フリージング 新訳
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第18話 She is Rana Linchen 2
前書き
お待たせいたしました。遅くなってしまい、大変申し訳ありません。テストがもう大変で大変で……生物マジゆるさねぇ……今回は少し伏線回収です。では、どうぞ。
「56%……か…」
町外れの小さな病院。カエル顏の医者は、カズトの検査結果が書かれている紙を眺めていた。
実はこの男、カズトの義祖父であり、パンドラの生みの親でもある、アオイ・源吾の友人なのだ。腕が優秀で当然である。
「本当にそうだったらいいんだけどねぇ……」
一つため息をつき、椅子から立ち上がる。
検査結果には、56%などという半端な数字など何処にも書かれておらず、そこには、『65%』という残酷な結果が出されていた。
******************
最高だ。最高すぎる。
あの、サテライザー先輩とコンビを組む事ができた。きっと、宝くじ六億円とかあたったなんて目じゃないくらいに最高だ。これで三年はどんな不幸にも耐えられる。
だが、それには条件があった。
洗礼も、イレインバーセットもしない。
それが条件だった。そのくらいならば全然平気だ。今までの不幸なんて、比じゃない。
「本当に?」
ゾクリと、背筋に悪寒が走る。それは初めて聞くものではない。
先日、イングリット先輩と戦った後にも聞こえて不気味な声。
「どうしてお前は欲しがらない?」
「誰だあんたは‼︎」
声のする方を振り返る。だが、そこはいつもの自室ではなく、不気味な赤と黒のタイルが張り巡らされた個室だった。
「なんだ…ここ。」
「まあまあ、そう驚くなよぉ。」
未確認の声がまた聞こえた。“下”から。
声の主を見るために、恐る恐る目線を下げる。もしかしたら、見ないほうがよかったのかもしれない。
「よぉ、相棒。こうして会うのは初めてかぁ?」
「……小鬼?」
そこにいたのは、赤い二頭身の小鬼がいた。二本の山羊のようなツノを生やし、顔はファンシーとは言いがたい薄気味の悪い笑みを浮かべている。だが、服装だけはこの部屋に会っており、黒のスーツと言う大人びたものを着ていた。
「おいおいどうしたぁ?惚けたツラしてよぉ。」
「いや、お前見たいのが目の前に現れたらだれでも惚けたツラするさ。」
「それもそうだなぁ。」
と、気持ち悪い笑みを浮かべてうなづいた。一体なんなんだこいつは……
「で、さっきの話の続きだが。なぜお前はそんなに欲しがらない?」
「なんの話だ。」
小鬼の質問に俺は質問で返す。だが小鬼の表情に困った様子などなく、ただニタニタと不愉快に笑うだけだ。
「どうしてそんなに欲が無いんだって聞いてんのさ、俺は。」
「……別に。欲なんて、あっても意味ないだろ……」
そう言うと、初めて小鬼が表情を変えた。心底不愉快そうな、憤慨しているような、そんな表情だ。
「つまらねぇなぁ‼︎そんなんでいいのかぁ?欲望ってのは、どんな人間にでもアルモノダロォガァ‼︎
「そんなんだから、お前はあの女を守れなかったんだよ‼︎」
「黙りやがれ‼︎」
小鬼の怒声に、俺も怒声で返す。いつもならこの手の輩は適当にあしらうのに、こいつの言葉はなぜかイライラするのを隠せない。
「ほら、それがお前だぜ?怒りに任せて力を振るえ。欲に任せて全てを壊せ。」
そしてー……と、小鬼が言い終える前に、俺はグラディウスでそいつの首を跳ね飛ばす。だが、その口が黙ることはなかった。
「パンドラを、殲滅しろ。」
******************
「黙りやがれ‼︎」
ガタンと怒号を響かせながら立ち上がった。気がつくと、小鬼などは何処にもおらず、部屋もあの不気味な部屋でなく、いつもの教室で、しかも、ユナ先生の授業だった。
「えっと…………」
沈黙が走る。生徒たちの注目が一気に俺へと集まる。しかも、先生はブチ切れ寸前である。
「グッドモーニング……?」
「もう昼前だ馬鹿者‼︎」
この後、ユナ先生に小一時間説教を食らったのは、言うまでもないだろう。
そして昼休み。俺はいついかなる時であっても、先生の授業では寝ないと誓ったのだった。
「し、死ぬかと思ったぁ……………」
フラフラと歩きながら食堂へと向かう。怖かったなんてもんじゃない。例えるとしたら、初対面のサテライザー先輩を3とすると、ブチ切れた先生は10だ。
今日の昼はどうしようかと悩んでいたその時だ。バーガークイーンから悲鳴が上がる。そらは、歓喜の悲鳴ではなく、単なる恐怖の悲鳴だ。
「接触禁止の女王だ!」
「触るなよ!触ったら殺されるぞ!」
露骨だな!そしてなんだ、このデジャヴュ‼︎前にもあったよな!
「「あっ」」
そちらに向かうと、やはりサテライザー先輩がいた。今日は持ち帰り用の紙袋ではなく、トレイに山盛りになっているハンバーガーを持っている。
「ど、どうもっす……」
「……そ、その頭どうしたの?」
「頭?あっ、たんこぶできてやがる‼︎」
先生マジで殴ってたからなぁ……普通なら死ぬのかもしれない。
「なんていうか、微睡みの代償と言いますか……」
「フフッ……変な人。」
サテライザー先輩が優しく微笑む。その表情だけでたんこぶの痛みなど帳消しになった。
「その……よかったら、お昼一緒にどう?」
一瞬あっけに取られてしまうが、これは願っても無いことだ。
「喜んで、ご一緒させていただきます。」
向かい合わせで席に座り、ハンバーガーを食べながらの談笑……にはならなかった。先輩は無言で、俺も何か話を切り出そうとするが、その話が思い浮かばない。
だが、決して先輩も話したくないというわけでも無いらしく、何か話を切り出そうとして、それをうまく言葉に出来ない。そんな感じだ。
「あの……か、カズト……」
「はい?」
「えっと……やっぱり、なんでも…いえだから、あの………」
ガタンッと、意を決したかのようにサテライザー先輩が立ち上がった。
そして、少し大きめの声、と言っても周りには聞こえない程度の声だ。
「今夜、私の部屋に来て欲しいの‼︎」
後書き
読んでいただき、ありがとうございました。早めの伏線回収。あの小鬼はこれから先何度も出てきます。そして、カズトの行く末を左右するキーパーソンでもあります。
次回は遂にあの田舎娘が!
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