだ。油断できないな」
彼は真剣な顔でまた話した。
「この相手はな」
「ああ、それじゃあエドガーよ」
「いいか、スコット大尉」
彼等はその真面目な顔でだ。彼の名前を呼びながら話した。
「あんたも気をつけろよ」
「撃墜されたらそれで終わりだからな」
「それはな」
「わかっている」
その彼エドガー=スコットは真面目な顔で頷いた。
「日本人は強い。それは胆に命じておくさ」
「ああ、俺達もな」
「それは頭に入れておくか」
こんな話をしながらだった。彼等はこれからのことを考えていた。スコットは酒が終わると一旦外に涼みに出た。するとそこに国民党軍の将校の服を来た男が来た。黒い髪を短く刈って目が少し吊り上がっている。唇は薄く背はスコットより少し低い程度である。その彼が飄々とした足取りで来たのである。
「スコット大尉ですか?」
「貴方は確か」
スコットは覚えたての中国語で返した。しかしその将校はだ。気配りからか英語で返してきた。中国語、それも上海訛りが見られる英語であった。
「はい、劉白邦です」
「そう、ミスター劉でしたね」
スコットも彼の言葉を受けて英語で返した。
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