虎退治
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6部分:第六章
第六章
「しかしな」
「しかし。何だ?」
「もうすぐ夜だぞ」
彼が言うのはこのことだった。
「夜だが。そうなったら」
「安心しな。真横に来たところを撃ってやる」
意を決した言葉だった。
「その時にな」
「真横か」
「ああ、真横だ」
まさにその時だというのだ。
「撃ち抜いてやればいいさ」
「真横か」
「だから。じっくり待つぜ」
バージルは正面を見ていた。そこが相手にとって真横になる。戦車の装甲は正面が最も強く横や後ろはそれに劣る。装甲が最も弱いのは上面である。
「引き付けてな。そこでだよ」
「わかった。じゃあ待つか」
「ギリギリまでな」
彼は意を決していた。そのまま待っていると夕暮れになり遂に夜になった。四人は乾いたパンを食べながら待っていた。そうしてだった。
「!?」
「聞こえたな」
「ああ、聞こえた」
一斉に声をあげた。左手からキャタピラが地面を踏み潰しつつ進んで来る音が聞こえてきたのだ。間違いなかった。
「戦車だ」
「あいつだ」
彼等は口々に言い合う。
「キングタイガーだ」
「来たぞ」
「よし、いいな」
バージルが仲間達に告げた。
「獲物が来たぞ」
「ああ、虎退治だ」
「一撃で仕留めてやる」
そのつもりだった。今か今かと待つ。音は次第に近付いて来る。
そうしてだた。暗闇の中にその巨体が見えてきた。シルエットだけであるが間違いなかった。
「砲撃は?」
「何時でもできる」
ジョーンズがバージルの問いに答えてきた。バージルが戦車のハッチを開けてそこから頭を出して見ている。ジョーンズが砲撃に入っていた。
「今にもでな」
「あと三秒だ」
バージルは言った。
「三秒で撃て。頼んだぞ」
「ああ」
「よしっ」
その三秒が経った。今だった。
「撃て!」
「ああ!」
ジョーンズは彼の言葉に応えた。砲の引き金を引く。戦車が大きく後ろに下がりそのうえで。砲塔が火を噴いたのであった。
それと共に凄まじい衝撃が待った。それが一直線にその暗闇の中にいるキングタイガーに襲い掛かる。しかしであった。
「しまった!」
「外したか!」
バージルとジョーンズは同時に声をあげた。
「僅かだが早かった!」
「すまん!」
「いや、次だ」
外したのはいいとしたバージルだった。
「それよりもだ。来るぞ」
「おい、バージル」
「ここはどうする?」
「動くな」
こうチャーリーとエドワードに返すバージルだった。
「今はだ。動くな」
「動くなか」
「今はか」
「今は碌に動けないからな」
森の中に隠れているからだ。周りの木々がそれを邪魔しているのである。カモフラージュは彼等にとっていいことばかりではなかった。
「動いても無駄だ」
「無駄か」
「そうだな」
「だから今は動いたら駄目だ」
バージルは言い切った。
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