魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
89話:過去を振り返る事、それは辛い事でもある
前書き
ほんと、遅くなってすいません。だって…だってサイバースルゥース面白いんだもん…
実はもう少し先まで書くつもりだったんですが、ちょっと長くなりそうだったのでここで切ります。ちょっと文脈可笑しいとこあるかも…?
ここは機動六課隊舎内にある、医務室。ヴォルケンリッターの一人であるシャマルが基本的に管理する部屋だ。
日頃は訓練や任務で生傷の絶えない隊員達の治療を行う場所であるが、今日のところはベットが二つも使われる事態になっていた。
その中の一つに横になっていたオレンジ髪の少女―――ティアナ・ランスターがゆっくり瞼を開いた。
「―――あ、ティア! 気がついた?」
「……スバル…? あれ…私は…?」
若干ぼやけた視界に、よく知る青髪の顔がニュッと現れた。その正体がスバルとすぐにわかったティアナは、数回目を瞬かせた後、頭を押さえながらゆっくりと起き上がった。
その時丁度医務室の扉が開き、白衣姿のシャマルがやってきた。
「あらティアナ、起きてたの?」
「シャマル先生…えっと……」
「ここは医務室だよ、ティア。覚えてる? 模擬戦での事」
スバルの言葉で思い出すのは、ピンク色の弾丸が迫ってくる光景。
なのはとの2on1での模擬戦にて、スバルと立てた作戦で挑んだが、それさえ防がれてしまい、最後にはなのはの砲撃で落とされたのだ。
その事を思い出し、少し表情を曇らせて「うん…」とスバルに頷いて答えた。
「なのはちゃんの訓練用魔法弾は優秀だから、体にダメージはないと思うんだけど…」
そう言いながらイスに座るシャマル。それを眺めながらベットに腰かける体勢になるティアナ。その時初めて、自分がズボンを穿いていなかった事に気がついた。
そのことに少し顔を赤らめたが、すぐにスバルがズボンを指して出してきたので、「ありがとう」と礼を言っておいた。
その時、ふと視界に入った時計に気がつき、表示されていた時間に驚愕した。
「く、9時!? ってことは…夜!?」
慌てて窓の外を確認してみると、太陽はとっくに沈んでおり空は黒に染まっていた。
ティアナがなのはとの模擬戦を行ったのは昼前。という事は、ティアナは模擬戦で気絶した後、9時間近くもの間眠り続けていた事になる。
「ティア、凄く熟睡してたんだよ? 見てて死んでるんじゃないかなって思えるぐらい」
「最近、ほとんど寝てなかったでしょ? 溜まってた疲れが、纏めてきたのよ」
そう言われて思い返されるのは、なのはの訓練の前後に行っていた自主練。
朝早く起きて、一日かけてなのはの厳しい訓練を受けて、更にはその後に自主練をやる。そんな毎日が続いた所為か、疲れが溜まっていたらしい。自覚はあったものの、その所為で9時間近く寝る事になるとは、考えもしていなかった。
その時、ティアナはあることに気がついた。
「あれ…? 隣のベットは、誰が?」
ティアナが腰かけていたベット。その隣にある別のベットに、中が見えないようにカーテンが周りを覆っていた。どうやら誰かが寝ているらしい事はわかるのだが、その『誰か』まではわからなかった。
そんなティアナの言葉を聞いたスバルとシャマルは、顔を伏せて表情を曇らせた。
「ティアは覚えてる? なのはさんの攻撃を受けた後、なのはさん…砲撃まで撃ってね。それを…士さんがティアを庇って守ってくれたの」
「士さん、が…?」
「それでその後、士君となのはちゃんの戦闘になってね。決着はつかずに終わったけど、魔力の使い過ぎで士君が倒れちゃって。戦闘の疲れもあってか、今はずっと眠りっぱなしよ」
スバルとティアナの説明を聞いたティアナは、思わずその士が眠るというベットに顔を向けた。
耳を澄ますと、おそらく士のものであろう寝息が静かなテンポで聞こえてくる事に気がついた。どうやら二人の言っている事は本当らしい。
「……ティア、起きたら士さんにお礼しなきゃね」
「…うん、そうね……」
士が眠るベットを眺めながら、ティアナはスバルの言葉に素直に頷いた。
ティアナがスバルと共に、医務室から出て数時間が経った時。六課の隊舎には、非常事態を知らせるアラートが響き渡っていた。
状況はミッドの東部海上にて、ガジェットドローンが24機出現し飛び回っているというもの。周辺にはレリックの反応や他のロストロギアの反応はないが、一機ずつの機体速度が今までの比ではない程速くなっていた。
四機編隊が三つ、12機編隊が一つの計四つの編隊で飛行を続けてはいるが、市街地に向かう訳でもなく、海上をただ飛び回っているだけ。
「まるで『撃ち落としに来い』と誘っているようですね」
「そやね……テスタロッサ・ハラオウン執務官、どう見る?」
「犯人がスカリエッティなら、こちらの動きとか航空戦力を探りたいんだと思う」
「うん…この状況なら、こっちは超長距離攻撃を放り込めば済む訳やし…」
「一撃でクリアですよぉ!」
管制室にはやて、フェイト、そして非常事態につき自室待機を解除されたなのはと隊長陣が揃い、ガジェットの動きを見ながらそれぞれ見解を述べる。
「うん。でもだからこそ、奥の手は見せない方がいいかなって」
「まぁ実際、この程度の事で隊長達のリミッター解除っていう訳にもいかへんしな。高町教導官はどうやろう?」
「こっちの戦力調査が目的なら、なるべく新しい情報を出さずに、今までと同じやり方で片付けちゃう…かな?」
なのはの見解を聞いたはやては一度側にいたグリフィスと目線を合わせ、お互い頷いた後「それで行こう」と言い、それにフェイトとなのはも頷いた。
そして場所は移り、六課の屋上ヘリポート。
そこには今回出撃するフェイト、なのは、ヴィータの三人に、今回はお留守番となるフォワード陣とシグナムの八人がいた。
「今回は空戦だから、出撃は私とフェイト隊長、ヴィータ副隊長の三人」
「皆はロビーで出動待機ね」
「そっちの指揮はシグナムと、今は寝てるが一応士だ。留守を頼むぞ」
「「「はい!」」」
「…はい」
ヴィータの言葉に返事を返すフォワード四人。しかしその内の一人、ティアナの返事は他の三人より若干遅れ、しかも元気もなかった。
それを聞いたなのはは、ティアナに声をかけた。
「あぁ、それからティアナ」
「……?」
「ティアナは、出動待機から外れとこうか」
その言葉にティアナは勿論、フォワード一同は驚愕の表情を浮かべる。スバルに至っては、思わずティアナの顔を覗いてしまうぐらい驚いていた。
しかしそんななのはの発言に、周りにいたフェイトやヴィータ、シグナムは驚きもせず、むしろ当然だという表情をしていた。
「その方がいいな。そうしとけ」
「今夜は体調も魔力も、ベストじゃないだろうし…」
「―――言う事を聞かない奴は……使えないってことですか?」
若干顔を伏せたように言ったティアナの言葉に、なのはは「はぁ…」とため息をついた。
「自分で言っててわからない? 当たり前の事だよ、それ」
「現場での指示や命令は聞いてます! 教導だって、ちゃんとサボらずやってます! それ以外での場所での努力まで、教えられた通りじゃないとダメなんですか?」
ティアナが喋っている途中にヴィータが一言言おうと前に出るが、それをなのはが止めた。
それにも気づかず、ティアナは涙を浮かべながら続ける。
「私は! なのはさん達みたいにエリートじゃなし、エリオやスバルみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない! 少しぐらい無茶したって、死ぬ気でやらなきゃ、強くなんてなれないじゃないですか!?」
そう叫ぶティアナの横からいきなり手が伸び、胸倉を掴んだ。ティアナは驚くがそれに構わずその手はティアナをグイッと引っ張った。
引っ張られた先に見えたのは、拳を握り振り上げるシグナムの姿。振り上げられた拳は、今まさにティアナに向かって……
―――が、
ガギィン、と。
シグナムとティアナの丁度間に、何かが突き刺さった。その何かは、そこにいる全員が見慣れたもの―――ライドブッカーだった。
「黙らせたいからって暴力はいけないな~、ライトニング分隊副隊長さん?」
そう言って屋上に入ってきたのは、少し前までベットに寝ていた筈の六課副部隊長―――士だった。
「士さん…?」
「門寺…お前、何故…?」
「おいおい、お前らの中じゃあんな馬鹿でかいアラームならされても起きない程、寝坊助キャラだっか? 心外だなぁ…」
肩を大げさに落とし、両手を広げて歩いてくる。そしてシグナムの側まで来ると、シグナムの拳を抑えティアナの胸倉を掴む手に自らの手を添えた。
「ここで拳を振るったって、全てが伝わる訳じゃないだろ? 今は拳じゃなく、その口で伝えた方が早い」
「だがこいつは…」
「ま、お前が全てを話すのは筋違いだよな」
そう言って士は、胸倉を掴むシグナムの手を無理やり離させ肩をポンッと叩いてから、モニターを出現させる。
「はやて、状況はわかってる。予定変更だ」
『はっ? てか士君、なんでそこにおんの!?』
モニターに映るのは、管制室にいるはやての姿だった。その側にいるリインやグリフィスは、士がいることに驚いていた。
「単刀直入に言う。出撃メンバーを変更、俺とシグナム、ヴィータで出る」
「「「「えっ(なっ)!?」」」」
『何言うとるの士君!? ぶっ倒れてさっきまで寝てた人にそんな役やらせる訳ないやろ!』
「うっせ、俺が決めたことだ。一応伝えたからな、後頼むぜ」
『ちょ、待ち―――』
士ははやての制止の言葉も聞かず、通信中だったモニターを消した。
「そういう訳だ、いくぞヴィータ、シグナム」
「いやいやちょっと待て、『そういう訳だ』じゃないだろ!」
しれっとした表情で止まっているヘリに向かうが、ヴィータがその前に異議を唱えた。
「なんだ? 何か問題でもあるのか?」
「大アリだ! はやての言うこと聞かずに、何勝手なことしてんだ!」
「さっきはやてには伝えただろ? 何も問題はないと思うんだが?」
「お前な~…」
士の台詞に、ヴィータは呆れるように肩を竦めた。それを見ていたシグナムは、士の背後からやってきたシグナムが士の肩を掴んだ。
「ん?」と思い振り返るが、シグナムの真剣な眼差しを見て士も表情を変えた。鋭く光る、敵を見るときと同じような表情に。
変わった士の表情を見て、シグナムは一度息を吐いた後士の肩から手を離した。
「わかった、ついて行こう門寺」
「シグナム!? お前…!」
「こいつが一度決めた事を曲げないことぐらい、お前もよく知っているだろ」
「そう…だけどよ……」
シグナムの言葉に、ヴィータは渋々ながらも納得した。シグナムはそれを聞いて士の横を通ろうとする。
「―――悪ぃな、手間かけさせちまった」
「ふっ、問題ない」
笑みを浮かべ横を通り抜け、不満げな表情のヴィータを連れてヘリの中に入っていった。
それに続き士もヘリに向かう。その途中で話についていけなくなったなのはの横まで行くと、その足を止めた。
「昼間も言ったが、自分に何が足りなかったかわかったか?」
「……いえ」
「じゃあお前のやる事は一つだ。―――お前の思っている事を全て話せ」
「っ…!」
「お前が戦ってあいつらに伝えたかった事、あいつらをどう思っているのか、お前の教導の意味……その全てを、だ」
「………」
「今は四人共…特にスターズの二人はかなり混乱している。俺達が戻ってくるまでに、話終わらせとけよ? そしたら俺からありがた~いお言葉をくれてやる。わかったか?」
「……了解…」
なのはの返事を聞いた士は再び歩き出し、今度はフェイトの隣へと移動する。
「―――なのはの事、頼む」
「…ほんと士って、身勝手だよね?」
「それを理解した上で頼んでるんだよ…」
「……わかった。でも、終わったら何か奢ってね?」
「はぁ…りょ~かい…」
お前も狡くなったもんだ、と呟きながら片手を上げてヘリに向かう士。フェイトも呆れたような表情をして、その姿を見送った。
「それじゃあ出しますが、いいですか!?」
「おう、頼むわヴァイス!」
そのやり取りだけして、ヘリはヴァイスの操縦でヘリポートから飛び立っていった。
飛び立つヘリの風が収まって夜の闇に消えるまで、屋上にいた全員が六課隊舎から離れて行くヘリを目で追っていた。
「……ティアナ」
「は、はい…」
「まずは……ごめんね。模擬戦のアレは、ちょっとやり過ぎだった」
なのはのその言葉に、ティアナは「いえ…」とだけ答えた。
「なのは…」
「大丈夫だよ、フェイトちゃん。ちゃんと皆に話すよ」
心配そうに見つめるフェイトに、なのははそう言ってフォワード四人を見渡す。
「私が昔やってきた事と、私が起こしたミス…そして、私の教導の意味も…全部……」
場所は移り、ガジェット殲滅に向かうヘリの中。士はベルトを付けた状態で、ライドブッカーから取り出したカードを確認していた。
そんな落ち着いた様子に、ヴィータは席に座りながら腕を組み、その腕を指でトントンと叩いていた。その隣ではシグナムが、同じように腕を組みながら壁に寄りかかるように立っていた。
「ヴァイス~、後どれぐらい?」
『そうッスね…だいたい十分ぐらいじゃないですかね』
「あっそう? OK、了解した」
そう言うと、士は席から立ち上がって大きく背伸びをした。そして「よしっ!」と声を出し、腿を叩いた。
「二人共、ちょっといいか?」
「なんだよ、士」
「………」
士の言葉を聞いたヴィータやシグナムは目線を向ける。二人がこちらを見たのを確認してから、にへらと笑って口を開いた。
「今回、俺だけでやっていい?」
「はぁっ!?」
いきなりの事に大声を上げたのは、ヴィータだった。シグナムもあまり表情に出していなかったが、内心は驚いている。
「お前、作戦わかってんのか!? こっちの手の内見せないように―――」
「じゃあ聞くが、お前俺の〝手の内〟を全部知ってるか?」
「そんなのおめぇ―――って、あれ?」
士に問われて、改めて考えるヴィータ。
十三の姿に変身し、その力の全てを引き出す事ができる―――仮面ライダーディケイド。その力は常識を超え、その全てを知る人は……士のみだ。ディケイドの全てを把握している者など、士以外にはいない。
そういう考えに至ったヴィータは、「あっ…」と声を上げた。その様子に士も一回首を縦に振った。
「俺の手持ちの手札の内、確かに奴らの知っている物もあるだろうよ。だが、それが全てではないさ。晒すなら少ない手札より、多い手札の方がいいだろ? それに、俺には切り札(ジョーカー)もある」
「だけどよ……」
「まぁ任せときなさいって。魅せてやるよ、俺の戦い方を」
なっ、と言ってシグナムに視線を送る。その視線を受けたシグナムは、一度溜息をついた後腕組みを解いて、その手を腰に当てる。
「……お前は、言っても聞かないだろ?」
「シグナム!?」
「さっすがシグナム、わかってらっしゃる~」
シグナムの言葉に、ヴィータは思わず声を上げる。対して士は安心するように笑顔を見せた。
『士さん、そろそろ目的地に着きます!』
「了解、着いたらその場でハッチ開けといて。すぐ出るから」
『はい!』
ヴァイスからの連絡に答えると、士はそのままハッチの方に向かう。
「…しかし士、お前が戦うとなれば、ライダーの力を使うのだろ? ライダーは空で戦うのは苦手だと思うのだが……私と戦った時のような力は…」
「あぁ、はやての承認を受けないと〝変身〟できない。ま、承認もらうのも面倒だし、使う気はさらさらない」
「ならどうするのだ?」
その途中で、再び腕組みをして尋ねてきたシグナム。すると士は、口角を吊り上げて笑みを作る。
「喜べよ、シグナム。俺の手持ちの手札(カード)を晒してやるんだ、興味あるだろ? 俺がどうやって、〝変身せずに〟あのガジェット共を殲滅するのか、な?」
その士の言葉に、二人は耳を疑った。
そもそも士の本局での魔導士としての扱いは、陸戦魔導士。飛行魔法を使用せず、地を駆け戦う魔導士だ。
それが海の上を飛ぶガジェット達を、士はライダーに変身せずに〝生身〟で戦うと言ったのだ。驚くのも当然と言えよう。
「さ、今日は祭りにしよう」
〈 Stand by 〉
そんな二人を他所に、士はトリックスターを腰に当て、ベルトへ変える。そして出現したライドブッカーから、二枚のカードを取り出した。
「やっぱ祭りには、仲間が多い方がいいだろ?」
〈 ATACK RIDE・GOURAM. ATACK RIDE・AUTO VAJIN 〉
取り出したカードをバックルに入れて発動。士の前に灰色のオーロラが現れ、士を通り越すようにスライドする。
そしてオーロラが消えた瞬間ヘリが不自然に揺れ、中に一台の銀色のバイクと巨大なクワガタがヘリの中にいた。
『ちょ、士! なんかやらかしたか!?』
「あ、悪い。急に荷物が増えると困るよな?」
『いきなり重くなるもんだからびっくりするじゃねぇか! とにかく目的地だ、ハッチ開けるぞ!』
ヴァイスの通信が切れると同時に、ヘリのハッチが開かれる。隙間から流れる潮風に目を細めるが、そんな風程度では士の笑みは消える訳もなく。
「さぁ、行こうぜ」
士のその言葉と共に、銀色のバイクは人型のロボットへと変形し、巨大なクワガタは羽を広げて浮き上がった。
少しだけ時間は戻り、六課の一室。
向かい合うソファに、それぞれフォワードの四人となのは、フェイトが座っていた。
「―――出張任務の時も言ったけど、私が生まれた世界…〝地球〟は、魔法技術のない世界。そんな世界では魔力があっても使う事もないから、普通なら…魔法に関わる事のない人生を送っていたのかもしれないね」
そう言いながら、キーボードを操作しモニターを出現させた。
そこには過去のなのは―――小学校に通う彼女の姿が映し出されていた。その側には四人も一度はあったアリサとすずか、そして今の上司である士の子供の頃の姿もあった。
因みにこの時、なのは達三人の姿にフォワード四人が『あ、かわいい…』など思ったが、なのはとフェイトがその事を知る由もないことだが。
「でも、事件は起こったの。輸送中のジュエルシードを追って地球に来たユーノ君と出会って、そこから魔法に関わっていったの」
今度モニターに映ったのは、フェレットの姿のユーノを助けるなのは。そしてユーノから渡されたレイジングハートを手に、暴走するジュエルシードを封印するシーンだった。
「当然魔法技術のない地球じゃあ、ミッドの魔法学校みたいのはないし、私自身に特別なスキルがあった訳じゃない。だけど地球では珍しく、大きい魔力を保有していたから、当時九歳だった私はユーノ君の手伝いでジュエルシードを集める事になったの」
次に流れたのは、地球の海鳴の海上で戦うなのはとフェイトの姿だった。
それを見た四人は……特に、フェイトの保護を受けているエリオとキャロの二人は驚いた。
「あれは…」
「フェイト、さん…?」
「私は当時、家族環境が…ちょっと複雑でね。なのはとユーノが探していたジュエルシードを、私も探していたの。そしてそれを巡って、なのはとは敵同士だった」
「フェイトさんと、なのはさんが…!?」
「この事件の中心人物だったのは、フェイトちゃんのお母さん。その人の名前を取って〝PT(プレシア・テスタロッサ)事件〟、もしくは〝ジュエルシード事件〟と呼ばれているの」
そう説明している間に変わった映像は、フェイトがプレシアに痛めつけられるシーンだった。そして最後に映ったのは、フェイトとなのはの決戦の映像だった。
九歳という小さき姿で戦う二人。それぞれが魔法を放つ瞬間が映し出され、そしてなのはの〝スターライトブレイカー〟も映し出された。
「収束砲!? こんな大きな…!?」
「九歳の…女の子が…!?」
「ただでさえ、大威力砲撃は体に負担がかかるのに…」
その映像を見たティアナ以外のフォワード陣の三人が驚いてそう言った。ティアナもその映像を、唖然とした表情になりながら見ていた。
「その後もあまり時間を置かずに、次の戦いに突入したんや」
その時、部屋の入口付近から声が聞こえてきた。
全員が一斉に顔を向けると、そこにははやてが立っていた。
「は、はやて部隊長!?」
「はやてちゃん、なんでここに…?」
「いやぁ、士君が勝手してくれて頭にきてるのに、なのはちゃんが大変な事になりそうやったから、ちぃと手伝いでも…と思うてな」
そう言いながら、はやてはなのは達と同じソファのフェイトの隣に腰を下ろした。
「ほんとは仕事をサボりたかっただけなんじゃないの(ボソッ」
「ちょ、ちゃうよ! そんな部下の示しにもならない事、するわけないやん!」
「…はやてちゃん、それあんまり説得力ないような」
「ヒドッ!」
なのははこう言うが、はやては常にサボってる訳ではない。他部隊への挨拶回りや部隊長が扱う書類の処理、そして部隊の運営の一部を担っている。そういう意味では、なのはや士の仕事量とあまり違いはない。
まぁ、幼い頃からの付き合いである二人としては、はやてがそういう事を言うのはあまり合わないと思っていたから、こういう風に言ったのだが…それはまぁ、仕方がないという訳なのだが。
「…取りあえず、管制はリインやシャーリーがおるから、私がおらんでも大丈夫やろ」
まぁ私の事は置いといて、と無理矢理な感じで話題を変えようとする。その露骨さに、四人も流石に苦笑いを浮かべる。
「なのはちゃんの次の戦い、それは私や副隊長達が深く関わってくる事件―――〝闇の書事件〟が始まったんや」
「なのはは当時のヴィータ副隊長との襲撃戦の末、撃墜未遂と…敗北を喫した」
二人の説明の中次に映った映像は、ヴィータの攻撃で防壁を突き破られ、吹き飛ばされるシーンだた。
それを見た四人は、当然驚きの声を上げる。当の本人はそれを見て、過去の事を思い出しているのか苦々しい表情を浮かべていた。
「それに打ち勝つ為に、同じく撃墜未遂となったフェイトちゃんとなのはちゃんが選んだのが―――当時はまだ安全性が認められていなかった、カートリッジシステムの使用やったんや」
「体への負担を無視して自身の限界を超えた出力を、無理矢理引き出すフルドライブ―――〝エクシードモード〟」
はやてとフェイトの説明の間に、映像はなのはと〝闇の書〟…基〝夜天の書〟の管制プログラム―――リインフォースとの戦闘シーンが映し出された。
〝エクシードモード〟を発動し、リインフォースへと突貫し、砲撃を放つなのは。その様子を見た四人は、その激しい戦闘に驚きを隠せないでいた。
「…誰かを救う為、自分の思いを徹す為の無茶を、私は続けたの。だけど…そんな事を続けて、体に何も起きない筈がなかった……」
悲しい表情のまま、なのははそう言う。次に映ったのは、地球とは違う雪降りしきる世界。
「事件が起きたのは、私達が入局して二年が経った年の冬。私はヴィータちゃんと士君、部隊の人達と一緒に異世界への調査任務を行っていた時の事だったの」
異世界での任務中に、未確認体が部隊を襲撃し、なのは達は応戦。その最中に、なのははこの日まで続けてきた無茶に体が付いて来れなくなり、未確認体の攻撃受けてダウン。それを士がなのは庇おうとして逆に負傷、そして後退するなのは達を含めた部隊を掩護する為に残った。
結果部隊の士を除く全員は、負傷はあれど無事帰還。士は〝大ショッカー〟に囚われ、その後なのは達と戦うこととなった。
そのことを、映像となのはの言葉で知った四人は、先程以上に驚きを隠せないでいた。
「士さんが、なのはさん達と…!?」
「私が無理をし過ぎた所為で、士君が捕まって、私達と戦う事になった。私が無理をせず、体を休めながら過ごしていれば、こんな事にはならなかった筈なの。だから私は、他の人にこんな思いをさせたくなかったの。無茶をしないように、皆が無事に帰って来られるようにしたかったんだ…」
その言葉を聞いて、四人は涙を浮かべ始める。その様子を見たフェイトは、ティアナに話しかける。
「ティアナ、ホテル・アグスタの時の失敗の事覚えてる?」
「…はい」
「確かにね…無茶をして、命を懸けての戦いはあるよ? でも、あの時のミスショットは、仲間の―――スバルの安全や命を懸けてでも、どうしても打つべき場面だった?」
「っ…!!」
「訓練中のスバルとのコンビネーションは、一体誰の為の…何の為の物だった?」
フェイトにそう言われたティアナは、目を見開いた後すぐに顔を俯かせた。他の四人も同じように顔を俯かせ、周囲には重い雰囲気が流れる。
その時、天井に付いたスピーカーからアナウンスが流れた。
『士副部隊長、ガジェットⅡ型にエンカウント! 戦闘が開始されました!』
「「「「っ…!」」」」
「ん? 士君、だけ…?」
「シグナムやヴィータは…?」
「映像、繋ごうか?」
アナウンスに疑問を覚えるなのはやフェイト。はやてはすぐにモニターを開いて、管制室と同じ映像を大きなモニターに表示した。
そこには、銀色の人型ロボットと巨大なクワガタ、そしてそのクワガタの足を掴んで飛んでいる士の姿があった。
後書き
次回は士の戦闘シーン、説教シーン、お休みシーンの連続です(笑)
投稿はいつになるやら…。寮の部屋はインターネット環境ないのでちゃんとは投稿できないと思いますけど、最悪携帯で投稿しようかと思います。なるべく早く。
次回まで長くかかるかもしれませんが、また首を長くして待っていてください。ご感想、誤字脱字などのご指摘、待ってま~す!
では、また次回まで。さよなら~(^^)ノシ
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