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小さな英雄

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5部分:第五章


第五章

「信じます」
「ああ、信じよう」
 話すその間も空から目を離すことはできなかった。ドイツ軍の航空機はそのまま空を進んでいく。そのまま堂々とロンドンに攻め込もうとする。しかしだった。
 彼等の上からだった。
「あっ!?」
「あれは」
 突如として現れた戦闘機達がそのドイツ軍に殺到するのだった。そうして。
 そのまま次々と撃墜していく。彼等は前からも左右からも現われドイツ軍に襲い掛かるのだった。
「空軍ですよね」
「ああ、彼等だ」
 曹長は確かな声でヘンリーに答えた。
「空軍が来てくれたんだ」
「じゃあこれでロンドンは」
「助かる」
 曹長は言い切った。
「これで。助かるんだ」
「そうですよね。見たら」
 その戦闘機達はエンジンが一つのものだけではなかった。二つのものもある。彼等がドイツ軍に殺到しそのうえで激しい戦いを繰り広げていた。
 ドイツ軍も迎撃する。お互いに回旋し合いドッグファイトを展開する。その中で撃墜され空中で四散していく機体が出て来ていた。
「空軍は!?」
「大丈夫だ、こっちが勝っている」
 曹長にはわかった。数はこちらの方が下だった。半分程度だ。だがそれでもイギリス空軍は決死の意地見せ戦いを有利に進めていたのである。
 たがてドイツ軍は押されだしていた。イギリス軍は一旦集結しそのうえで彼等に襲い掛かる。これが全てを決めたのであった。
 イギリス軍のその攻撃を受けてドイツ軍は崩れた。そのまま退却していく。イギリス軍は空での戦いに勝利を収めたのである。
「勝ったんですよね」
「ああ、勝った」
 二人はその戦いをずっと見守っていた。曹長は退くドイツ軍を見ながらヘンリーに告げた。
「間違いない、勝ったんだ」
「イギリス軍が」
「イギリスは救われた」
 曹長は次にこの言葉を出したのだった。
「本当にな」
「救われたんですか」
「ああ、よく知らせてくれたよ」
 今度はヘンリーの方を見て言うのだった。
「坊主、本当にな」
「いえ、僕は」
「いや、坊主もいてくれたからだ」
 微笑んで彼に告げるのだった。
「だからイギリスは勝てたんだ」
「僕もいたから」
「戦争はただ戦場で戦うだけじゃない」
 曹長はさらにこうも告げるのだった。今は彼に顔を向けて。ヘンリーもまたその曹長の顔を見ている。
 
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