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戦国異伝

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第百九十八話 石田三成という男その八

「是非な」
「そうされますか」
「うむ、必ずな」
 そうするというのだ。
「もっともこの度の戦は大掛かりじゃからな」
「既に本願寺、毛利、武田を降しておりますし」
 幕府も倒した、既に織田家はこれだけのことをこの戦でしている。これだけでも相当なことであることは間違いない。
「それに」
「これから上杉、北条も降すからな」
「天下の大仕事ですな」
「だからじゃ、御主達の褒美もな」
「左様ですか」
「楽しみにしておれ。しかし」
 ここでだ、ふとだった。
 信長は眉を顰めさせてだ、林だけでなく己の周りにいる他の家臣達にも言ったのだった。
「何かおるのか」
「?何か」
「何かとは」
「本願寺に幕府じゃが」 
 彼等を見ての言葉だった。
「思えば浅井家もな」
「久政殿ですか」
「あの御仁もですな」
「妙じゃ、本願寺の者もやけに多かったしな」
 このことについても言うのだった。
「それでいて民は減っておらぬ」
「それですな」
 矢部がだ、信長に応えて怪訝な顔で言って来た。
「そもそも本願寺の色は灰色です」
「門徒も灰色の服や旗を着て掲げるな」
「はい、そうして一揆を起こすものですが」
「あの色はないな」
「黒、いえ影の様な」
「闇の様な色じゃったな」
「戦う者はその色の門徒達ばかりでしたし」
 矢部はこのことを言っていく。
「やけに身のこなしがよく鉄砲を多く持っていました」
「その門徒共を相当殺したな」
「合わせて百万になるやも知れませぬな」
「そうじゃ、我等は百万殺したのじゃ」
 このことも言う信長だった。
「百万もな」
「百万も殺したにしては」
「民が減っておらぬな」
「はい、何故か」
 本願寺の門徒達、つまり民の一部をそこまで殺してもだ、領地の民の数はというのだ。
「それだけ殺せば目に見えて減っている筈ですが」
「伊勢の長島でもな」
「民は減っていませんでした」
「何故じゃ」
 信長が言うことはこのことだった。
「何故民は減っておらぬ」
「このことは」
「わからぬ、顕如殿も闇の色の門徒達なぞな」
「知らぬと仰っていましたな」
「そんなことがあるのか」
 また怪訝な顔で言う信長だった。
「本願寺の主がな」
「まさか嘘を吐いているとも思えませぬし」
 顕如、他ならぬ彼がだ。
「やはりこのことは」
「面妖じゃ」
 実にというのだ。
「訳がわからぬわ」
「そして幕府もですな」
「あの二人じゃ」
 崇伝、そして天海のことだ。
「何処に行ったかわからぬが」
「勘十郎様が今も探しておられますな」
 堀が言う。 
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