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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第九十一話 心が壊れない限り

 
前書き
片腕を失った大輔…。

ドルモン[リリカルアドベンチャー、始まるよ] 

 
フェイトは大輔を追って走っていた。
途中で発生した爆発。
それを見て、フェイトは走った。
その先で見た物にフェイトの表情は凍りついた。

フェイト「あ…ああ…」

エリオ「母…さん」

キャロ「お母さん…助けて…お父さんを…お願い…」

霧のせいなのか、病院に連絡を入れようとしても出来ない。
だから二人はまだ幼い養母に縋るしかなかった。
大好きな、尊敬していた養父の片腕が失われたという現実が二人を混乱させた。
ブイモンがデジピースで得たギガヒールを使用して出血は何とかなったが、失われた腕は元に戻らない。

フェイト「(それに…)」

傷口が焼け焦げている。
だから腕を繋げることは叶わないことは容易に分かる。

フェイト「大丈夫、大丈夫だから!!」

縋る二人を落ち着かせ、フェイトはライドラモンエアに大輔を乗せると知り合いのいる教会に向かう。
あそこが一番近いし、一輝とカリムもいる。
きっと助けてくれる。

フェイト「(大輔…死なないで…お願い神様、大輔を連れて行かないで…大輔は私の…みんなの支えなの。代わりが必要なら私がなるから…だからお願い…まだ、大輔を連れて行かないで、お願い…私の大切な人を奪わないで…)」

必死に祈るようにフェイトは教会に向かった。






























そして教会に着くと、一輝とカリムが大輔の容態を見ると直ぐさまシャッハに医者を呼ぶように言うと、大輔をベッドに寝かせる。
しばらくして医者が来て、大輔の元に向かった。

一輝「…一体何があったんだ?あの怪我はちょっと異常だぞ?」

エア[ヴァンデモンのせいだ…ヴァンデモンが大輔をやったんだ!!]

レオルモン[ヴァンデモンだって?じゃあ、この騒ぎはヴァンデモンの仕業なのか…]

キャロ「お父さん…」

フェイト「ねえ、エリオ、キャロ…君達は私をお母さんって呼んだよね?それってどういう意…」

言い終える前に医者が出て来た。

カリム「どうでしたか?」

「一命は取り留めました。先に治癒の魔法をかけたのが功をなしたのでしょう。しかし…」

一輝「どうなんだ?」

「腕を繋ぐことは出来ません。表面の細胞が潰れていたために神経を繋ぐことは出来ませんでした」

フェイト「そんな…」

ガタンとフェイトはその場に力なく跪いた。
辛そうに語る医師にカリム達は頭を下げた。

カリム「ありがとうございます…」

カリムがそう医師に告げるとエリオとキャロは大粒の涙を床に落とした。






























大輔「っ……」

フェイト「大輔!!」

チビモン[お兄ちゃん…]

大輔「…悪い、心配かけたな」

痛みによりまだ辛いはずなのに笑顔を向ける。
それがフェイトには辛かった。

フェイト「馬鹿!!心配かけたなじゃないでしょ!!あんなに…血だらけになって…」

大粒の涙を流しながら言葉を紡ぐフェイトだが、大輔は残った右腕で頭を撫でた。

大輔「命が助かっただけでも良かったと思わなきゃな…生きてりゃあ何とでもなる…お前達もありがとうな…自分の子供に助けられるなんて思わなかった」

エリオ「え…?」

キャロ「どうして…?」

大輔「お前達は俺が気絶した後、お父さんお父さんって呼んでくれたな」

エリオ「あ…」

大輔「どういうことなのかさっぱりだけど…何となく、お前達が俺の子供なんだって分かったよ」

キャロ「ご、ごめんなさい…お父さん…」

大輔「ところでお前達の母さんって、フェイトか?」

フェイト「え?私?…そういえば私のことをお母さんって…ええええ!!?」

エリオ、キャロ「「はい」」

フェイト「え?ええ??私、大輔と結婚してないよ?私いつ大輔の子供産んだの?というか私が子供だし。あれ?あれえ???」

混乱しているフェイトを横目で見遣りながらダスクモンが口を開いた。

ダスクモン[ようするに未来から来たんだ]

大輔「やっぱりか?何か変だと思ってたんだよ。デジメンタルとかさ」

ブイモン[おめでとう二人共、一輝、北海道版赤飯作ってくれえ!!]

一輝「いやはや、大輔とフェイトも二人も子供作るとは…」

エリオ「あ、いえ。僕達…父さん達と血の繋がりはないんですけど…」

カリム「養子…ですか?」

キャロ「は、はい。一輝おじさんにも可愛がってもらいました」

一輝「ぐふっ!!お、おじさん…」

…彼の名誉のために言うが、一輝は14歳である。
おじさんと言われればそれはショックだろう。

大輔「はは…」

本当はかなり絶望的な気持ちだが、ここで弱くなると一気に駄目になってしまう。
そんな気持ちを感じさせないように平然とした顔をした。

大輔「無くなったのは腕一本。まだまだ戦えるな」

カリム「ですが…腕が無くなった事で色々変わってくるはずです。身体のバランスや動き方とか…せめて義手をつけた方が…」

大輔「それじゃあ慣れるのに更に時間がかかる。大丈夫だ融合進化しても、左腕の感覚は残っているから今まで通りに戦えるはずだ。」

今まで培ってきた物が完全に使えなくなったはず。
それが分かっているはずなのにどうしてそんなに強い表情が出来るのだろう?

フェイト「でも、普段の生活じゃあ…」

大輔「大丈夫、それに今の状態に慣れればいいんだからな。失えばそれをカバーする…それだけだ。それにこれからの戦いにユニゾンエボリューション無しではきついだろうしな」

フェイト「大輔…なら私が大輔の支えになるよ。きっとアリサ達もそう思うだろうから」

大輔「フェイト…」

ブイモン[大輔を守れなかった俺もそろそろ本格的に強くならないといけないな…]

特訓する場所として理想的な場所も自分達にはあるのだ。
しかし、選ばれし子供達が全員揃わなければ余った子供達が弱いままになる。
それだけはブイモンも避けたかった。

エリオ「キャロ、僕はもう決めたよ。」

キャロ「エリオ君?」

エリオ「確かに僕達はこの時代の人間じゃないし、父さん達みたいに特別な選ばれし子供でもない。でも、父さん達が戦うのにずっと見ているなんて出来ない」

キャロ「エリオ君…」

エリオ「ルーテシアとも話をしよう。僕達も一緒に…本格的に一緒に戦おうって。何もしないで最悪なことになるのなら何かした方がずっとマシだよ!!」

固く誓ったその瞳はエリオの強さを表していた。
それは大輔の瞳によく似ていた。

一輝「…よし、俺も付き合うか」

大輔「兄ちゃん?」

一輝「止めようとしても無駄だぞ。確かにこの世界の選ばれし子供でもないからこっちのデジタルワールド的に無関係かもしれないが、弟分と弟分のガキ達まで戦おうってんなら話は別だ。もしぎゃあぎゃあぬかすようならデジタルワールドの神を半殺しにしてでも協力する」

大輔「目茶苦茶な…」

苦笑する大輔だが、それでこそ自分の兄貴分だと思う。

カリム「私にも出来る限りのことをさせて下さい。私はあなた達のように戦うことは出来ませんが、何かの支援は出来るはずですから」

大輔「ありがとう…よし、明日になったら早速行動開始だ!!」































ヴァンデモン[もうすぐだ…もうすぐ、霧の結界を張り終える。そして、この地は地獄と化す…それだけではない。私が永い時をかけて造り出した兵器も間もなく完成する…フフフフ…ハハハハハハ…]

その頃、ヴァンデモンは廃ビルの屋上におり、ミッドチルダ全域に霧の結界を張り巡らしていた。
結界が完成すると同時に人々の姿が消えていく。






























ミッドチルダが霧に包まれ始めた時、子供達のD-3が輝き、子供達と周辺の者を守った。
翌朝、ルカは外に出ると異様な光景に目を見開いた。
街をデジモン達が徘徊していたのだ。

ルカ「…ティアナ!!」

ルカはフレイモンを連れてティアナの暮らすマンションに向かって走る。






























そしてティアナ達が暮らすマンションでは、ティーダが頭を押さえて起き上がる。

ティアナ「おはよう兄さん」

ティーダ「あ、ああ…あいつらは?」

ティアナ「帰っちゃったよ」

ティーダ「そ、そうか」

ピンポーン

ティーダ「ん?誰だこんな朝早くから」

ティーダが玄関に出て、扉を開けると息を切らしたルカとフレイモンがいた。

ティアナ「ルカ?」

ルカ「ふ、2人共…は、早く逃げて下さい…」

ティアナ「?」

ルカ「デジモンが街を徘徊してるんですよ!!」

ティアナ「ええ!?」

ルカ「急いで此処を出て!!早くしないと…」

フレイモン[いや、もう手遅れだぜ…]

フレイモンが指差した方向にはお化けのようなデジモン、バケモンがいた。

ティーダ「な、何だあれは!?」

ティアナ「あれもデジモンなの?」

フレイモン[バケモンだ!!]

ルカ「バケモン、ウィルス種…ゴースト型。成熟期ダークエリアから発生した幽霊デジモン。ウィルスプログラムで作られておりコンピュータに取り付いて次々に破壊する。布の中はブラックホールだという噂がある。必殺技は相手を地獄へ引きずり込む“ヘルズハンド”。」

フレイモン[ルカ!!]

ルカ「はい!!」

フレイモン[フレイモン進化!アグニモン!!]

成熟期へと進化すると拳に炎を纏わせる。

アグニモン[バーニングサラマンダー!!]

拳に纏った炎を放ち、バケモンを数体撃破する。

アグニモン[サラマンダー…ブレイク!!]

炎を纏った回し蹴りでバケモン達を薙ぎ倒した。

アグニモン[さあ、今のうちに!!]

ルカ「早く逃げよう!!ユニゾンエボリューション!!」

アグニモン[アグニモン超進化!ヴリトラモン!!]

ルカ『さあ、捕まって下さい』

ヴリトラモンはティーダとティアナに手を差し出す。
ティアナは迷わず捕まるが、ティーダは少し迷った後、ヴリトラモンに捕まる。

ルカ『(何とか皆と合流しないと…)』

ヴリトラモンは翼を羽ばたかせ、何とか仲間と合流しようとする。






























ルカ達がティアナとティーダを保護した頃、フェイト達も異変に気付き、近くの廃ビルに避難していた。

フェイト「まさか、こんなことになるなんて…」

大輔「そうだな…」

賢「何とかドクターに連絡は取れた。遼さんとはやて達を大至急で送ってくれるらしい」

大輔「そうか…」

クロノ「本当なら未開世界の人間を入れるのは避けたいが…」

エイミィ「緊急事態なんだから仕方ないよ」

アリシア「ユーノはまだ来ないのかな?」

ユーノ「皆!!」

賢「ユーノ!!スバルにギンガ…それと…」

リンディ[ナカジマ三佐とその奥さんね]

スバル「皆~!!」

ゲンヤ「一体何が起こったんだ?連絡をしようとしても全く通じねえ…」

リンディ「それは私が説明しましょう」

リンディが前に出て、ゲンヤとクイントに説明する。

賢「ヴァンデモンめ…とうとう本格的に攻めてきたか…」

フェイト「何とかヴァンデモンを倒さないと…」

ワームモン[あいつはこの結界の中でも動ける子供を狙っているようだね。]

偵察から帰ってきたワームモンが言う。

ヴリトラモン[おーい!!]

ヴリトラモンが廃ビルの前に降り立つ。

エイミィ「わわっ!?」

賢「ヴリトラモン!!それに…」

ヴリトラモンはティアナとティーダを降ろすと成長期に退化する。

ルカ「皆さん!!」

クロノ「ルカ!?」

アリシア「良かった。心配したんだよ!?」

ルカ「すみません…仲間を連れてきたんです!」

フェイト「仲間?ということは君が13人目の…」

ティアナ「ティアナ・ランスター」

賢「そうか君が…後はパートナーだけか…」

エリオ「紋章は僕が持っています。」

ティアナ「紋章…?」

エリオ「ストラビモンがティアナさんのために命懸けで手に入れたんですよきっと。」

ティアナのD-3に紋章が吸い込まれるように入っていく。

ティアナ「ストラビモン…」

ティアナはD-3を握り締める。

ルカ「僕は今から霧の結界が張られている中心に行きます。ストラビモンを助けないと」

ティアナ「待って!!私も行く!!」

ティーダ「ティアナ!?」

ルカ「駄目です!!」

ティアナ「っ…」

ルカの強い口調にティアナは身体を震わせた。

ルカ「あ、すみません…しかしティアナ。パートナーを持たない君では危険です。」

スバル「だったら私が行くよ!!」

ギンガ「私も行く!!」

ゲンヤ「お前達何を!?」

娘達の発言にゲンヤが驚く。

スバル「私達だって戦えるもん!!」

ギンガ「ルカ君と一緒に戦いたいの!!」

ルカ「…分かりました。一緒に行きましょう!!」

大輔「待て、俺も行く。」

ルカ「大輔さん…しかし、その身体では」

大輔「大丈夫だ。行こう」

ルカ「…分かりました」

ルカは大輔と共にスバルとギンガを伴って結界の中心に向かった。

クイント「スバル…ギンガ…」

ユーノ「僕達はここに来るデジモンの迎撃を」

フェイト「うん」

アリシア「来るよ!!」

賢「全員、覚悟を決めるんだ。死なないように」

一輝「腹をくくれよ」

全員【おう!!】

やがて、ドアが開くと、そこからバケモンがなだれ込んできた。

[へ?]

自分達の姿を見て怯え逃げ惑うかと思っていたバケモン達であったが、ドアをこじ開けるとそこで待っていたのは…。

アリシア「いらっしゃ~い☆」

一輝「ようこそ地獄への片道切符売り場へ♪」

どす黒いオーラを纏った子供達とそしてパートナーデジモン達だった。

[[[[ど、どうも~…お邪魔しましたあ!!]]]]

レオルモン[逃がすかあああああ!!!!]

バケモン達は反射的に逃げ出そうとするが、その数秒後に断末魔の悲鳴をあげた。






























ミッドチルダ全域を霧で囲み、バケモン達を使って街の子供達を捕らえ始めたヴァンデモンは、捕らえた人々を無人となったビルへ連行させた。

ヴァンデモン[全ての子供達をストラビモンに会わせろ。首実検にかけるのだ]

イビルモン[そんな手の込んだ事をなさるより皆殺しすれば早いでしょうに]

イビルモンがヴァンデモンに意見するが。

ヴァンデモン[それでは私の美学にそぐわない…しかし、分かっているな?お前がしらを切れば皆殺しもやむを得ないということを…]

ヴァンデモンは両手を吊るされたストラビモンに問うと、ストラビモンは悔しそうにヴァンデモンを睨んだ。






























そしてルカ達は霧の中心部へ近づいていったが…。
上空から衝撃波が放たれ、回避すると上空から黒いワーガルルモンと青いメタルグレイモンが現れた。

ルカ「メタルグレイモン…ウィルス種、完全体。グレイモンの身体を改造し肉体の半分以上を機械化した完全体のサイボーグ型デジモン。数々の戦いを潜り抜けた結果その体を機械化することによって生き長らえている。しかしその改造に肉体が耐えられなかったため身体が青く変色しウィルス種に変貌してしまっている。メタルグレイモンに進化するためには、襲い来る強敵を倒し、勝ち抜いていかなければならず、完全な進化を遂げたメタルグレイモンの攻撃力は核弾頭一発分に匹敵するといわれる。必殺技は胸のハッチから有機体系ミサイルを発射する。“ギガデストロイヤー”」

大輔「ブラックワーガルルモン…ウィルス種、完全体。ウィルス種のガルルモンが進化して二足歩行が出来るようになった獣人型デジモン。二足歩行になることでスピードは失ってしまったが、より強い攻撃力と防御力、さらに戦術性を身につけたコマンドータイプのデジモンである。ガルルモン譲りの脚力から繰り出されるキック技は強烈で、ジャンプ力もデジモンの中では1、2を争うほど。鋭い殺気を放ち敵にプレッシャーをかける。必殺技は両腕の鋭い爪で相手を切り裂く“カイザーネイル”…か。」

スバル「そんな、完全体!?」

ルカ「おまけに2体…」

ギンガ「ルカ君、大輔さん。」

ルカ「?」

大輔「何だ?」

ギンガ「ここは私達で何とかするからルカ君達は皆を助けて!!」

ルカ「え?しかし…」

スバル「大丈夫だよ。ルカ兄。私達、あんな奴等に負けないから」

アグモンX[早く行くんだ!!]

クロアグモン[この程度の奴らに遅れは取らん]

ルカ「はい。分かりました!!」

スバル達の言葉を信じてルカ達は先へ進もうとする。

アグモンX[アグモン進化!グレイモン!!]

クロアグモン[クロアグモン進化!ブラックウォーグレイモン!!]

グレイモンXとブラックウォーグレイモンはメタルグレイモンとブラックワーガルルモンへと向かっていく。
ルカ達はスバル達を信じて先へ進む。
賢達は次から次へと雪崩れ込んでくるデジモン達の迎撃を続けていた。
反撃の時が来るのを信じて。
 
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