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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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ワールド・カタストロフ~クロスクエスト~
  Round《4》~ワンサイド・ワンサイド~

 
前書き
 ところで自分の中ではライト君の方はスペルは《RIGHT》、ライトさんのほうはスペル《Right》で分けてたりします。……話の大筋とは関係ないですけどw 

 
 さて、いよいよデュエル大会も一周目の大詰め。残る試合は後二つ。

 その前者――――第七回戦に出場するプレイヤー、二人。

 一人目は、《雷獣》の異名をとる男、《狩人》のライト。ユニークスキル《狩人》を用いて、様々な武器を操る。今日は専用の鎧に身を包み、大型の刀とスラッシュアックス、そしてチャージアックスを持ってきている。

 もう一人は、《死神》のアスカ。ユニークスキル《双剣》によって、レイピアの二刀流を使いこなす。ギルド《希望騎士団》ギルドマスター。アルビノ体質による白い髪、そして赤い瞳が陽光を反射して煌めく。

 一部が混じりあった、異なる世界から来た二人。

 一人は《神》。

 もう一人は《無神教》。

 一人はあらゆる全てを焼き尽す、雷の化身。

 もう一人は、あらゆる異能を消去する、神の否定者。

「久しぶりの直接対決だな」
「やるからにはホンキでいくぜ。おまえもそうおもってるんじゃねぇのかよ?」
「違いねぇッ!!」

 ニヤリ、と笑う、二人の青年。

 火ぶたは切って――――

 【デュエル!!】

 今、落とされた。

「シィッ!!」

 最初に動いたのはライトだ。刀――――《神刀・希望之未来》を構えると、雷電の如き速さで疾走。アスカに迫っていく。

「ちぃッ!」

 対するアスカも動く。スキル《全ての生き物は眠らん》や《無限螺旋》を駆使して、ライトに状態異常を与え、戦いを有利にしようと動く。

 アスカのもつ状態異常付与スキルは、完全無効化耐性を保持している存在――――たとえばミヤビや、《神風》の方のキリト、そして《白亜宮》の面々のような者達以外にならば、いかなる状況でも効果を発揮する非常に強力な物だ。

 アスカ自身、その技能が非常に高いため、これらを組み合わせてトリッキーなだけでなく、パワータイプよりの戦い方もできる。

 対するライトは、多彩なスキルで敵を追い詰めていくタイプのプレイヤーだ。主に《狩人》での戦いが常だが、基本的には召喚術で遊戯王OCGのモンスターや、アインクラッドで戦ってきた敵たちを召喚したり、異能である電撃を駆使して戦う。

 しかし今は、そのどちらも姿を見せない。
 
 それどころか、今の今まで、どちらも一度もソードスキルというものを利用する兆しすら見せていないのだ。

「新スキル、手にいれたんじゃねぇのかよ」
「お前にゃ効果が無いのは知ってるからな」
「やっぱ知ってるか。そーだよなぁ……でもまけねぇっ!!」

 その理由は、アスカの異能に起因する。

 『 』に連なる神々が、彼に与えた使徒としての異能は、単純に《自身を対象とした異能の無効化》。それは《異能》がどのような括りであっても構わず――――つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()

 異能使い、そして大量のスキル使いであるライトにとって…それはたとえ《漆黒の勇者》の方であっても…天敵となる。

 ただし――――相手が、スキルが効かない空間でも強い存在ならば、全く意味をなさないのだが。

 例えば《月の剣士》ジンのように、本人に強力な武術の心得がある者や。

 例えばワールドのように、空間そのものに異常をきたすタイプのユニークスキル使いや。

 例えばグリーアシリーズのように、本人が異常に強い者達や。

 そして――――ライトのように、様々な攻撃手段を持った者。

「ドリャァァァッ!!」

 激しい雄叫びと共に、ライトがスラッシュアックスを振り回す。帯電したその一撃は、電撃のダメージこそ入らないモノの、十分に凶悪な威力を秘めている。ライトとアスカのレベルはほとんど変わらない。ライトの世界は早期にSAOがクリアされたため、さほど高レベルではないモノの、筋力重視の彼のステータスは、正直な話アスカよりも上を行く。

 故に、アスカは避ける。そしてカウンター――――

「せぃっ!!」

 体のピンポイントに向けて突きこまれたのは、ワイヤーのような光を放つ剣技。

 本試合初のソードスキルだ。名を、《ハウリング・マリオネット》。モンスター専用状態異常技にまれに存在する、《操り》状態を発現させる唯一のプレイヤー用技。

 この攻撃を食らった相手のアバターは、一定期間技の使い手にコントロールを奪われる。既存のアイテムやスキルで無効化することのできない強力な技、だが……

「――――ふんッ!」

 ソードスキルの輝きが、突如生まれた空間の歪みに吸い込まれて、消える。

 ライトのデータに刻み込まれた、ダーク専用スキル、《滅殺剣》。そのソードスキル無効化スキル、《螺旋》だ。
 
「おいおい、回避できないんじゃねぇのかよ……」

 六連撃全てが消滅したことで、状態異常も無意味なものと化す。技が効かないと悟ったアスカは、すぐに敏捷値を生かして回避する。

 再び距離が空く。だが、ライトには弓がある。現在は装備していないモノの、すぐに取り出せるだろう。

 一度ライトの攻撃を受けたら、あとは成すがままに蹂躙されて終わりだ。連続重攻撃はライトの十八番。

 使われないうちに、倒さなければならない。

「きびしいな……」
「サイレンダーするかね?」
「おことわりだ。おまえもおなじ状況だったら降参なんてしないんじゃねぇのかよ」
「ハハッ、違いねぇ!」

 顰め面で言い放ったアスカに、獰猛に笑い返すライト。

 ライトが大太刀とスラッシュアックスをしまう。代わりに抜き放ったのはチャージアックス。盾と剣に分離する便利武器だ。

「しぃいっ!!」
「らぁぁぁッ!!」

 激突する剣と剣。その衝撃を利用して場を切り抜けるアスカを、神速で追いかけるライト。二本のレイピアが閃き、時折迫ってくるライトの攻撃をいなす。

 ライトのチャージアックスは、時間経過で斧の形に戻さなくてはならない。武器の形状が変わると同時に、次の武器が取り出される。二本の短剣……《双剣》だ。

 ライトの装備は鎧系。どちらかと言えばタンク系の装備だと言える。しかし、電撃による高速移動で、そのデメリットは打ち消されている。つまり、双剣の手数の大さとスピードも殺されないのだ。

 両者の剣がぶつかり合う。ライトの剣からは電撃が。アスカの剣からはソードスキルのエフェクトライトが。

 時折異能や《螺旋》で無効化される光が見えるが、お互いに隙を見せることはない。

 そして、両者の剣がかみ合ったその数、二百を超えようかという時に――――

 アスカの体から、ダーククリムゾンの何かが、流れ始めた。

「……来るかっ!?」
「ぐぅ……ッ!?」

 ライトが距離を取り、使用者であるはずのアスカがうめく。

「ぐ、うぉ、ああああああッ!!」

 周囲の空間が、アスカの闇に浸食されていく。

 《ダークマター・カオスワールド》。戦闘中、ランダムタイミングで起動する、アスカの必殺技とでも言うべき存在。

 周囲に存在する命ある者から、特大ダメージと共に最大HPの数値を奪い去る。

 今回はライト。ダメージと共に、そのHPが喰われる。重装備系のライトはもちろん最大HPも多いので、さしたるダメージとはいかないが……問題は、その効果が『ドレイン系』であることだ。

 アスカのHPが、増えていく。時間経過と共に奪われた分は戻って来るが、使用者の最大HPの数値には残ったままだ。

 また、戦況が拮抗した。

「マジかー……」
「マジだよ……ッ!」

 チャージアックスの盾を構えるライトに、アスカの剣技がさく裂する。

 スキル、《暗黒剣》。《原典》の世界にも存在するスキルと同名にして全く異なる、《ダークマター・カオスワールド》の所持条件でもあるそのスキルは、相手にダメージと同時にエクストラダメージを与えやすくするスキルである。

 例えば、出血の状態異常であるとか、部位欠損であるとか。

 ライトが盾を取り出したのは、それを避けるためだ。アスカの攻撃をいなしていく。

 しかし、アスカの動きも以前よりいい。前にもまして、なかなか戦いが動かない。

 アスカが隙を見せないのだ。

 ――――ならば。

 ――――隙を、作ってしまえばいい。

「――――《召喚術》」

 そうライトが呟くと、その腰にカードホルダーが出現する。

 取り出されたのは、一枚のカード。ライトたちの世界の主観からすれば、もう十年近く前のTCGのカードだ。

 名は――――

「闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が(しもべ)に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)!」

 蒼藍を基調とした、光り輝く翼のドラゴンが姿を現す。

「なっ……このタイミングで!?」
「行けッ、ギャラクシーアイズ! 破滅のフォトン・ストリィィィムッ!!」

 輝くブレスが、銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)から放たれる。

「おれにきかねぇって知ってんじゃねぇのかよ……!」

 その輝きは、しかしアスカを焼くことはない。彼の異能が、ドラゴンのブレスすら無効としているのだ。

 だが――――

「お前にダメージを与えるのが仕事じゃぁ、無いんでな!」
「……!?」

 気が付けば、目の前にはライト。その手に握られているのは《神刀・希望之未来》――――!

「ぐ……ぁぁッ!?」

 勢いよく振りかぶられた刀は、アスカに避けがたい一撃を与える。部位欠損は無効だが、クリティカルダメージまでが入らないわけではない。

「もう一丁!」

 返す太刀でもう一撃。

「まだまだぁぁッ!!」

 ラッシュが、始まる。

 アスカが最も危惧していた、ライトによる「ずっと俺のターン」が、完成したのだ。

 ここまで来たら、勝敗はもう決したも同然である。増えたはずのアスカのHPは、再び削られて――――

「ぐふっ……」
「おー、やっと勝った……」

 【Seventh-Battle:Winner is Right!!】

 ようやく決着と相成ったのだった。



 そして舞台は、第一ラウンド最後の試合へとシフトする――――



 ***


 
 最終試合である第八回戦を戦う片割れ、《月の剣士》ジンは、控室で最終調整を行っていた。

 ソードスキルを無効化する刀、《八雲》。

 軽くて丈夫な万能刀、《蒼天~メモリアル~》。

 そして敵のステータスを開帳できるスキル、《千里眼》。

 此処に《千里眼》のmodであるレジェンドスキル、《月光神竜》が加わって、《月光石火》《月光乱舞》などを組み合わせれば、大抵の相手に対応できる。

 特殊ルール下であり、なおかつ相手が油断していた状態であったとは言え、仮にもあのタツに一度勝利を収めたプレイヤーだ。そう簡単に倒されてしまうほど、軟な構成はしていない。

 彼もまた、十分に強力なプレイヤーであった。

「……っつってもなぁ……《千里眼》は発動に時間かかるし……何より相手の情報が分からねぇんだから……そりゃ苦戦するだろうなぁ」

 はぁ、とため息をついてみる。

 リオンもそうだったが、ジンの対戦相手も何者なのかさっぱりわかっていないのだ。

 予想できるところでは、『神話剣』の世界から来たツワモノ。

 『ブラッディ・ブライド』の世界から来たバグ。

 『カラーズ』の未来から来た壊れ。

 一応この辺は色々対策して来てはあるが、全くの新顔が登場したら警戒しなくてはならない。《千里眼》があれば相手の情報などは丸わかりだが、それにしたって開始から一分待たなくてはいけない。非常に手の込んだことに…実際はただの偶然なのだが…《支度時間》は《千里眼》の溜め時間を満たさない四十秒、なおかつこの時間終了後はデュエル開始までスキルは封じられてしまう。

 つまり、試合開始から一分間の間、耐えていなくてはいけないのだ。

「……まぁ、どうにかなるだろ」

 そう、ポジティブに考えてみる。

 どんな敵が来ても、倒して先に進むのみ――――

 勝負屋としての血が騒ぐ。




 だがジンは、この後、度重なる驚愕におののくことになる。

 最初の一つは――――

『それでは、第八試合、プレイヤーネーム《ジン》VS《ジン》を開始いたします。お二人は――――』

「――――俺と、同じ名前……だと!?」

 対戦相手のプレイヤーは、ジンと同一の名前、『ジン』であった。異なるのは、スペルがジンは【Gin】なのに対して、相手は【Zinn】である点か。ちなみにスペルが同じプレイヤーになら以前会った。向こうは『ギン』という読み方だったものの。
 
 まさか能力まで同じ、とは言うまいし、当然外見も違うだろう。

 だが、同名の相手を当ててきた、開催本部の気が知れない。

「どうなってんだ……?」

 そんなことを思いながら、転移光に包まれるジン。



 コロシアムに転移して、ゲートを出る。闘技場には、既に一人のプレイヤーが佇んでいた。

「おっせぇぞ」

 一言言い放ったそのプレイヤーが放つのは、何と言うか……不良っぽい気配だった。

 髪の毛は薄い銀色だ。目の色は左が水色、右が赤。顔立ちは非常に整っていて、微笑めば相手のいない女性はすぐに陥落してしまいそうである。

 服装は髪と同じく白や銀色、青系統の色を基調としたものだ。目つきが悪く、表情は笑み。それも、『笑う』の方ではなく、『嗤う』の方の。

 武器は見当たらない。素手で戦うタイプのプレイヤーなのだろうか。

「悪い」
「まぁいいさ。どうせすぐに終わらせるんだから……」

 そこまで対戦相手の方の《ジン》が言った、その時。

 【デュエル!!】

 閃光が、瞬いた。ジンが《千里眼》を発動させるのと同時に――――

「……よッ!!」

 どこからともなく、《ジン》の両手に武器が搭載される。

 その片方は、十字をかたどったロングソード。

 もう片方は、十字が描かれたタワーシールド。

「――――《アカシック・アーマゲドン》!!」
「何……ッ!?」

 知識としては、知っていた。

 その剣技は――――

「……《神聖剣》の、最上位ソードスキル!?」

 つまりこの男は、《神聖剣》の使い手だというのか。茅場晶彦/ヒースクリフ意外に存在しないはずの、二人目の。

 確かこの剣技には、HP吸収能力があったはずだ。威力も高いし、遠距離にも攻撃できる。

「くっ!」

 避ける。ジンは敏捷が高めだ。《神聖剣》のソードスキル位、とりあえず避けることができる。

「へぇ、避けるのか……レベルは、どの位なんだろうなッ!!」

 次の技が来る。盾が真っ白に光り輝き、重突進攻撃。キリト戦でヒースクリフが見せた技だ。それも避ける。

 そしてここで、ジンの《千里眼》がスタンバイを完了させる。

 ――――発動!

「……《月光神竜》!」

 ジンの瞳が月光の色に染まる。神速の移動からの、斬撃。

「――――《月光石火》!」
「むっ!?」

 ザン!

 《月光石火》は、『ジン』を薄く切り裂いた。初撃はジンの物となったのだ。

 その隙に、ジンは相手のステータスを覗く。

『【PN:Zinn】【Se:Male】【Lv:……』

 そして、そこに書いてあったことを見て――――

「な……ッ!?」

 二度目の、驚愕。

 それも、少々信じがたいクラスの。

「お前……その、ステータスは……!?」
「ん? ……何だお前、もしかして相手のステータスが読めるのか? へぇ、面白いな……」

 そこで彼は、ニヤリ、と。

 怖気の奔るような笑みを浮かべて。
 
「だがその時間も……()()()()()

 
 ――――不意に、ジンの体から力が抜けた。同時に、視界に表示されていたはずの《千里眼》のデータが消えていく。どんどん抜けていく力。

「ぐっ……!?」

 気付けば、ジンは地面に膝をついていた。

「これ、は……」
「あばよ」


 ザクリ――――


 倒れたジンに突き刺さり、なぜか一瞬でそのHPを奪い去ったのは――――

 不気味な輝きを宿した、《蒼天~メモリアル~》だった。

 
 ――――【Eighth-Battle:Winner is Zinn!!】
 
 

 
後書き
 ライトさんが召喚したの社長の嫁(ブルーアイズ)にしとけばよかったかと今更。滅びのバァァァストストリィィィィムッ!
刹「うるさいです」(べしっ
 あうっ!

 さてさて、恒例の言い訳タイム。

 序盤の方でアスカさんを《無神教》と表記したのは、彼に異能を無効化する力があるからです。神の存在を否定する、という意味で。彼自身カミサマの遣いらしいですし、べつに無神教というワケではないでしょうけどね。あとアスカさんの「~じゃねぇのかよ」使用率が高すぎた件について。
 だってだって、口癖ってそんなもんだと思うのよ。ジン君の「そりゃ~」とか、リオン君が意外と言葉が丁寧とか、そういう設定を今までのコラボで生かせなかったから、今回はアスカさんがひらがな喋り&「~じゃねぇのかよ」を突き詰めたら……こんなことに……
刹「……」(無言の圧力)
 とりあえず神崎さんごめんなさい。

 そしてmarinさん、ジン君がなんだかよくわからないうちに倒されてしまったこと、深く謝罪します。ジンの能力に関しては、今後明らかになるので……。まぁ、大抵の人がすでに予想付いてると思いますが。

 受験休みが終わるので、次回の更新は大分遅くなりそうです。
刹「もう、何と言うか……とりあえずこの馬鹿作者! とののしっておきます。 
  それでは、気を長くもちながら、次回もお楽しみに!」
  
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