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戦国異伝

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第百九十八話 石田三成という男その十

「闇の色じゃな」
「その色の衣を着て旗を掲げていますな」
「あれもわからぬ、何故妖しい者は皆闇なのじゃ」
「思えば妖しいですな」
「何かおるのか」
 信長が最初に思った時だ、今この時が。
「果たして」
「何かといいますと」
「それまではわからぬがな」
「そう思われたのですか」
「不意にな」
 だがこれだけだった、信長が思ったことは。
「そうも思ったがうがち過ぎか、わしの」
「ですな、おそらくは」
「まさか伊賀者と延暦寺のならず僧が同じではありますまい」
「天海や崇伝にしても」
「あの津々木にしても」
「そうじゃな、公卿にしてもな」
 高田のことも言う信長だった。
「あまりにも広過ぎる」
「ですから流石に」
「全て一つではありますまい」
「一つ一つ妖しい者がいるのでしょう」
「この天下に」
「そうであろうな」
 ここではこう思った信長だった、家臣達も。
「気になるがな」
「はい、では」
「個々にですな」
「そうした者達を探し出し成敗する」
「そうしますな」
「そうするとしよう」
 この戦の後で、というのだ。
「戦の後でな」
「ではまずは」
 すぐにだ、林が信長に言って来た。
「今のことも気になりますが」
 それに加えてといのだ」
「とりあえずはです」
「とりあえずはか」
「はい、都の高田殿は居場所がわかっています」
 都、そこである。
「ですから勘十郎様に人をやり」
「そしてか」
「高田殿をです」
 まずは、というのだ。
「御身を」
「拘束してじゃな」
「色々としましょうぞ」
 調べようというのだ。
「是非」
「そうじゃな、とりあえずあの御仁はな」
 高田、彼はとだ。信長も応えて言う。
「勘十郎に命じて捕らえておこう」
「さすれば」
「うむ、ではな」
「そして他の者達も」
「探せ」
 そして、というのだ
「一人残らずな」
「戦の後で」
「そうしてじゃ」
「全員ですな」
「どちらにしろ首を刎ねる」
 どの者もというのだ。
「しかしその前に色々聞きたい」
「ですな、何かと」
「怪しい者達ですし」
「それ故にですな」
「殿もあの者達の話を」
「聞く、妙に気になって仕方がない」
 それ故にというのだ、信長も。 
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