ハイスクールD×D大和の不死鳥
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29辛い過去後編
次の日朱乃さんにイッセーを連れてミカエルとあってほしいと頼まれ指定の神社にきた
イッセーを無事にミカエルの下まで連れて行き、『アスカロン』を受け取らせたあと、ミカエルにも俺の造った聖剣『緋月・黒』を渡してから帰り、俺はイッセーと木場たちにギャスパーの訓練任せて俺は朱乃さんの家に招かれていた。
「お茶ですわ」
「ありがとうございます」
向かい合って朱乃さんとお茶を飲む。
朱乃さんと2人っきりのお茶会、すごく嬉しいんだけど……先ほどから朱乃さんの表情は重い……なにか大事な話でもあるのか?
「ヤマトさん……」
「はい。なんですか?」
訊ねると朱乃さんは恐る恐るといった感じで言う。
「私の話を……私のことを訊いてもらってもいいですか?」
真剣な表情――。俺も真剣な表情でうなずいた。
「以前コカビエルが言ったと思いますが、私はバラキエルの……。私は堕天使の幹部バラキエルと人間の間に生まれた者なんです」
朱乃さんはゆっくりと語り始めた。
「母は、この国のとある神社の娘でした。ある日、傷つき倒れていた堕天使の幹部であるバラキエルを助け、そのときの縁で私を身に宿したと聞きます」
ってことは朱乃さんは堕天使と人間のハーフか?
そんなことを考えていると突然、朱乃さんが背中から羽根を生やした。
いつもの悪魔の両翼と違い、片方が悪魔の翼で、もう片方が堕天使の黒い翼だった。
「汚れた翼……。悪魔の翼と堕天使の翼、私はその両方を持っています」
朱乃さんは堕天使の翼を憎々しげに手に持っていた。
「この翼が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となったの。――でも、生まれたのは堕天使と悪魔の羽、両方を持ったもっとおぞましい生物。ふふふ、汚れた血を身に宿す私にはお似合いかもしれません」
自嘲する朱乃さん。俺は朱乃さんの目を見て言う。
「俺は朱乃さんが好きですよ」
「――えっ?」
「出生のことなんかは抜きで、俺は朱乃さんが好きです」
「私は堕天使でも悪魔でもない、おぞましいバケ―」
最後まで言わせない。
「朱乃さんはおぞましくなんかありません。バケモノでもありません。俺にとって朱乃さんは堕天使だとかそういうもの抜きで素敵な先輩ですよ。俺は部室で飲む朱乃さんのお茶も好きです。朱乃さんの笑顔が好きです。堕天使の血なんて関係ないんです。朱乃さんだから好きなんです」
俺の言葉を聞いて、朱乃さんは泣いていた。
「私……、私だから……?」
俺は朱乃さんの堕天使の羽根を手でなでた。
「はい。朱乃さんだからです。朱乃さんが自分に流れる堕天使の血が嫌いなら、俺がその血ごとあなたを愛します」
ちゅ。
唇で口を塞がれた。っていうかキスされた!?
「……殺し文句、言われちゃいましたわね。……そんなこと言われたら……本当に本気になっちゃうじゃないの……」
ほ、本気?
朱乃さんは俺の両肩に腕を絡め抱きついてきた!?
「あ、朱乃さん?」
対応に困り、咄嗟に抱きしめ返した俺の耳元で朱乃さんが囁く。
「決めましたわ。私、決めました。ヤマトくん、」
「はい」
「リアスは特別なのよね?」
「はい、そうです」
「……そうよね、あちらも本気でアプローチかけてるし、同じ家に住んでるんだし、本妻は無理ね。」
えっと? いったいどうしたんですか、朱乃さん。
「ねぇ、ヤマトくん」
「は、はい……」
「何番目でもかまいませんわ」
「え?」
「そう、ヤマトくんなら何番目でも――何番目でも愛してくれそうですし。それに聖のフェニックス――私の憧れ、ヤマトくんに愛を注いでもらえるんですもの。これから楽しくなりそうですわ」
なにやら1人で盛り上がっている朱乃さん。
「ねぇ、ヤマトくん。『朱乃』って呼んでくれる?」
「い、いいんですか?」
「ええ。私が呼んで欲しいんですの」
「じゃ、じゃあ――朱乃」
「……うれしい。ヤマト……」
ぎゅっ。俺をさらに抱きしめてくる朱乃さん。今の声はいつもの凛とした朱乃さんの声じゃなく、普通の女の子の声だった。
「ねぇ、これから2人っきりのときは朱乃って呼んでくれる」
甘えるような声。『副部長姫島朱乃』の姿ではなく、1人の女子高生になってしまっていた。たぶん、誰かに甘えたかったんだろう。
「はい。いいですよ」
「あなたたち、何やっているのかしら?」
朱乃さんと抱き合っていると部長の声と共に襟を掴まれて朱乃から引き離された。
「リっリ リアス様っ!?」
リアス様は額に手を当て、大きく息を吐く。
「まったく油断も隙もないわ……。ヤマトを誘惑するなんて……、!」
ぎゅぅぅ! 痛い! 俺の耳がリアス様に思いっきり抓られる! いたたたたた!
リアス様は低く迫力のある声で俺に訊く。
「ミカエルとの会談は?」
「無事に終わりました!」
「ミカエルは? イッセーに例の剣を渡したの?」
「は、はい! ミカエルも、もう帰りました!」
「なら、ここにもう用はないわ! 帰るわよ!」
この場から踵を返したリアス様に急いで続く。朱乃さんに頭を下げる
「『特別』のリアス部長がうらやましい限りですわ」
うしろからつぶやく朱乃さん。いつもの朱乃さんの声に戻っていた。
朱乃さんの声にリアス様は一度立ち止まり、俺の腕を引いていく。まるでここから早く俺を遠ざけようとしているかのように。
◆
コツコツコツコツコツコツッ! 神社の石段を降りるリアス様の足音は怒りに満ちたものだった。
その後からついていく俺だったが、石段の半ば辺りでリアス様は石段を外れて、森の中へ俺を引きずり込んだ。
完全に前後左右木々で囲まれた森の中で部長が立ち止まり、うしろを――俺のほうへ振り返った。
「……ねぇ、ヤマト」
暗い表情のリアス様。
「はい」
「朱乃は……朱乃なのね」
「はい?」
「朱乃は副部長。けれど『朱乃』なのね……私は?」
えっと……。
「部長……ですよね?」
俺が「部長」と答えたとき、部長は肩を落した。
「………………そうね。私は部長だわ。――でも『リアス』なの」
すごく気落ちしてしまった声のトーン。まさか――。
「リアスって呼んでもいいんですか?」
「え?」
少しだけ驚いたようなリアス様。
「リアス様が許可してくれるのなら。俺はこれから『リアス』と呼びます! というか呼ばせてください!」
俺が両肩を持って言うと、リアス様は真っ赤になって俯いて小さな声で「いいわよ」とつぶやいた。
心を込めて名前を呼ぶ。
「リアス」
するとリアスからもかえってきた。
「ヤマト」
嬉しいそうな顔と恥ずかしげな顔がまじった状態でにつぶやくリアス様――いや、リアスを抱きしめ、唇を交わした。
続く
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